中国EVメーカーが補助金断念か、半導体政策委員会始動

中国EVメーカーが補助金断念か、半導体政策委員会始動

公開日 2024.12.09

国内自動車市場の低迷に伴い、多くの電気自動車(EV)メーカーは、生産計画の見直しを迫られ、タイ政府のEV生産・購入促進策「EV3.0」に基づく補助金受け取りの断念を検討している。12月6日付バンコク・ポスト(ビジネス1面)がタイ電気自動車協会(EVAT)の話として伝えた。

2022~2023年のEV生産・販売を促進する「EV3.0」制度では、EVメーカーは物品税と輸入関税の減額の恩典を受けられる代わりに、2024年から政府が設定する台数の国内生産が義務付けられている。特に中国のEVメーカーはこの国内生産義務の緩和を求めているが、国内市場が低迷する中で、この補助金は販売拡大につながらないと考えるようになっているという。EVATのスロット会長は「多くの企業が、消費者の購買力の低下と自動車金融会社が厳しい自動車ローン基準を適用する中で、補助金受け取りを諦める話をしている」と述べた。

自動車市場全般、そしてEV販売の減速に伴い、中国系EVメーカーが要望していた、EV促進策「EV3.0」の条件緩和が決まった。タイ投資委員会(BOI)は12月4日、国家電気自動車政策委員会(EV Board、議長=ペートンタン首相)が4日に開催した会議で、「EV3.0」に参加しているバッテリーEV(BEV)メーカーに適用される国内生産義務の開始を延長することを決めた。2024年の目標を達成できなかったメーカーは「EV3.5」制度の期間に移行可能とし、実質延期することを認めた。ただ、EV3.0の目標を達成できずにEV3.5に移行した場合、どちらの制度からの関税引き下げなどのインセンティブを受けることはできない。また、EV3.0制度で輸入した完成車(CBU)を再輸出することも認められるとしている。

さらにBOIは、今年7月に導入したハイブリッド車(HEV)の物品税を一時的に引き下げる恩典措置の対象に電圧が60ボルト未満のマイルドハイブリッド車(MHEV)を含めると発表した。減税措置の対象となるHEVは10人乗り以下で、減税期間は2028~2032年。2026年までに10億バーツ以上、2024~2028年に50億バーツの新規投資が必要となる。


BOIは12月4日、新たに設置された国家半導体・先端電子政策委員会(Semiconductor Board、議長=ペートンタン首相)が、タイの国家半導体戦略に向けた枠組みと半導体分野への外国直接投資(FDI)の新たな波に備えるためのスキルの高い労働者の開発戦略を承認したと発表した。この分野のFDIは2029年までに5000億バーツ(150億ドル)に達する可能性があるという。労働者開発戦略では、修士・博士レベルの研究者1400人を含む8万6000人以上を対象にスキル向上、訓練を実施する。


5月12日付バンコク・ポストは9面で、「中国と日本の価値はいかに違うか」という興味深いオピニオン記事を掲載している。同記事はマレーシアのマハティール元首相の「アジアの価値」「ルック・イースト政策」に言及した上で、日本は今、控えめで誠実な姿勢にこだわる「アジア的」な行動様式で評価を得ているが、中国は経済ブームが起きて以後、最近はあからさまに傲慢な態度だと指摘。日本と中国の不釣り合いなリーダーシップのスタイルは外交交渉だけではないとし、タイでも特にインフラ領域で両国が競争する中で、その差異は明確だと強調した。その上で、日本の海外への柔軟な資金拠出は何十年も地元の環境と良く調整して行われ、習近平国家主席の巨大経済圏構想「一帯一路」のように見掛け倒しでもなく、自己満足的でもないとの認識を示した。


少し前になるが英エコノミスト誌は10月26日号のLeadersの1本「アジアの独占企業の眠りを覚ます時だ」というタイトルの記事で、東南アジアの財閥などの独占企業と政治家との癒着という構造問題を分析している。同記事はまず、インドネシアのプラボウォ政権幹部と財閥家とのつながりの深さを指摘した上で、「連帯は常に善なわけではない。インドネシアがそうであるように企業と政府が親密な限り、悪のほうがより多い。実際、政治家と財閥の間の緊密さは東南アジア全域で問題となっており、地域の成長を抑制している」と概観している。

その上で、改めて「東南アジアは世界で最もエキサイティングな経済の中心地の1つだ。人口は7億人で若者が多い。多国籍企業が中国以外の工場立地を求める中で。投資資金の流入という恩恵がある」と高く評価する一方で、「ぜい弱なビジネス環境が地域の能力の制約となっている。大手企業の大半が銀行であり、天然資源会社、国有企業だ。配車サービス大手グラブや、電子商取引(EC)大手SEAなどを除き、ハイテク企業は少ない」と指摘。東南アジアで投資可能な株式の合計時価総額は約9000億ドルと、インドの時価総額の半分未満で、現在のドル換算の株価水準はアジア通貨危機前の3分の1にすぎないと説明した。

さらに、東南アジア諸国連合(ASEAN)域内では市場独占が依然、一般的であり、インドネシアの航空燃料から、マレーシアのコメ輸入、そしてタイのたばこ販売まで政府が1企業に市場を独占させる権利を与えていると批判。一部企業は国有企業であり、他の企業も植民地支配の遺物であり、その結果、競争は乏しく、効率性は低いと訴えた。また、公式には独占ではない分野でさえ、政治とつながった財閥が市場を支配しており、あらゆる優遇措置を享受しているとの見方を示した。そして一部の政府はこうした非競争的な産業の改革に取り組んでいるものの、独占の打破は容易ではないとし、「今月、タイの議会は、財閥2社が寡占するアルコール飲料市場の自由化計画を拒否した」とタイの事例を紹介した。

THAIBIZ編集部

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