AECで何が変わる!? ASEAN物流網の課題と展望

AECで何が変わる!? ASEAN物流網の課題と展望

公開日 2016.02.18

AECの工程表〝ブループリント〞

2007年11月に開催された〝第13回ASEANサミット〞において、AEC設立に向けた工程表となる〝AECブループリント〞が採択された。ブループリントは(A)単一の市場と生産基地、(B)競争力のある地域、(C)公平な経済発展、(D)グローバルな経済への統合―が定義されており、17の中核要素を08年から15年にかけ、4段階で実施された(図表4)。

arayz feb 2016

(A)の主な措置として、①物品貿易の自由化、② サービスの自由な移動、③投資の自由な移動、④資本のより自由な移動、⑤熟練労働者のより自由な移動―などが挙げられ、さらに①の物品貿易の分野では関税撤廃、貿易円滑化、非関税障壁撤廃、税関統合、原産地規則、ASEANシングルウィンドウ(ASW(※1、21頁))、基準・規格統一・相互承認(MRA)などがある。
それから8年後の15年11月、クアラルンプールで開催された〝第27回ASEAN首脳会議〞で10種類の公式文書が採択された。この中で、AECに関しては〝ASEAN共同体の設立に関するクアラルンプール宣言〞が採択され、同年12月31日にASEAN経済共同体(AEC)を正式に発足することを宣言。同時に、次の10年間のASEAN統合の方向性を示す〝ASEAN2015:共に前進(Forging Ahead Together)〞が採択された。
また、ASEAN2015に関するクアラルンプール宣言、ASEAN共同体ビジョン2025などに並び、〝AECブループリント2025〞(図表5)も発表された。これは16年から25年までの10年間におけるASEAN経済統合の方向性を示すもので、①統合され、高度に結束した経済、②競争力があり、革新的でダイナミックなASEAN、③強化された連結性と分野別協力、④ 強靭で包摂的、人本位で人が中心にあるASEAN、⑤グローバルなASEAN―の5つの柱から構成されている。

arayz feb 2016

 

ブループリントの達成度と残る課題

ASEANは同月、15年までのAECブループリントにおける各種措置の実施状況を評価・分析した2つの報告書を発表。
〝AEC2015:進捗および主な成果〞では、15年10月末時点での措置の達成率と統合の柱に沿った主な成果が掲載された。達成率については、ブループリント上の611措置のうち486措置(79.5%)を達成。
最優先で実施すべき506項目のうち469項目(92.7%)を達成したとしている。
物品貿易分野における主な成果としては、①ASEAN加盟国全体で95.99%の品目で関税撤廃、②ASEAN物品貿易協定(ATIGA)の原産地規則が簡素化、③原産地証明制度導入に向けた取り組みが進行していること、④ASW構築に向けた原産地証明書の電子的交換が5ヵ国間の試験プロジェクトとして運用され、導入に関する法的枠組みに関する議定書への署名が完了、⑤域内貿易関連情報の一元窓口(ASEANトレードレポジトリ、ATR(※2、21頁))の構築に向けた作業が進行していること―などが挙げられた。また、基準・認証の分野でも化粧品、医療機器、電気電子で相互承認協定が発効したことなどが報告されたが、非関税障壁などの部分ではまだ数多くの課題が残っている(図表6)。
「〝AEC2015: 進捗および主な成果〞での評価は、署名や発効までの時点で『達成した』と自己評価したものであって、実際に運用・実施されているかまでをフォローしたものではありません。AECにはさまざまな枠組み協定があり、ASEAN各国がそれぞれ署名や発効までは行っていても、国内法の改定作業が進んでいないために運用・実施が遅れていることが考えられます。例えば熟練労働者の移動についてタイで見た時、タイ国内法では外国人事業法などが関連付られるため、枠組み協定とのすり合わせといったことが求められるというわけです。ブループリント2025は、15年までの方向性を踏襲しつつ、15年までに達成できなかった項目の実施を急ぐとともに、統合措置の進展を土台とした統合の深化、および高度化を目指すものとなっています。ただ、達成期限が明記されていないので、今後、ASEAN事務局が示すアクションプランを追っていく必要があります」。

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JETROバンコク事務所・主任調査研究員(アジア)の伊藤博敏氏

 

〝AECブループリント2025〞への期待

THAIBIZ編集部

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