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公開日 2025.06.05
5月28日付のネーションによると、中国では過剰在庫を背景に、電気自動車(EV)の大幅な値下げが相次いでいる。BYDは22車種のEVおよびハイブリッド車(HEV)を最大34%値下げし、これを受けて吉利汽車(ジーリー)や零跑汽車(リープモーター)も割引キャンペーンを開始。特にBYDのコンパクトEV「海鷗(シーガル)」は、下取り支援とあわせて約25万3,000バーツという低価格で販売されていると報じられている。
このような価格競争が加熱する中国市場に対し、タイではその影響は限定的と見られている。2023年のEV登録台数は7万6,000台に達したが、2024年は約7万100台と8%減少。業界関係者によると、多くのメーカーが新型車を投入した結果、在庫が膨らみ、現在は在庫調整の局面に入ったと見られている。価格競争の素地はあるものの、現時点では目立った値下げの動きは広がっていない状況だ。
一方、タイのEV市場で注目されているのはアフターサービスだ。MGセールス・タイランドのポンサック副社長は、部品の入手難や修理対応の遅れに関する苦情が増えており、これが消費者の信頼を損なう要因になっていると指摘。同誌は、例えば事故後に交換が必要となるボディパーツなど即時対応が難しい部品の供給計画も含め、アフターサービス全体の強化が今後のEV普及の鍵になると伝えている。
このような中、中国メーカーのEV生産は進んでいる。例えばBYDは4月にタイ国内で660台を生産。これはEV3.0政策における生産オフセット義務への対応とされており、EV3.5政策の下で2027年に向けてさらなる生産が見込まれている。
同誌は、タイのEV市場は元々、価格だけでなく車両のデザインやブランド力、技術面など多角的な要素を重視する消費者が多いと分析。タイ工業連盟(FTI)のスラポン副会長は、「内燃機関(ICE)車は何十年にもわたり激しい競争を乗り越えてきた。EV市場が競争に直面するのは当然のことだ。今後はアフターサービスや部品供給、技術者の配置、カスタマーサポートが勝負の分かれ目になるだろう」と結論づけている。
国家経済社会開発委員会(NESDC)が発表した報告によると、2024年のタイの輸出は堅調に拡大している一方で、国内の製造業は依然として回復していない。5月25日付のクルンテープ・トゥラキットが伝えている。
タイ経済は輸出に大きく支えられてきており、国内総生産(GDP)の約70%を占めている。一方、2024年の輸出額は前年比5.8%増と好調にもかかわらず、製造業の生産指数は2年連続で減少。輸出と生産の乖離が拡大しており、従来の「輸出のために生産する」構造が崩れつつあるという。
背景には米中の貿易環境の変化や低価格の中国製品の流入があり、なかでもタイの中小企業(SME)への影響が深刻化。輸出品に占める国内付加価値(DVA)の割合が低下しており、製造に必要な原材料や部品を中国から調達する割合が増えるなど、海外依存が強まっていることが課題となっている。
また、自動車、電子部品、基礎鋼材といった主要3分野では、生産設備の稼働率が引き続き低水準にとどまっている。今年第1四半期(1〜3月)には、輸出額が前年同期比で15%増だった一方で、国内の製造業全体の成長率はわずか0.6%にとどまった。稼働率が50%を下回る業種は30業種中9業種にのぼり、製造業全体の足取りは依然として重い。一方で、石油製品や砂糖など、一部の業種は高い稼働率を維持しており、産業構造の二極化が進んでいる実態も浮かび上がっている。
NESDCの報告書では、タイ投資委員会(BOI)インセンティブの見直しやローカルコンテンツ比率の引き上げに加え、SMEやスタートアップとの連携、R&Dを通じた付加価値の国内回帰が求められているという。こうした提言は、海外企業にも調達・生産体制の見直しを促すものとなっている。
6月5日付のバンコク・ポストでは、インパクト・ムアントンタニでのアジア最大級の食品見本市「THAIFEX–Anuga Asia 2025」の開催が伝えられている。同イベントの規模は年々拡大しており、今年は5月27日〜31日まで行われ、商務省の発表によると、57ヵ国から3,231社(計6,208ブース)が出展。来場者は14万2,370人、商談成約額は会期前後を含めて1,360億バーツを超えたという。
ピチャイ副首相兼財務相は、「本イベントは多くの海外バイヤーを惹きつけ、特にタイの中小企業(SME)やスタートアップにとって新たなビジネスチャンスや人脈づくりの場となった。また、地方での雇用や収入の増加につながるなど、地域経済にも貢献した」と評価。続けて、こうした成果がタイ料理を世界に広める政府の「ソフトパワー戦略」後押しするものだと述べた。
なお、5月28日付の同誌によると、世界的な経済減速という状況下でもタイの食品輸出は増加傾向にあり、2024年には輸出額1兆7,500億バーツ(前年比6.8%増)を記録し、世界第12位にランクインしている。タイ政府は今後、テクノロジーとイノベーションを通じた付加価値製品の開発に注力し、SMEのGDP比率を現在の30%から将来的に50%へ引き上げる方針だという。
タイ商工会議所(TCC)のポット会頭は、世界的に経済が減速するなか食品輸出産業は他の産業に比べて回復力があるとしつつも、原材料不足やバーツ高への懸念を指摘。「1ドル=34バーツ以上の為替水準になれば、輸出競争力が高まるだろう」との見方を示している。
THAIBIZ編集部
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