タイが日本に投資する時代がやってきた – 注目集まる「七顛八起」のニッポン経済

THAIBIZ No.164 2025年8月発行

THAIBIZ No.164 2025年8月発行在タイ日系製造業の変革 日新電機タイが変われた理由

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タイが日本に投資する時代がやってきた – 注目集まる「七顛八起」のニッポン経済

公開日 2025.08.08

「眠っていた巨人が目覚めた」。2025年に入り、タイの新興メディアが久々に日本経済に注目し、このようなポジティブな発信を始めている。特に『 ลงทุนแมน(ロントゥンマン)』が運営するYouTubeチャンネルでは「日本経済の復活」をテーマにした解説動画が公開され、個人投資家層の関心を集めた。

ロントゥンマンは、若手ビジネスパーソンや投資家層に支持されるオンラインメディアで、わかりやすい解説記事や動画を通じてタイ国内外の経済・ビジネス動向を伝えている。今回の動画では、日本が「失われた30年」を経て、今なぜ投資先として注目されているのかを多角的に掘り下げている。

日本経済、復活への歩み

日本は「七顛八起」の国。第二次世界大戦後に短期間で復興を果たし、世界第2位の経済大国に成長した。しかし、1990年代初頭のバブル崩壊を機に「失われた30年」と言われる長期低迷期に突入。日経平均株価は4万円台から1万円台にまで急落し、経済全体が伸び悩んだ。

転機となったのが、2012年に始まった「アベノミクス」だった。大胆な金融緩和、積極的な財政出動、構造改革のいわゆる「三本の矢」が放たれ、長く続いたデフレからの脱却に向けた基盤が築かれた。

コロナ禍を経た現在、日本は円安を背景に、輸出・観光の回復や民間企業の投資意欲が高まるなど、ようやく本格的な成長軌道に戻りつつあると言える。

変わる産業構造と日本の強みの再定義

かつて電機・家電立国の象徴だった日本だが、競争環境の変化により、産業構造は大きく変わった。大量・安価・高品質の製品単体で勝負する時代から、今は高付加価値・ニッチ分野へのシフトを進めている。

例えば、半導体の素材や製造装置といった「見えないインフラ」分野では、今なお日本が世界の供給網を支えている。また、職人技術や品質にこだわる「クラフトマンシップ」を活かし、プレミアム志向市場でも存在感を高めており、独自の強みとして再認識されている。

外国人労働力と女性の活躍は「変革の証」

日本社会は長らく保守的と言われてきたが、労働環境も変わりつつある。外国人労働者は2024年に過去最多の230万人に達し、女性の労働参加率も55.3%と、かつてない水準に伸びた。

変革に時間はかかるが、一度方針を定めると、全体最適を前提に仕組みを整え、着実に実行していく強さを持っている。これもまた、外からは見えにくい日本の特徴だ。

タイの投資家が注目する理由

動画内では、投資家ウォーレン・バフェット氏による総合商社への投資にも触れられている。これは単なる投資判断にとどまらず、日本企業の多様性と堅実な経営が国際的に信頼されている表れだ。

現在の日本市場は依然として割安感があり、観光・ホテル・消費財といった内需の関連分野では成長余地も大きい。こうした背景から、タイの個人投資家にとっても魅力的な投資先として関心が高まっている。

タイと日本は新しい関係性へ

近年は、代替エネルギーやホテルなどの分野で、タイ企業が日本市場に進出する事例が増えてきた。これに加え、「タイ人個人が日本に投資する時代」 が本格的に始まろうとしている。

日本はこれまでタイ人にとって人気の観光先として親しまれてきたが、ビジネス面では距離があった。しかし、投資という新たな関わりを通じて、日本企業の本質や強みに触れる機会が増えれば、相互理解と協業・協創の可能性もさらに広がっていくだろう。


ロントゥンマンの参考動画

INSIGHTS ON JAPAN ECONOMY
▶︎EP.1: 失われた30年後、日本経済は本当に暗黒から脱したのか
▶︎EP.2: 老舗企業伊藤忠が1,000億超の利益。一体どんなビジネスか
▶︎EP.3: 日本を牽引する二大巨頭―JR東日本と川崎重工に迫る
▶︎EP.4:“技術王国日本”はどこへ? 世界の舞台から消えた理由を探る
▶︎EP.5: 失われた30年を経た日本経済は本当に停滞を抜け出したのか?
▶︎EP.6:MADE IN JAPANは今も世界で求められているのか?

Mediator Co., Ltd.
Chief Executive Officer

ガンタトーン・ワンナワス

在日経験通算10年。2004年埼玉大学工学部卒業後、在京タイ王国大使館工業部へ入館。タイ国の王室関係者や省庁関係者のアテンドや通訳を行い、タイ帰国後の2009年にメディエーターを設立。日本政府機関や日系企業のプロジェクトをコーディネート。日本人駐在員やタイ人従業員に向けて異文化をテーマとした講演・セミナーを実施(講演実績、延べ12,000人以上)。

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