大手総合不動産プロバイダーFrasersが語る、タイ工業用地の現在と未来

大手総合不動産プロバイダーFrasersが語る、タイ工業用地の現在と未来

公開日 2022.01.07

タイ国内40ヶ所 以上に約900棟もの産業用不動産を所有し、バンコク都心に開発中のスマートシティ「One Bangkok」といったタイ最大規模のプロジェクトを手掛ける「Frasers Property Thailand」。最近では、三井不動産との合弁で開発を進める「スマート・ロジスティック・パーク」など工場団地の新しいカタチを提案し、注目を集めています。そんな同社のCEO・ソーポン氏から見たタイの工業用地を取り巻く環境、EECの将来性、そしてこれからの工業用地の在り方とは?

日本企業も多く入居する産業用不動産を多数展開!

ガンタトーン:
多岐に渡る事業を手掛ける「Frasers Property Thailand(以下Frasers)」ですが、その事業概要を教えていただけますか?

ソーポン氏:
弊社は、ビアチャーンを提供する「タイ・ビバレッジ」や飲食事業を手掛ける「OISHI」、スーパーマーケット「Big C」などを展開するTCCグループの傘下にあります。Frasersとしてはまだ創業から7年ほどですが、タイの賃貸工場・倉庫開発で知られていた「TICON(タイコン)」を2017年に、不動産プロパティ「GOLDENLAND」を2020年にそれぞれ合併し、現在はタイ近隣のベトナム・インドネシアをはじめ世界20カ国・70都市に展開しています(資産は約1兆バーツ)。

タイ国内の事業を大きく分けると住宅・産業関連・オフィスビルの3部門があり、加えて、ルンピニ公園の隣接地区を使ったタイ最大規模の複合都市開発プロジェクト「ONE BANGKOK」もFrasersから独立した事業として動いています。タイにはいくつもの大手不動産企業がありますが、住宅・産業関連・オフィスビルを一社で担っているのはFrasersのみと自負しています。そのなかでも産業用不動産はアユタヤやバンコク近郊、EEC(東部経済回廊)を筆頭にタイ国内で40都市以上・900棟以上に展開し、所有面積は300万㎡以上(未開発を含む)。施設にはロボットや自動システムを導入したスマートファクトリーやスマートウェアハウスを備え、400社以上の皆さまにご利用いただいています。

これから何が起きる? 海外の動向とEECの行方

ガンタトーン:
産業不動産プロバイダーの視点から、今後起こり得るタイにおける海外企業(日本を除く)の動向で注目している点はどこでしょう?

ソーポン氏:

投資の観点でみると現在、海外からタイへの投資において大きな影響をもたらしている要因が ①米中の貿易摩擦 ②米中のテクノロジー摩擦 ③新型コロナウイルス(以下コロナ)であり、すべてにおいて「中国」が共通しています。①〜③により、中国に拠点を構える企業がさまざまなダメージを受けている状況に着目し、彼らがタイに拠点を移動(リロケーション)するかどうかが大きな関心事になっています。コロナが落ち着いた来年以降、本格的な波が来ると予想しています。我々はそれに備え、受け入れる準備を整えていきたいと考えています。

ガンタトーン:

タイ政府が掲げる経済政策「タイランド4.0」の一つ、EECの現状についてはいかがでしょう?

ソーポン氏:

政策を掲げてから約6年。当初の高速鉄道やウタパオ空港の開発など出だしはとても良かったと思いますが、今後いくつかの問題が生じる可能性は避けられません。現在進行中のプロジェクトがこの3年、5年先に本当に実現できるのか。政府は官民連携(PPP)方式と称して民間企業の投資を誘致していますが、正直なところ現時点では収益として大きな成果が得られているわけではないため、この状態が続けば民間企業からの投資が断たれてしまうのではという懸念はあります。現・投資者や、投資を検討している方々からの信頼を得るためにも結果を出すことが必要であり、今まさにEEC本来の価値が試される時期に来ているのではないでしょうか。

Frasersが目指す未来の工業用地

ガンタトーン:
Frasers としての今後の展望を教えてください。

ソーポン氏:

Frasersはここ数年、さまざまな新しいプロジェクトに取り組んでいます。その理由は、「建てて貸す」という既存のビジネスモデルだけでは成り立たないと感じたからです。周囲のニーズが今後さらに細分化されていくなかで、それぞれの要望に一つひとつ丁寧に対応していくことが不可欠だと考えています。その考えをもとに取り組んでいる一つが、三井不動産と合弁でバンコク東部・チャチュンサオ県に建設中の大型物流施設「スマート・ロジスティック・パーク」です。同社が持つ技術や設計方法といったノウハウをはじめ、環境にはもちろん働いている人にとっても優しいサステナブルな施設造りの観点を学ぶ貴重な機会となり、今後新たに発生するプロジェクトでも日本のノウハウを取り入れていきたいと考えています。

そして弊社の最新プロジェクトとして動いているのが、倉庫・工業団地・オフィス・住まいの4つを集合させた「インダストリアル・タウンシップ」です。現在、バンナーの32km付近にある752万㎡の敷地で開発を進めており、来年には正式発表ができる予定です。また、今後も“スマート”をテーマにさまざまなソリューションを展開していくために、ぜひ日本の皆さまの技術や経験をお借りできれば幸いです。

TJRI編集部

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