市場が拡大する未来食品の現状と課題 〜TJRIxTFA共催「日タイ食品企業交流会」〜

市場が拡大する未来食品の現状と課題 〜TJRIxTFA共催「日タイ食品企業交流会」〜

公開日 2024.07.08

日タイの新たなビジネス創出のきっかけづくりを目指すTJRIビジネス・ネットワーキング第3回は、タイ未来食品貿易協会(TFA)と共催で6月30日に食品業界の交流会を開催した。日系企業及び地場企業などから合計80人以上が参加した。

タイはアジアの代替タンパク質のハブになるポテンシャルがある

まず、TFAのヴィジット・リムルーチャー会長は開会挨拶で「未来食品は、持続可能で環境に配慮した革新的な技術を用いた安全で健康な食品であり、新時代の人々の生活に不可欠だ。タイは食品原料が豊富で、植物由来の代替タンパク質食品の生産基盤があり、今後アジアのハブになる可能性を秘めている一方で、さらなる技術革新が必要」と訴えた。

タイ未来食品貿易協会(TFA)のヴィジット会長
タイ未来食品貿易協会(TFA)のヴィジット会長

また、「タイでの未来食品は、①機能性食品・素材:プロバイオティクスや栄養調整食品など ②メディカル&パーソナライズフード:高齢者や患者、乳幼児などの食品 ③オーガニック食品:野菜や果物 ④代替タンパク質:植物由来や昆虫由来、藻類由来などの食品—の4つのグループに分けられている」と説明した。

代替タンパク質の普及には高価格や販売チャネル、種類の少なさが課題

高等教育科学研究イノベーション政策審議会事務局(NXPO)のシリンヤー本部長
高等教育科学研究イノベーション政策審議会事務局(NXPO)のシリンヤー本部長

続いて、高等教育科学研究イノベーション政策審議会事務局(NXPO)のシリンヤー・リム本部長は、「タイは世界第14位の食品輸出国であり、代替タンパク質の輸出は25位。同市場規模は500億バーツで、そのうち435億バーツが国内市場、65億バーツが輸出だ。国内市場では、豆乳のような従来の代替タンパク質が341億バーツ、植物性肉など革新的なテクノロジーによる代替タンパク質が94億バーツとなっている」と説明した。また、「肉の消費を減らしたいと考えている消費者は多いが、代替タンパク質の普及には、高価格、販売チャネルや種類の少なさ、品質などの課題がある」と指摘した上で、タイ政府は、未来食品への投資や技術・研究開発を支援していくと強調した。

タイは日本へのオーガニック食品の輸出チャンスがある

タイ国大使館商務参事官事務所のチャンタパット商務公使の講演(オンライン)
タイ国大使館商務参事官事務所のチャンタパット商務公使の講演(オンライン)

タイ国大使館商務参事官事務所のチャンタパット・パンジャマーノン商務公使は、日本の未来食品市場について「最も成長しているのは機能性食品であり、市場規模は1兆1,000億円に達している」とし、「植物由来食品には大豆を原料とするものが多い」と述べた。さらに、「オーガニック食品市場も需要が高く順調に成長しており、アジアでは中国に次いで第2位となっているが、生産量が少ないため、タイは日本への輸出チャンスがある」と指摘した。また、タイ企業に対し、日本への商品輸入規制や、食品業界の起業家への海外展開の促進など商務省国際貿易促進局(DITP)の役割も紹介した。

植物性肉をB2B販売する日本企業「Next Meats」

Next Meats USAの植野充COO
Next Meats USAの植野充COO

講演の最後は、植物性肉の開発生産を手がけるNext Meats USAの植野充COOが登壇。日本市場での展開について、「主なターゲットとなるベジタリアンの多くは外国人となるため、ホテルやレストランなどB2B販売を強化し、欧米諸国にも輸出している。また、当社の植物性肉は味がないので、好みの味付けができる」とし、超加工食品に対する消費者の懸念の解消のために「原材料は水、油、大豆のみ使用している」と説明した。また、「当社は技術とノウハウを持っており、タイでの事業展開に向けた事業パートナーを見つけたい」と意欲を示した。

日本企業の技術やノウハウはコスト削減に貢献できる

パネルディスカッションの様子 TJRIxTFA共催「日タイ食品企業交流会」
パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションでは、代替タンパク質食品を開発生産するタイ企業4社が登壇し、タイの未来食品について意見交換を行った。

タイ食品最大手チャロン・ポカパン・フーズ(CPF)の研究開発センター オープンイノベーションディレクターのピームデート氏は「当社は日本や中国、シンガポール、イギリス、ドイツなど、アジアやヨーロッパに代替タンパク質食品を輸出している。市場拡大のために、昨年植物由来食品専用の工場を建設した」と説明した。さらに、代替タンパク質について「味や食感を改良すれば、さらに成長の余地があるので、そのための技術が必要だ。当社は植物性食肉に加えて、菌類由来の代替タンパク質や培養肉の研究も行っている。それぞれに特徴があり、植物性タンパク質とは競合しない」と述べた。また、タイ企業側は日系企業の参加者に向けて、「代替タンパク質の課題の一つが、生産コストと販売価格の高さだ。日本企業の技術やノウハウはコスト削減に貢献できる。未来食品の開発において、その技術やノウハウを活用し、共に市場の成長を目指したい」と訴えた。 その後の交流会では、各社の未来食品の試食が提供され、参加者同士で名刺交換や活発な意見交換が行われた。

THAIBIZ編集部

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