再エネから、EV、バッテリーまで時代の最先端を疾走 ~エナジー・アブソリュートのアモーン副社長インタビュー~

再エネから、EV、バッテリーまで時代の最先端を疾走 ~エナジー・アブソリュートのアモーン副社長インタビュー~

公開日 2024.04.08

バイオディーゼル燃料製造で創業しながらも、太陽光発電など再生可能エネルギー、そして電気自動車(EV)、さらにはEVバッテリーまで、最先端産業に次々に参入し、タイ産業界の注目を集め続けているのがエナジー・アブソリュート(EA)だ。THAIBIZでは2023年6月21日に行われた「ビジネスミッション」で東部チャチュンサオ県にあるEA生産拠点を視察した。今回は同社の共同創業者であるアモーン・サプタウィークン副社長にこれまでの事業展開や商用EVの見通し、EVやバッテリーをめぐる中国との競争などについて話を聞いた。

(インタビューは2月29日、聞き手:mediator ガンタトーンCEOとTHAIBIZ編集部)

EA(エナジー・アブソリュート)のアモーン副社長インタビューの様子01
mediator ガンタトーンCEO(左)、Energy Absolute アモーン副社長(右)

バイオディーゼルで創業、EVとバッテリーに展開

Q. これまでの事業展開について教えてください

アモーン副社長:当社はバイオディーゼル燃料製造で創業した。そこから、太陽光・風力発電事業、バスや商用車の電気自動車(EV)の組み立てやEV用リチウムイオンバッテリーの生産、充電設備などの新規事業を積極的に展開してきた。EVについては現在、川上から川下まで事業を行っている。

Q. EA創業の経緯、ソムポート社長との役割分担は。

アモーン副社長:以前は証券会社に務めていたが、当時の上司が現在のEA社長のソムポート・アフナイ氏の知り合いだった。その後、ソムポート氏に売りに出ていたバイオディーゼル燃料生産工場の買収作業を手伝ってほしいと頼まれた。結局、買収は成立し、私も一部の株式を保有することになり、EAの共同創業者となった。二人の役割分担は、ソムポート社長が事業全体と技術面、そしてさまざまな新規プロジェクトを担当、私は主に財務を担当している。

再生可能発電の不安定さに着目し、バッテリー事業に参入

Q. 現在の事業概要を具体的に教えてください

エナジー・アブソリュートの事業概要
「エナジー・アブソリュートの事業概要」出所:EA

アモーン副社長:(1)バイオディーゼル燃料:この事業は基本的に利幅が少ないため、主原料であるパーム油を「相変化材料(Phase Change Material=特定の温度で溶けたり固まったりする高融点材料で、材料の状態変化により熱エネルギーを吸収したり放出したりする)」にして、付加価値を生み出している。相変化材料は建物の外壁に利用され、熱を吸収し、建物内に熱が侵入するのを防ぐために利用されている。日本は最初に参入した市場で、日本のパートナーと提携し、多くの企業に製品を紹介してもらった。現在は中国や韓国などでも事業を展開している。

(2)水素化植物油(HVO):植物から作ったグリーンディーゼルだ。ディーゼル燃料に混ぜて利用することで、2酸化炭素(CO2)の排出を減らすことができる。さらに、持続可能な航空燃料(SAF)の原料にもなる。

(3)持続可能な航空燃料(SAF):将来、EVの普及が進むにつれてバイオディーゼル燃料の需要量は減少すると予測しているため、SAFに積極的に投資していく。

(4)再生可能エネルギー発電:4カ所に太陽光発電所(合計発電能力は278メガワット=MW)と2カ所に風力発電所(同386MW)を保有、運営している。

(5)電気自動車(EV)とリチウムイオンバッテリー事業:EV製造事業では子会社のアブソリュート・アセンブリー(AAB)で、電動の商用車(小型・大型トラック)やバス、ゴミ収集車、チャオプラヤー川を運航する電動ボート、電車などを製造している。バッテリー事業の始まりは再生可能エネルギー発電所が安定した電力を供給できない問題からだった。電力を貯蔵する必要があるため、リチウムイオンバッテリー事業を開始した。当社の電動バス・トラックに利用するほか、他のEVメーカーに販売する。将来的にはEVで使われなくなった中古バッテリーを購入して、発電所で使用することを計画している。この方法により他の発電所とのコスト競争で有利になる。

アブソリュート・アセンブリーの所有するEV工場
「アブソリュート・アセンブリーの所有するEV工場」出所:EA

コストパフォーマンスが重視される商用車はEV向き

Q. タイの乗用EV、商用EVの普及率の見通しは

アモーン副社長:タイでのEV乗用車の普及率は急上昇してきたが、長期的には商用EVの方が成長性はより大きいと思う。乗用車は個人の好みに左右されるが、商用車ではコストパフォーマンスが優先され、企業が内燃機関(ICE)車からEVに転換する可能性も高いからだ。企業は気候変動対策、カーボンニュートラルを達成するためにEVを採用していくことになるだろう。現在、EVはまだ初期段階にあるため、EVを販売するメーカーは顧客にICE車と比較したコストパフォーマンスを理解してもらう必要がある。

中国企業から学びながら強みを活かしていく

Q.中国製EVとの競合をどう考えるか

アモーン副社長:現時点で中国製EVに勝つのは困難であるため、中国から学びながら、当社の強みを生かしていく。EVでの事業戦略は次のように考えている。

(1)EVの車体は中国製よりコストを低く抑えることができないため、中国企業とパートナーを組み、安く買っている。一方、バッテリーやパワートレインなど他の部品は自社で生産している。

(2)タイは中国と自由貿易協定(FTA)を締結し、EV乗用車には輸入税がかからなくなったが、電動バスやトラックには輸入税がまだかかっている。われわれの工場は自由貿易地域(FTZ)内にあり、現地調達率の基準も達成しているので、輸入税を支払う必要がないという強みがある。

(3)十分なアフターサービスを提供しており、EV充電ステーション・充電設備の設置などのサービスも提供している。

(4)工場の効率性向上では、当社の従業員のスキルは中国企業ほど高くないことは認識している。現在は中国から専門家を呼んで、従業員を指導してもらっている。

将来的にはEVと水素燃料電池車(FCV)の競争も

Q. FCVの見通しをどう考えるか

アモーン副社長:水素自動車のエネルギー変換コストが高い問題が解決できれば、世界のトレンドが水素燃料電池自動車(FCV)にシフトする可能性はあると思う。現在、研究開発投資が多いEVが急成長しているが、最終的には、EVとFCVは互いに競争し続けることになるだろう。

日本はスピードとのバランスを取って、その強みを活かす

EA(エナジー・アブソリュート)のアモーン副社長インタビューの様子04

Q. 中国企業と日本企業の研究開発のスピードの違いが指摘されているが

アモーン副社長:中国企業は研究開発スピードを重視し、問題に直面してから解決していくアプローチだ。この手法は現在の世界のビジネスに適しており、中国が急速に発展する原因となっている。一方、日本は技術的な基盤はしっかりしているが、新しいことをやって失敗したら、どうやって責任を取るかということばかり考えてきたため、新しいことに挑戦する勇気が乏しいのかもしれない。世界と戦っていくためには、日本が持っている強みを生かしながら、スピードとのバランスを取っていかなければならないと思う。例えば、すぐに100%が実現できなくても、まずは70%ぐらいの達成を目指し、新規プロジェクトや開発を進める方法もある。

Q. 日本企業による技術面での協力を歓迎

アモーン副社長:われわれは日本企業の技術面での協力を歓迎している。われわれの考え方は、どの会社でも得意な技術を持っていれば、その会社の技術を利用していく。例えば、子会社のアミタ・テクノロジー(タイ)のバッテリー工場では、東レのコーティング・マシーンがトップだと確信して利用している。

タイはインフラ、電力の安定供給に強み

Q. タイ政府の「30@30」目標やEV支援政策、EVハブ化についてどう考えるか

アモーン副社長:タイは年次開発計画のようなより継続的で詳細な政策が必要だと思う。また、タイの強みをアピールし、より多くの海外投資を誘致すべきだ。例えば、人件費は東南アジアの他の国より高くなってきているが、インフラが整っているほか、電力は安定しており、送電網と充電ステーションも全国をカバーしている。また、現在のタイのEV市場には多くのメーカーが新たに参入しているため、消費者の選択肢は多くなり、より多くの新しい顧客を引き寄せている。


アモーン・サプタウィークン氏(Mr. Amorn Sapthaweekul)
Deputy CEO, Energy Absolute Public Company Limited

タマサート大学経営学部卒業、チュラロンコン大学ファイナンス修士課程修了。2012年にEAに参画する前は投資銀行家として、多数の企業に財務面でのアドバイスを提供するとともに、事業戦略の策定を支援した。2020~2022年にはタイ工業連盟(FTI)の再生可能エネルギー産業グループの副会長を務めた。


THAIBIZ編集部

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