THAIBIZ No.154 2024年10月発行なぜタイ人は日系企業を選ぶのか
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カテゴリー: 自動車・製造業
公開日 2024.10.10
東南アジアではタイを始めとして、中国勢のEVによる進出が加速している。足もとでは停滞が見え始めてはいるものの「中国」という国自体の存在感は、東南アジアの消費者の中で確実に高まった。中国EVの東南アジア侵攻が実際にどこまでのものなのかは、この地域に関わる日系企業にとって大きな論点であることは間違いない。しかし、筆者はそれとは別に、中国がもたらす新たな東南アジア市場の構造変化について提起したい。
それは、中国FMCG(Faster Moving Consumer Goods:日用消費財)によるものだ。これまであまり議論には挙がってきていないものの、中国のFMCGは東南アジアでの事業基盤を着実に固めている。食品、日用品、化粧品、アパレルなど、東南アジアの消費者が日常的に使うものにおいて中国のシェアは今後高まってくると考える。本稿ではそのシナリオの可能性についてを論じたい。
FMCGを語るうえで、「小売」が重要な要素であることは間違いない。小売は、FMCG商品が流通され、消費者による実際の購買がなされるインフラだと言える(実店舗・EC問わず)。中国FMCGの東南アジア侵攻を捉えるうえで重要な点は、彼らは個々のプロダクトの商品力で必ずしも勝とうとしているのではないということだ。インフラである小売を制圧することで、仕組み上、中国FMCGが買われる状況を作るという考え方に基づいていることを認識しなければならない。
そもそも東南アジア小売市場構造がどのようになっているのか。ここで触れなければならない、東南アジア小売市場の最大の特徴は高いEC化率だ。Euromonitorによると、ASEAN 6(シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン)のEC化率は2023年で19.7%であり、同年の日本の15.4%よりも既に高い水準にある。
小売市場のECシフトは東南アジアで今後も進んでいき、2028年には26.5%に至ると見られている。東南アジアの消費者にとっては、ECを介してFMCGを購買するという習慣は既に根付いていると言っていい。
この背景には、東南アジア消費者のオンライン滞在時間の長さが存在する。We Are Socialによると、東南アジアの消費者が、一日のうちオンラインに滞在している時間は、日本含めた多国と比べても長い。東南アジアの中でも国による差異はあれど、日々7〜9時間オンラインに浸かっている。
つまりは、東南アジアの消費者は、起きている時間はほぼスマホを片手にインターネットにアクセスしているのだ。いわゆる「リープフロッグ現象」として、日本を超える速さでオンライン化が進んでおり、結果としてECに対する受容性を高めた(図表1)。
その東南アジアのEC市場において圧倒的なプレゼンスを示しているのが中国系プラットフォームであるLazadaとShopeeだ。この二つのECプラットフォームで東南アジアのEC市場の半分近くを占める(図表2)。
なぜ、中国系プラットフォームが東南アジア市場を席巻するようになったのか。その背景として、中国小売市場の成長が鈍化し始めた点がある。そもそも中国小売市場は、世界でも有数の巨大市場だ。中国という地理的に広大な商圏を掌握することは難しく、元々は地域ドミナントの小売チェーンがいくつか存在する市場であった。
これらチェーンも中国全体の市場から見るとシェア1%未満であり、有象無象の小売企業がひしめく超フラグメント市場であった。それが2010年代初めあたりから台頭してきたAlibabaが、ECプラットフォームとしてオンラインの世界を起点にこの巨大市場の統合を進めてきた。Alibabaの市場統合の動きはオフラインへも展開されており、生鮮の実店舗スーパーである「盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)」などを組み合わせた、いわゆるニューリテール構想を実現化させてきたのだ。
しかし、中国EC市場の“爆発的”な成長期は2015年頃に終わりを見せており、2016年から前年成長率は20〜30%という“通常”の成長期に落ち着いている。その中で、Alibaba自体の中国EC市場におけるシェアも2015年の43.6%から2023年には31.3%にまで落ちている。中国EC市場の競争環境が激化したこともあるが、Alibabaに対する当局による締め付けが厳しくなったことも大きい。
いずれにしても、Alibabaがさらなる成長を目指すには、東南アジアへの南下推進は必然であった。実際、中国EC市場の成長が落ち着いた2016年頃から、バトンを渡すかのように東南アジアでEC市場が加速度的に成長している。Alibabaはまさにそのタイミングである2016年にLazadaを買収。そして、東南アジアECプラットフォームのもう一つの雄であり、現在ではLazadaを凌ぐシェアを誇るShopeeが立ち上がったのも同時期である2015年だ。ShopeeはSea Groupによって立ち上げられているが、こちらも中国のTencent傘下にある。
THAIBIZ No.154 2024年10月発行なぜタイ人は日系企業を選ぶのか
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Roland Berger Co., Ltd.
Principal Head of Asia Japan Desk
下村 健一 氏
一橋大学卒業後、米国系コンサルティングファーム等を経て、現職。プリンシパル兼アジアジャパンデスク統括責任者として、アジア全域で消費財、小売・流通、自動車、商社、PEファンド等を中心にグローバル戦略、ポートフォリオ戦略、M&A、デジタライゼーション、事業再生等、幅広いテーマでのクライアント支援に従事している。
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Senior Project Manager, Asia Japan Desk
橋本 修平 氏
京都大学大学院工学研究科卒業後、ITベンチャーを経て、ローランド・ベルガーに参画。その後、米系コンサルティングファームを経て復職。自動車・モビリティ、消費財・小売を中心とする幅広いクライアントにおいて、グローバル戦略、新規事業、アライアンス、DX等の戦略立案・実行に関するプロジェクト経験を多数有する。
Roland Berger Co., Ltd.
ローランド・ベルガーは戦略コンサルティング・ファームの中で唯一の欧州出自。
□ 自動車、消費財、小売等の業界に強み
□ 日系企業支援を専門とする「ジャパンデスク」も有
□ アジア全域での戦略策定・実行支援をサポート
17th Floor, Sathorn Square Office Tower, 98 North Sathorn Road, Silom,
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Website : https://www.rolandberger.com/
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