カテゴリー: ニュース
公開日 2025.02.11
2月5日付クルンテープ・トゥラキットが、タイの“トランプ対策”を報じている。タイは、米国に対して継続的に貿易黒字を維持しており、2024年には354億2,800万ドルの貿易黒字を計上した。これにより、米国から最大10%の関税引き上げ対象となる可能性があり、この影響を避けるため、政府は今後、米国からの農産物やエネルギー資源の輸入を増やす計画だ。
政府関係者によると、タイ政府はすでに米国高官との交渉やロビー活動を進めている。米国はタイに対し、トウモロコシや大豆かすなどの農産物輸入を増加させることを求めており、タイ政府はこれに応じる方向。主に家畜の飼料として使用する予定だという。また、少なくとも100万トンのエタノールを米国から輸入するよう国内の石油化学企業に要請していて、その額は約2億ドル(約67億8,000万バーツ)に上る。首相府のポンサラン副次官は、「米国は貿易赤字の問題だけでなく、東南アジアの同盟国確保も必要としている。タイは地政学的立場を交渉の武器にする」との意向を示した。
一方、タイ船荷主協会(TNSC)のチャイチャン会長は、2025年の輸出は米国の関税政策の影響を受ける可能性が高いと話す。第1四半期(1〜3月)は2〜3%の輸出成長が見込まれているが、第2四半期(4〜6月)には政策の影響が本格化する見通し。これに対し政府は、民間企業と連携し戦略策定する「トランプ2.0」の政策専用対応室を早急に設置する必要があると訴えている。
タイ商工会議所(TCC)のサナン会頭も、「バーツ安の進行、世界的な株式市場の下落、金融市場の不安定化が進む中、米国の関税政策がタイ経済に与える影響は避けられない」と警鐘を鳴らす。このような経済の不確実性に対応するためにTCCは、①政府と民間企業の合同の「チーム・タイランド+」の設立、②外国企業に対する魅力的な投資優遇措置を提供、③輸出市場を多様化し、中国と米国への依存度を減少させるために、タイ欧州連合(EU)間の自由貿易協定(FTA)の交渉を加速すること―の3つを提案した。
中国は米国が2月4日に発効した関税引き上げに対抗し、即座に10〜15%の報復関税を発表。これには石炭、液化天然ガス(LNG)、原油、農業機械、自動車などが含まれる。オックスフォード・エコノミクスのルイス・ルー首席エコノミストは、「米中貿易戦争はまだ始まったばかりであり、今後さらに加速する可能性が高い」と予測する。なお、この米中貿易戦争により、タイは電子機器、電化製品、ゴム製品の3つの製品群で関税の引き上げリスクがあり、輸出への影響を注視する必要がある。
2月4日付バンコク・ポストによると、タイ政府は、タイ中国高速鉄道の第2フェーズ、ナコーンラーチャシーマー〜ノンカイ間(357km)への約3,400億バーツの投資を閣議で承認した。2030年の完成を目指すという。この路線は、第1フェーズ区間(バンコク〜ナコーンラーチャシーマー間)と連結し、バンコクからラオス経由で中国の雲南省までを結ぶ重要なインフラとなる。ただし、先月時点で、第1フェーズの建設進捗率は約36%で、予定より数年遅れている。
第2フェーズの承認は、ペートンタン首相が初めて中国を公式訪問する前日に行われた。首相府省のジラユ報道官は、「ペートンタン首相は、中国訪問中に経済、貿易、投資分野での協力強化を推進し、特に電気自動車、半導体製造、データセンターなどの未来産業への長期投資パートナーシップの促進を目指している」と説明した。また同首相は、中国がタイ産ドリアンやシロップの輸入を拒否したことを受け、内閣に農産物や食品製品の品質と安全基準の強化を指示した。さらに国際的な詐欺組織の取り締まりなど、観光客の安全対策を強化する方針も示した。
タイ商務省貿易政策・戦略事務局(TPSO)のプーンポン事務局長によると、2024年のタイ農産物輸出額が前年比7.5%増となる1兆145億8,800万バーツ(約4兆5,600万円)に達した。これは4年連続の成長で、農産物が引き続きタイ経済の重要な柱であることを示していると、2月4日付ターンセタキが伝えた。
農作物の輸出額上位5品目は、①果物(生鮮・冷凍・乾燥):65億1,060万ドル(全体の22.58%)②米:64億4,390万ドル(同22.32%)③天然ゴム:49億9,240万ドル(同17.32%)④鶏肉: 43億1,370万ドル(同14.96%)⑤キャッサバ製品: 31億3,340万ドル(同10.87%)。なお、これら上位5品目で全農産物輸出の88%を占める。
主要輸出先は、①中国:100億5,470万ドル(34.88%)②日本:34億7,190万ドル(12.04%)③米国:18億9,970万ドル(6.59%)④マレーシア:12億1,540万ドル(4.22%)⑤インドネシア:11億5,480万ドル(4.01%)。これら上位5カ国で全体の61.73%を占めている。
なお、輸出額の伸びが大きかった農産品はエビ・カニ・貝・イカ類(前年比 87.1%増)、天然ゴム(同36.8%増)、魚類(鮮魚・冷蔵・冷凍)(同26.6%増)、米(同25.0%増)など。国別ではベトナム(前年比78.9%増)が1位で、セネガル(同69.7%増)、イラク(同44.9%増)、フィリピン(同41.7%増)、イタリア(同35.8%増)が続いた。
同事務局長は「今後、特定品目や市場への依存を減らすため、付加価値の高い商品の輸出拡大や品質向上を推進し、農産業の持続可能な成長を目指す。特に、加工食品や地理的表示(GI)商品の開発・育成を急務とし、多様な市場ニーズに対応していく予定だ」という。
THAIBIZ編集部
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