カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2022.06.21
食糧価格を含めた国際商品相場の高騰、インフレ高進を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)は6月15日、0.75%の利上げを決めた。引き上げは3会合連続で、0.75%という利上げ幅は1994年11月以来の約27年半ぶりという。こうした米国の金融引き締め姿勢を受けて各国も一斉に利上げ局面に入ってくる見込みで、タイ中央銀行も利上げを示唆し始めた。
6月14日付のバンコク・ポストによるとタイ中銀のセタプット総裁はオンライン通信社のセミナーで講演し、「もし中銀が長く待ちすぎて、インフレ率が上昇し続けた場合、タイは劇薬を使うか、金利を大幅に引き上げなければならなくなる可能性があり、誰もこうした対策を望んでいない」と指摘。「インフレ率が上昇し続けているため、政策金利の引き上げは遅すぎてはいけない」と述べ、今後の利上げ方針を示唆した。
タイ中銀は6月8日の金融政策決定委員会(MPC)で、政策金利の1日物レポ金利を0.50%に据え置くことを決めた。据え置きは2020年5月以来16回連続。ただ、投票した7人の委員のうち、3人が0.25%の利上げを主張した。MPCは声明で超金融緩和の必要性は今後低下していくとし、金融政策を徐々に正常化する適切なタイミングを検討するだろうとした。次回MPCは8月10日の予定。同記事によると、多くの調査会社が高インフレ率の継続に対応して、タイは今年下半期には政策金利の引き上げサイクルに入るだろうと予想している。
また、6月15日付のザ・スタンダード・ウェルスはキアトナキン銀行(KKP)傘下のKKPリサーチはインフレ率予想に関するリポートを伝えている。同リポートはインフレは短期的な問題ではなく、当初予想よりも長期間上昇するだろうと指摘した上で、政策金利の方向性は変わるとし、インフレ率予想を2022年6.6%、2023年3.1%に引き上げた。
新型コロナウイルス規制の緩和に伴うインフレ圧力は解消され始める可能性があるものの、世界とタイのインフレ率は高水準にとどまると予想。その理由として、①金融政策のインフレ対応が遅く、米国では実質金利とインフレ率のギャップが1970~1980年の危機以来の大きな幅になっている ②インフレの物品価格への転嫁はこれからで、物価はさらに上昇する。例えば米国ではコスト高。供給抑制で住宅価格が大幅上昇、これが賃料の上昇をもたらし、2023年のインフレ率は高止まる ③地政学的な紛争が石油と食糧価格に影響を与え、世界のインフレ圧力は収まっていない―ことを挙げた。
この結果、タイの国内インフレ圧力は相当なもので世界の金融政策は明らかに引き締め方向となり、タイ中銀のMPCは次回会合から政策金利を見直し、年内に3回の利上げ、2023年にはさらに4回の利上げを実施するだろうとの見通しを示している。
また、15日付バンコク・ポストによるとスイスの国際経営開発研究所(IMD)は恒例の世界競争力ランキングの2022年版を発表。それによるとタイは33位と、前年の28位から順位を下げた。また同紙によると、サイアム・コマーシャル銀行(SCB)の調査機関エコノミック・インテリジェント・センター(EIC)は最新経済見通しで、輸出の鈍化を受けて、観光がタイの経済回復の主要エンジンになるだろうと指摘し、2022年の外国人訪問者数予想を740万人と従来の570万人から上方修正した。ただそれでも新型コロナウイルス流行前の2019年の4000万人からはほど遠い。さらに18日付の同紙は、保険サービス大手ユーロップ・アシスタンスなどの共同調査として、タイ人の旅行熱は再燃しており、今年の夏季休暇期のタイ人の旅行予算は前年同期比18%増加するとの予測を示している。
TJRI編集部
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