CASE対応に求められる大変革〜部品メーカーの新規事業成功に向けて取り組むべき5つの視点 (前編)〜

ArayZ No.129 2022年9月発行

ArayZ No.129 2022年9月発行キーワードは「協創」日タイ関係新時代

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CASE対応に求められる大変革〜部品メーカーの新規事業成功に向けて取り組むべき5つの視点 (前編)〜

公開日 2022.09.10

部品メーカーが置かれている環境認識

人類にとって最大の脅威と言われる地球温暖化への対抗策として、二酸化炭素など温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにしようと、世界各国が規制化や様々な取り組みを始めています。また、通信技術の進展により、以前の第4世代と比べて最大100倍の通信速度を持つ第5世代移動通信規格(5G)の普及が20年から本格化しました。

こういった大きな環境変化は産業界のあらゆる分野に及びますが、特にその中でも顕著な動きが出ている産業の1つが自動車です。自動車・モビリティ産業では「CASE」(Connected、Autonomous、Shared、Electric)と呼ばれる環境変化のキーワードへの対策が急務となっており、完成車メーカー各社は挑戦的な電動化戦略などを打ち出しています。

CASEの中核を担うのが自動運転や電動車ですが、その本命とされる電気自動車では内燃機関系の部品が減少し、現在約3万点ある部品の内、1万点程度が不要になると言われています。当面はハイブリッド車も増加し、エンジンの需要は急減しないものの、30年頃から漸減していくといった予測が立てられています。

部品メーカー成功の鍵は 「エンジニアリングチェーン」

この影響は完成車メーカーだけでなく部品メーカーにも大きく波及するでしょう。内燃機関系の部品を事業の主軸にしているメーカーは、既存事業が先細っていく前に新規事業を立ち上げ、早急に次の事業の柱を構築しなければなりません。そのような中、部品メーカーの将来の成功のカギを握るのは各社の「エンジニアリングチェーン(未来構想~事業・商品企画~研究・開発・設計・生産技術)」領域と言えます。

エンジニアリングチェーンの役割は大きく2つあり、「既存事業における商品(製品・サービス)開発のQCD水準高度化」と「自社の強みとする技術を活用した新規事業の企画・開発」です(図表1)。

エンジニアリングチェーンに求められる2つの役割

部品メーカー各社には、これまで蓄積してきた強い技術があります。この技術を上手く活用しながら、新たな事業を企画・開発し、他社との連合により次世代技術を開発・獲得することが重要です。具体的には、部品の大幅なコストダウンを実現する技術の開発、「繋がるクルマ」で新たな課題となる製品セキュリティ対策の構築と実践、垂直統合から水平分業にシフトするビジネススキームに合った技術のオープン&クローズ戦略の立案・実行を行うなど、現在訪れている大変革期を乗り切るにはエンジニアリングチェーン領域の改革が求められています。

IoT時代における新規事業の着眼点

昨今のIoT時代において、部品メーカーの経営企画部門、事業企画部門、R&D部門などが連携して新規事業を考える際には、どのような着眼点があるでしょうか。IoTによって製品からデジタルデータが収集され、ネットワークで接続・連携されるエコシステムが形成されていますが、完成車メーカーと部品メーカーの立場の違いから考えてみたいと思います(図表2)。

自動車・部品メーカーにおける事業成長マトリクス

まず、完成車メーカーはモビリティ・エコシステムにおけるビジネスモデルを具体化し、「自動車の開発・製造・販売・アフターサービスの延長線上に自社の将来があるとは限らない」という意識を持つことが重要です。

部品メーカーの場合は、モビリティ・エコシステムでのポジショニングを考えるべき完成車メーカーと異なり、扱っている製品や技術をより様々な領域へ用途展開しやすいため、以前から事業成長の検討基軸であった「市場・顧客軸」と「製品・技術軸」の方向で事業展開を考えた方が、拡張性が高くなります。

図表2内にある「市場・顧客軸」では、自動車市場における既存顧客拡大と新規顧客開拓、自動車以外の市場での新規顧客開拓という方向性が示されています。

一方「製品・技術軸」で見ると、単品部品から周辺部品への製品領域の拡大、部品売り切り(モノ売り)から部品に関わるデジタルデータを活用したモノ+コト売りへの拡大、これまで培った開発技術・評価技術・製造技術などのノウハウ外販といった選択肢が考えられます。まずは自社が持つ技術を棚卸しし、コア技術を把握・研磨することで将来の有望市場・顧客への用途展開を確認しましょう。

後編では、先進的な取り組むを進めている部品メーカーの事例と成功に向けて取り組むべきことについてご紹介します。

本稿は、一般的な情報の提供を目的としたもので、専門コンサルティング・アドバイスとしてご利用頂くことを目的としたものではありません。情報の内容は法令・経済情勢等の変化により変更されることがありますのでご了承下さい。

寄稿者プロフィール

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日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社(PwCあらた有限責任監査法人、PwCコンサルティング合同会社、PwCアドバイザリー合同会社、PwC税理士法人を含む)。各法人は独立して事業を行い、相互に連携を取りながら監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、法務のサービスを提供する。

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THAIBIZ編集部

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