マヒドン大学発スタートアップMUI Roboticsがパートナー募集 ~匂いを“見える化”、製造・環境分野で日本企業との協業を模索~

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マヒドン大学発スタートアップMUI Roboticsがパートナー募集 ~匂いを“見える化”、製造・環境分野で日本企業との協業を模索~

公開日 2025.10.30

THAIBIZでは10月8日、タイ企業の技術とニーズを日本企業に紹介するオンライン説明会「Open Innovation Talk」の第34回を開催。マヒドン大学発のスタートアップ「MUI Robotics」より技術サポートディレクターのキッティシン・プランポンパン氏と事業開発本部長のパッタナナット・ウォンワン氏を招き、匂いや味を数値化・可視化する「Sensory AI」技術の詳細と、日本企業との協業可能性について話を聞いた。

五感をデジタル化する「Sensory AI」技術

Q. MUI Roboticsの事業概要は

キッティシン氏:われわれは2021年に設立されたマヒドン大学発のスタートアップだ。基盤は、同大学で20年以上にわたり研究されてきたArtificial Sense(人工感覚)=「Sensory AI」技術にあり、機械に人間の五感「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」を与えることを目的としている。とりわけ嗅覚(電子鼻)と味覚(電子舌)の分野に注力している。

パッタナナット氏:最大の強みは、匂いや味といった主観に依存しやすい感覚情報を数値化・可視化することで、誰が扱っても再現性の高い評価を可能にする点である。当社の技術力は、スタンフォード大学による「World Scientist Rank」で上位2%に選出された科学者がチームに含まれていることや、「One ASEAN Startup Award 2025」のタイ予選(AI部門)で優勝したこと、さらに世界中の1,600社超から選ばれる形で「TechCrunch Disrupt」にて革新的スタートアップ200社に選出された実績にも表れている。

製造現場から環境対策まで、製品の活用と導入効果

Q. 製品ラインナップと活用事例は

キッティシン氏:主力製品は、①研究室や製造現場で活用できる「ポータブル電子鼻/電子舌」、②IoTを活用した「オンライン匂い測定機(MUI-Nose Station)」の2種類に大別される。

ポータブル型の電子鼻・電子舌は、製品開発(R&D)から品質検査、生産、出荷前の検品や輸送時の確認に至るまで、製造工程のあらゆる段階で利用されている。

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Sensory AIの応用分野 出所:MUI Robotics

例えば、コーヒー豆の焙煎度(ライト/ミディアム/ダーク)を匂いで分類し、品質の均一性を保つといった用途や、ココナッツウォーターに水や砂糖が混入されていないかを電子舌で検出する事例がある。測定処理時間はおおむね3分以内で完了し、現場でも即時活用できる点が評価されている。

Q. 環境モニタリング分野での活用は

パッタナナット氏:オンライン匂い測定機「MUI-Nose Station」は、工場や家畜農場、廃棄物処理場といった現場において、24時間体制で匂いを自動監視するものである。匂いの強さに加えて、風向、温度、湿度といった環境データを同時に取得・表示することで、臭気の発生源を正確に特定することができる。

当社は消臭薬剤などの技術自体は提供していないが、基準値を超えたタイミングでアラートを発信することで薬剤の散布タイミングを最適化し、薬剤コストを50%以上削減した事例もある。加えて、効率的な臭気検知により運用コストは最大30%、規制違反や近隣住民とのトラブル回避による関連コストも20%削減できる可能性がある。

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オンライン匂い測定機「MUI-Nose Station」による環境モニタリング 出所:MUI Robotics

従来機器との違いと技術的優位性

Q. ガスクロマトグラフィー(GC)との違いは

パッタナナット氏:従来のGCは、匂いを構成するガス成分を分離・定量する「ダイレクトメソッド」によって分析を行う。一方電子鼻は、人間の嗅覚を模倣し、匂いを“スメル・プロファイル”として全体的に捉える「インダイレクトメソッド」を採用している点が大きな違いだ。

センサーは用途に応じて8個/16個/32個のアレイ構成が可能で、ppm(parts per million)やppt(parts per trillion)といったごく微量な匂いにも対応できる。さらには、湿度や温度といった環境要因の影響を独自の補正アルゴリズムにより取り除くことで、精度と再現性の高い分析を実現している。

日本企業との協業を通じて市場拡大を目指す

Q. ビジネスモデルと協業ニーズは

パッタナナット氏:当社は現在、以下の3つのビジネスモデルを展開している。

1)機器の販売(売り切り型)

2)顧客からのサンプル送付による受託検査サービス

3)サブスクリプション(レンタル)モデル ※期間限定や繁忙期のみの利用にも柔軟に対応可能

特にタイ国内の日系企業との共同提案によるソリューション提供や、日本国内での販売代理店としての連携を歓迎している。今後は日本市場での展開を加速したい。

THAIBIZ編集部
和島美緒

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