カテゴリー: ビジネス・経済, ASEAN・中国・インド
公開日 2022.11.22
タイ商工会議所(TCC)は11月3日、バンコク市内のシャングリラホテルで、タイと中国の貿易・投資関係を強化することを目的に、両国の政府と民間企業の関係者が参加する「タイ・中国投資フォーラム」を開催した。同フォーラムでは、韓志強・駐タイ中国大使があいさつをした後、タイのプラユット首相が基調講演した。
同フォーラムではまず、サナンTCC会頭が開会あいさつで、「フォーラムは中国の協力によりタイ経済を発展させるための重要な取り組みであり、タイと中国の貿易・投資関係を支援する」と強調。その上で、中国の投資家によるタイへの投資を奨励するため、両国の大学が実施したタイに投資している中国人投資家に対する調査の結果を発表することも狙いだと述べた。さらに、フォーラム参加者はタイ投資委員会(BOI)や中国商務部などの関連機関から両国の投資促進政策について直接情報を得られるほか、有力投資家から投資体験談を聞くこともできると説明した。
続いて開会あいさつに登壇した韓志強・駐タイ中国大使は、「2022年は中国とタイの包括的戦略協力パートナーシップの創設10周年であり、中国とタイの関係は新たな出発点に立っている。今回のフォーラムはアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の『予熱』ともなり、中国とタイの緊密な協力、総合的な発展、未来を共有する共同体の構築に強い推進力を与えるものだ」と訴えた。
そして、プラユット首相は基調講演で、「フォーラムは、タイと中国の経済協力と関係を深化させるのに役立つだろう。中国はタイの主要な貿易相手国だ。両者の経済関係は成長、安定、結束に適した環境づくりに役立ち、相互の持続可能な発展につながる」と指摘。タイ政府は国境開放政策を通じて、外国からの投資、観光、サービスなどの分野の回復を推し進めている」と述べた。タイと中国の両政府は今年、包括的戦略パートナーシップは10年を迎え、タイ政府は北京政府と次の10年に向けて両国の関係をさらに強化する方針を表明した。
今回のフォーラムのハイライトは、TCCと駐タイ中国大使館の支援を受けて、チュラロンコン大学アジア研究所・中国研究センターと雲南大学の研究者が実施したタイに投資している中国人投資家に対する調査の結果公表と投資促進ガイドライン提示だった。これについてサナンTCC会頭は「タイはこれまでも、特に貿易や投資の面で中国を重要視してきた。タイは、中国人による投資を歓迎する用意は整っている。今回の調査に関するTCCと在タイ中国大使館の準備作業は6カ月前に始まった。今回の調査結果が、タイと中国の間のあらゆる面での投資を具体的に推進し、貿易、投資、観光の各分野が来年には飛躍的な成長を取り戻す機会になると期待される。今回の調査結果の内容は今後、両国の官民に発信されていくだろう」と述べた。同調査結果では中国からのタイへの投資に対する次のような6つの障壁があることが分かったという。
(1)タイの投資政策の問題はまだ多い。多くの中国人投資家は、タイへの投資に関する情報提供や支援をしてくれる機関があることを知らない。
(2)中国人投資家の土地購入の問題では、投資額、土地面積、土地の使用目的などまだ不明確で、制限がある。
(3)タイでは市場が小さく、魅力がなく、消費需要がない業種がある。老舗メーカーの市場独占も多い。製造業、観光業、サービス業、農業などでは消費者ニーズに応えられる企業がすでにある。
(4)労働力不足、語学力・技術・専門知識の不足、また労働賃金が高いなどの労働問題がある。
(5)国内インフラが国外に接続されておらず、完成が遅れているなどのインフラ整備に問題がある。
(6)中国投資家にとって不利な規制の問題がある。多くの中国投資家はタイの法律や規制を理解できず、不安を感じている。法律が古かったり、不明確な点があったり、トラブルが多い。
今回の調査を担当した両国のワーキンググループはこの調査結果を受けて、タイと中国間の貿易と投資を促進するためのガイドラインを提示した。
(1)タイ・中国間の貿易・投資協力メカニズムを改善する。公式レベルでの交渉メカニズム、中国語とタイ語の両方で貿易・投資情報を共有するためのプラットフォームを確立。タイ・中国の各業界団体と商工会議所の交流をなど、タイと中国の企業間ネットワークを構築するために、TCCと各業界団体が橋渡しの役割を効果的に果たす。
(2)タイにおける中国からの投資協力の範囲を拡大する。これは「インダストリー4.0」戦略や東部経済回廊(ECC)計画に沿ったもので、地域的な包括的経済連携(RCEP)を活用し、中国・アジア自由貿易圏を構築する。「瀾滄江メコン開発協力(LMC)」の枠組みをアップグレードし、中国・ラオス・タイ鉄道により貿易・投資・観光を促進する。
(3)タイと中国での工業団地開発では、タイと中国それぞれが、相手国に自分の国の工業団地を1カ所ずつ整備するという「2国2工業団地」協力モデルを模索する。
(4)タイと中国の大学の連携を推進し、言語教育を奨励、両国の高等教育機関や企業間の協力関係を構築することで、人材育成におけるタイ・中国間の協力をさらに強化する。
(5)投資情報サービスシステムをタイにおける総合的なサービスシステムに向上させ、タイで通信アプリ「微信(ウィーチャット)」公式アカウントを導入する。また現在中国内3カ所にあるタイ投資委員会(BOI)の事務所を増やす。
TJRI編集部
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