ヒットメーカーが語る!タイの外食産業必勝法

THAIBIZ No.153 2024年9月発行

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ヒットメーカーが語る!タイの外食産業必勝法

公開日 2024.09.10

タイの最新日本食トレンドを徹底解説

タイでは、日本食レストランの店舗数が継続的に右肩上がりだ。しかし、競争の激化が増しているとの声も多く挙がっており、新規参入の際には正しい数字からトレンドを読み解く必要があるだろう。日本貿易振興機構(以下、「JETRO」)バンコク事務所農林水産・食品部長の須田善也氏に、「2023年度タイ国日本食レストラン調査」の概要や、日本産食材のタイ輸出動向などについて話を聞いた。

根強い人気を誇る日本食レストラン、今後も増加の見込み

JETROは2024年1月、「2023年度タイ国日本食レストラン調査」を公開した。調査結果によると、2007年の調査開始時から2023年にかけて、タイ国内における日本食レストランの店舗数は右肩上がりだ(図1)。2023年は、前年度の5,325店舗から8%増加の5,751店舗だった。コロナ前の2018年と比較すると、1.9培の店舗数だ。

※ 調査期間は8月〜11月の間で、年によって異なる。2023年は8月15日〜10月31日。※ 2017年以前はバンコク近郊5県とその他の地方を分けていない。※ バンコク近郊5県とは、ナコンパトム、ノンタブリー、パトゥムターニー、サムットプラーカーン、サムットサーコーンを指す。※ 2020年、2021年、2022年は休業中の店舗を含めていない。 2023年については2022年に休業中とされていた店舗のうちウェブサイト等で営業再開時期が明示されている70店舗を含めた。(JETRO公開資料に基づきTHAIBIZ編集部作成)

県別では、特にバンコク近郊および地方の大都市での増加が際立つ結果となった。須田氏は全体の傾向について、「日本食レストランは依然として根強い人気があり、特に寿司、ラーメン、居酒屋系は店舗数が多い。寿司については、店舗数が2021年(1,196店舗)から2022年(1,431店舗)にかけて増加したものの、競争原理が働いて一部が淘汰された結果、2023年は減少店舗数が増加店舗数を上回り、増減率は-4.1%となった(図2)」と説明する。

※減少には、閉店した店舗、恒久的なデリバリーへの業態変更、メニュー変更、座席具備除外等により対象外となった店舗が含まれる。※ 2021年、2022年は休業中の店舗を含めていない。2023年については2022年に休業中とされていた店舗のうちウェブサイト等で営業再開時期が明示されている70店舗を含めた。 (JETRO公開資料に基づきTHAIBIZ編集部作成)

全体的に増加傾向が続く日本食レストランだが、客単価情報を分析すると新しいトレンドも浮かび上がってくる。須田氏によれば、タイ全体で所得の向上が見られるため、一昔前は「富裕層向けの高価な食事」であった日本食レストランは、最近では「若年層でも気軽に楽しめる食事」としての側面も持つようになった。

例えば、客単価が501バーツ以上の、日本の本格的な寿司を提供する寿司屋が257店舗であるのに対し、客単価100バーツ以下の寿司屋は312店舗と、前者を上回っている。「富裕層だけでなく、幅広い層が日本食に触れる機会を持てるようになった」と、須田氏は分析する。

 同調査のまとめでは、日本食レストランを巡る近況として、客足・売上はコロナ前を比較して80〜90%に回復し、タイから日本への渡航が再開された2023年は「日本で日本食を楽しむタイ人も増えた」としている。

また、タイにおける今後の日本食普及の見通しについては、常時変化するタイ人商品者のニーズやトレンド、タイ地方の消費者にマッチした日本食の提案の難しさなど、さまざまな課題はあるものの、「今後もより多様化が進むとともに、観光地および人口が多い都市を中心に地方においてもさらに普及が進んでいく(図3)とする意見が多い」と解説している。

JETRO公開資料に基づきTHAIBIZ編集部作成

コメをはじめとする、日本産食材の輸出動向

JETROは、日本食レストランは日本産食材の輸出拡大という観点からも、重要な存在だと捉えている。同機構はこれまで、チェンマイ県やコーンケーン県などの飲食店や小売店を対象に日本の農林水産物・食品の商談会や展示会を開催するほか、大規模なプロモーションも展開してきた。須田氏は、「まだ南部へのプロモーションが未着手であるため、富裕層や観光客をターゲットとする店が多く存在するプーケットにも今後注力していく」と意気込みを語る。

日本の輸出重点品目の一つであるコメは、日本食レストランにとって「客足を左右する」と言っても過言ではない食材だろう。近年、タイの日本食レストランでは「あきたこまち」や「コシヒカリ」などの定番ブランドに加え、北海道の「ゆめぴりか」などの品種も見られるという。須田氏によれば、短粒種である日本米は独特な甘みがあり、日本食のおかずと相性が良く、日本米と同じ品種をタイや中国で生産しているケースも多いが、「日本の土地で生産された日本のお米を、タイでも味わいたい」と思う客も一定数いるのではないだろうか。

日本政府の輸出額目標を達成するため「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略〜マーケットイン輸出への転換のために〜」において、29の輸出重点品目や、品目ごとに「海外で評価される日本の強み」を取りまとめている(図4)。

JETRO公開資料に基づきTHAIBIZ編集部作成

例えば「牛肉」には「和牛として世界中で認められ、人気が高く、引き続き輸出の伸びに期待」、「鶏卵」には「半熟たまごが浸透し、生食できる卵としての品質が評価され、さらなる輸出の伸びに期待」とあり、これらの強みをどう生かすかは、日本食レストランの経営者やシェフの腕の見せ所だ。輸出重点品目にはその他、日本独自の魚種である「ぶり」、世界で高く評価されている「ホタテ」、そしてウイスキーや本格焼酎・泡盛などがある。

須田氏は今後の日本産食材の商談会やプロモーションの方向性について、「バンコクで食べられているレベルの高い日本食や日本食材を使用した料理を、地方部にも紹介する予定だ。日本食レストランのタイ展開については『ローカライズ』が重要な要素となるが、JETROとしても、タイにローカライズした調理方法で日本産食材を楽しんでもらいたいと考えている」と説明する。

日本食レストランはこの先も、タイで広がり続ける可能性が大いにあることが分かった。地方の開拓、ローカライズした調理法、日本の強みが活きる日本産食材の活用、そして、日本食を愛する人たちが集まる「場所としての魅力」など、キーワードは多岐にわたる。日本の良さとタイの良さ、それぞれを融合させた「タイらしい日本食」が、今後は益々増えていくのかもしれない。

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THAIBIZ編集部

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