カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2016.04.29
目次
首都・プノンペンの発展は著しく、街中で建設ラッシュが続いている。日系で言えばイオンモールが2014年に1号店を開業、これに伴い、家電量販店のノジマや飲食店のワタミも同SC内に出店した。現在は2号店の工事が18年の開業を目指して進められている。
都市インフラの面でも日本国際協力機構(JICA)がプノンペン市内公共バス事業の技術協力を行っており、14年時に3ルートが開通済み、さらに10ルートが20年までに開通する予定だ。
カンボジアでビジネスを展開するにあたって他メコン諸国と大きく異なるのは、外国直接投資( Foreign Direct Investment、FDI)に関する政策だ。外国法人の土地所有を除き、投資制限は特段設けられておらず、自由で積極的な投資を奨励することを目的に制定されている。つまり、外国法人は内国法人と差別なく、多くの分野で自由に投資することが可能となっている。
進出の方法には、①経済特区内の適格投資案件(QIP)、②それ以外の場所で実施される適格投資案件、③適格投資案件とならない通常の投資案件―の3つがあり、それぞれ、①は商業省(商業登記)、②はカンボジア経済特区委員会または経済特区管理事務所へのQIP申請、③はカンボジア投資委員会へのQIP申請と、所轄の審査機関が異なる。
外資規制については、「改正投資法施行のための政令No. 111」内の「投資禁止分野」、「ネガティブリスト」に基づいて、ネガティブリスト方式で外資規制が規定されている。通常、ネガティブリストには基本的に外国資本の投資が禁止される業種がまとめられており、当該リストに記載されていない業種については外資企業は自由に投資できると考えられているが、カンボジアにおいて「ネガティブリスト」が意味するのはQIP不認可案件であり、他国における「ネガティブリスト」の概念とは異なるので留意が必要だ。
なお、カンボジアにおける株式や機関については、主に「会社法(2005年6月公布)」で規定されており、この273条で、国内でいかなる事業活動(商行為)を行う外国法人も、カンボジア商業登記法に従い、商業登記を行わなければならないと定められている。
労働法務については、1997年労働法によって定められていることが主だが、例えば、雇用契約の変更などに関する規定などには不明な点も存在している。また、本労働法を支える細則も十分に整備されているとは言い難い。世界水準の労働法制度に向けて、徐々に整備が進められている。
2016年3月時点で、カンボジア日本人商工会の会員企業数は171社となっている。ミネベア(小型モーター)や、住友電装(自動車用ワイヤーハーネス)、矢崎総業(自動車部品)といった大手が先駆者として工場を稼働させたことなどをきっかけに、日系企業の進出が活発化、自由な外国直接投資制度を活用したスタートアップも増加している。
首都プノンペンの中心地から約18kmに位置する、日系のプノンペン経済特別区には、デンソー(自動車部品)をはじめ、日系企業約40社が入居しているほか、タイ国境に面する北西部ポイペトの経済特区にも注目が集まっている。
2015年12月には、カンボジアのフン・セン首相とタイのプラユット・チャンオチャ暫定首相と会談し、タイ東部アランヤプラテートとポイペト間の国境で16年上半期中に鉄道を整備。同年中にはバンコクとプノンペンを結ぶ列車を運行させる方針で合意している。
【参考】カンボジア開発評議会・カンボジア投資委員会・カンボジア経済特別区委員会ウェブサイト(www.cambodiainvestment.gov.kh)
CDCカンボジア投資ガイドブック 2013年
日本貿易振興機構(ジェトロ)ウェブサイト(www.jetro.go.jp/world/asia/kh/)
豊田通商が手がけるテクノパーク・ポイペトの完成イメージ。事務所には日本人が常駐する
テクノパーク・ポイペトは、タイ側国境から7〜8kmの距離に位置し、タイからのトラック乗り入れが可能なエリアにある(※)。タイ東部臨海工業地域においてはバンコクから行くよりも近い。海抜高度50m程度と洪水の心配も少なく、豊富な労働力と手厚い投資インセンティブに恵まれている。
同事業の総敷地面積は約6万㎡で、合計4棟の建屋(約3万㎡)が建設される予定だ。第1期として2万㎡に1棟の建屋着工が進められており、順次、第2期および第3期の建設が計画されている。「建屋は日系専業による設計・電設面で品質を確保し、ローカルゼネコンの施工によりコスト抑制に努めました」と話すのは、TOYOTA TSUSHO (THAILAND) CO., LTD. のシニア・マネジメント・コーディネーターの清水祥介氏だ。1000㎡規模の賃貸区画内には事務所、手洗い場、消火栓、シャッターなどが備わっており、スピーディーな生産ライン立ち上げや、入居する顧客の初期投資抑制を可能にしている。
豊田通商営業開発部・テクノパーク事業室室長兼TECHNO PARK POI PET Pvt. Co., Ltd. マネージング・ダイレクターの龍田貴行氏は、「当社はテクノパーク事業を不動産事業ではなく、サービス事業として捉えています。間接部門、バックオフィス機能を当社がサポートし、小規模区画の賃貸工場ですので、進出しやすい環境は整っていると思います」と話す。進出サポートをはじめ、人材派遣(非熟練工)や従業員向け給食サービスのほか、総務・経理・財務・人事といったアドミニストレーション業務まで、フルパッケージでのトータルサポートを提供することで、入居顧客がモノづくりに専念できる環境整備に注力しているという。
テクノパーク・ポイペトでは「トライアル進出サービス」を提供している。これは会社
登記前に現地での生産を始められるサービスで、顧客側が技術者派遣、現場育成、設備・治具貸与、品質管理などを、テクノパーク側がワーカー手配、労務管理、在庫管理などを行う(※請負契約とは異なる)。
本格進出する前にワーカーの質や製造環境などを実体験できる、画期的な試みだ。
タイ―カンボジア間で発生する部品や製品のクロスボーダー物流コストにも対策を講じている。「当社の物流インフラ活用と、将来的には混載集約物流を実現することで、コストを抑えた効率的な物流を実施していきたいと考えています。進出を検討されている企業様に、ロジスティクス事業で培ってきた経験を活かした調達物流面でのご提案をいたします」(清水氏)。
「タイ―カンボジア間を繋ぐ鉄道の開通や、貨物トラック専用のイミグレーションも開設が予定されており、物流にかかる時間の短縮も期待できると考えています」(龍田氏)。
テクノパーク近くでは、現地民間業者による外国人用の住宅整備も進められており、すでに日本人の入居者もいるという。
ポイペトの製造・生活の環境は整いつつある。
※国境から20km圏内はタイからのトラック乗り入れが可能となっている
清水祥介氏
龍田貴行氏
Toyota Tsusho (Thailand) Co., Ltd.
607 Asoke-Dindaeng Road, Kwaeng Dindaeng, Khet Dindaeng, Bangkok, 10400
02-625-5555
www.tttc.co.th/english/
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