

公開日 2025.11.10


日本で学んだ元留学生や研修生たちが中心となって1973年に設立されたTPA。以来50年以上にわたる活動の背景には、「常に日本側パートナーであるJTECS、そしてAOTSの協力があった」とTPAのプラニー会長は語る。ここでは、プラニー会長と日本側パートナーであるAOTSの田村真善バンコク事務所長に、両者の協力の歩みと今後の展望を聞いた。
これまでのTPAとAOTSの協力背景やそれぞれの役割についてお聞かせください
プラニー会長:TPAの設立にあたってはJTECS初代理事長の穂積五一氏の多大な尽力がありました。穂積氏は「金は出すが口は出さない」という原則を掲げ、タイ側の自主性を尊重する協力姿勢を示しました。そのおかげで、50年以上にわたり両組織は対等で信頼ある関係を築くことができました。
TPAは現地に根ざした研修機関として、日本の知識や技術をタイ産業界に定着させる役割を担ってきました。知識や技術を単に輸入するのではなく、タイの文化や産業構造に合わせてカスタマイズして広めることが使命です。
日本語教育や通訳・翻訳を通じたコミュニケーション支援、品質保証の基盤づくりなど、多面的な活動の積み重ねこそがTPAの強みだと考えています。
田村所長:AOTSは1959年の設立以来、20万人以上の外国人研修生の日本への受け入れと1万人以上の日本人専門家の海外派遣を行ってきました。特にタイは主要対象国の一つで、延べ7万人以上の産業人材育成を支援してきました。
その成果は、技能向上や技術移転による、産業基盤の強化や日系企業進出の円滑化に留まらず、両国の文化交流や友好関係にも及んでいます。AOTS研修を受けた人材が中心となり、TPAやTNIが設立されたことも象徴的です。
近年はGXやDXといった新領域での指導者の育成も新たな役割となっています。国際環境の目まぐるしい変化に柔軟に対応するべく、AOTSとJTECSは今年4月に統合し、AOTSのグローバルネットワークとJTECSに蓄積された知見を融合して、両国共通の課題により深く取り組んでいます。
今年4月に締結したTPA×TNI×AOTSの3者間MOUの狙いについて教えてください
プラニー会長:産業人材育成等相互協力覚書(MOU)の目的は、タイと日本、さらに周辺国の経済発展や相互理解を深めることです。その手段として、人材育成を通じた技術交流や企業同士のネットワーク形成、新規進出企業の支援などが盛り込まれています。
TNIは教員育成や学生のインターンシップ、就職機会の提供を、AOTSはグローバルネットワークや専門知識を、TPAは現地での展開を担い、産業の持続的な発展に貢献していきます(図表2)。


田村所長:これまでも3者間の連携関係はありましたが、今回のMOUで取り組みの方向性や課題認識を一体化できた意義は大きいと考えています。複雑かつ不安定で先が読めない昨今の国際環境下において、協力体制のさらなる強化は不可欠です。
AOTSは日本の経済産業省の施策を現地に橋渡しする役割も担っており、今回のMOUはその役割を明確にした側面もあります。今後も日本とタイの共通課題を踏まえた多様な研修プログラムを展開し、より良いパートナーシップを築いていきたいと考えています。


今後の日タイ経済・産業協力にどのような機会や可能性を感じていますか
プラニー会長:今後の日タイ協力は、EVやGX、DX、AI、スマートファクトリーなど新たな成長分野に広がると考えています。タイはASEANの中心に位置し、製造拠点としての強みを持っています。
一方、日本は高度な技術力と人材育成に強みがあります。両国の強みを組み合わせることで、新しい産業や付加価値の高いビジネスが生まれるでしょう。
TPAはこれまで多様なパートナーと連携してきましたが、今後は産業界にとどまらず、大学や研究機関、行政、地域社会も巻き込みながら、新たな成長分野での次世代リーダー育成に力を入れていきたいと考えています。
田村所長:米国関税の影響や脱炭素化の要請が世界的に強まる中、サプライチェーン全体でのコスト低減や二酸化炭素(CO2)排出削減が求められています。
日本発のカイゼンの知見に裏打ちされたリーン生産方式は、生産の効率化と省エネとの連動性から再び重要性が高まると考えています。これらにIoTや自動制御といったデジタル技術を組み合わせることで、GXとDXを同時に進めることもできます。
また近年は、中小・中堅企業やスタートアップがタイを足がかりにASEAN展開を試みる動きもあり、同時に製造業のみならず食品や農業など異業種との協働による新しいビジネスモデルの創出にも期待が高まります。
日タイの持続可能な連携に向けた将来展望をお聞かせください
プラニー会長:日タイの持続的な産業連携には、環境対策や脱炭素、循環型経済への取り組み、若手人材の育成など、長期的な視点で価値を生み出す仕組みが欠かせません。これまで日本の政府機関や民間企業の多面的なご支援により、TPAは日タイの産業協力の中心的な役割を担うことができました。
来年2月にリニューアルオープンする「TPA29」は、日タイの産業の共創拠点として、新たな価値創出やイノベーションを生み出す場となることを期待しています。
田村所長:日タイの連携は長い歴史の上に成り立っています。これからは「支援」だけでなく、共に考え、共に作る「共創」の時代です。日本で学びタイに戻って活躍するタイ人リーダーの方々や彼らが所属する企業等との連携を通じて、新しい価値を生み出していくことがますます重要だと考えています。
そのためにAOTSとしても研修や人材交流を通じて、未来に向けて双方が共に成長できる環境づくりを進めていきたいと考えています。


THAIBIZ編集部
サラーウット・インタナサック / タニダ・アリーガンラート / 岡部真由美





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