米中対立の今、タイが選ばれる理由 〜WHAの新・共創戦略〜

THAIBIZ No.169 2026年1月発行

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米中対立の今、タイが選ばれる理由 〜WHAの新・共創戦略〜

公開日 2026.01.09

企業の挑戦を支えるWHAの力

タイの強みと優位性を最大限に活かす拠点として、多くのグローバル企業に選ばれているWHA工業団地。製造業を中心に、近年ではEVやハイテク産業など新たな分野の進出も相次ぐ。

進化を続けるWHAグループが、なぜ企業からこれほど厚い信頼を集めるのか。WHA Industrial Development PLC.(以下、WHAID)のパジョンウィット・ポンシワパイ最高経営責任者(CEO)の言葉から、その理由を探っていく。

倉庫インフラの整備を起点に、世界水準の工業団地デベロッパーへ

WHAグループは2003年、「ロジスティクスを通じて国の競争力を高めること」を基本理念に掲げて設立された。タイの産業構造転換が進む中、同グループは当時GDPの約18%に相当するタイの物流コストの高さに着目した。当時は国際基準を満たす倉庫が多くなかったことから、WHAグループは高品質な倉庫インフラの開発から事業を開始した。

2006年には、タイ初、かつASEAN最大となる「Built-to-Suit(顧客仕様)」型ディストリビューションセンターの開発サービスを導入。顧客ごとに最適化されたこれらの施設は、利用企業の物流コストおよびオペレーションコストの削減に大きく貢献した。

こうした専門性の高い物流分野での成功を通じて、WHAグループは世界水準の高品質な物流施設を開発する企業として、急速に評価を確立していった。を行っている。

2025年にモビリティ事業を開始し、主要事業は5つに

WHAグループは2012年にタイ証券取引所(SET)へ上場。上場時の時価総額は17億900万バーツであった。上場後は事業を急速に拡大し、2014年にはWHAプレミアム倉庫を設立。2015年にはヘマラート工業団地を買収し、これによりWHAグループはタイ最大の工業団地運営会社となった。

この背景について、パジョンウィットCEOは「当時、多くの人々は工業団地事業は衰退産業だと考えていたが、グループCEOのジャリーポーンは、工業団地を国家インフラの中核であり、適切なビジョンと戦略のもとで開発すれば成長が見込める新たな産業だと捉えていた」と説明する。

同グループは買収後に事業構造を再編し、①物流、②工業団地開発、③ユーティリティおよび電力、④デジタルソリューション、の4つの主要事業グループを確立。このうち第3の事業グループであるユーティリティおよび電力は、「New Era for WHA」構想の一環として、2017年にWHA Utilities and Power PLC.(WHAUP)として上場した。

WHAグループはその後も積極的な拡大を続け、2019年にはアリババとの合弁事業に参画、2020〜2021年にはベトナムで新たな物流プラットフォームの構築やパートナーシップを推進した。

そして2025年初頭には、第5の事業グループとして「⑤モビリティ」を新設。商用EV向けにEVレンタルサービスやEV充電ソリューションなどの包括的ソリューションを提供し、顧客の環境負荷と物流コストの削減を支援している。現在同グループはこの5つの事業グループを軸に、さらなる成長に向けて邁進中だ。

タイで15の工業団地を運営、顧客の約2割が日本企業

WHA工業団地(写真提供:WHAグループ)

WHAIDは工業団地事業を担っており、タイ国内で15の工業団地を運営している。そのうち14団地はEEC内、1団地はサラブリー県に位置する。現在、ベトナムでは1つの工業団地が稼働しており、 1件の拡張プロジェクトと、今後開発予定の6つの工業ゾーンがある。

同社の総開発面積は1万4,208ヘクタールにおよぶ。パジョンウィットCEOは「製造業の移転や地政学的変化の影響により、この2〜3年でWHAグループは、36年の歴史の中でも最大規模の開発・拡大を記録した」と明かす。

WHA工業団地(写真提供:WHAグループ)
WHA統合オペレーションセンター(UOC)では全工業団地をリアルタイムでモニタリングしている(写真提供:WHAグループ)

現在、WHA工業団地には多国籍企業1,144社が入居し、製造業をはじめさまざまな事業を展開している。入居企業の国別割合(2025年6月時点)は、中国28%、日本19%、タイ17%、米国13%、欧州10%だ(図表3)。日本企業数は、いすゞ、ヤマモリ、TOTOなど多様な業界から289社にのぼる。

出所:WHAグループ公開情報にもとづきTHAIBIZ編集部が作成

タイとベトナムの工業団地開発の違い

同社は2017年にベトナムにも進出し、ゲアン省に工業団地を開発した。タイとベトナムの工業団地の違いについて同CEOは、「タイでは外国法人が土地を所有し、適切な立地を自由に選択できる一方で、ベトナムではより中央集権的なシステムを採用しており、外国法人は政府指定ゾーンからしか選択できない」と説明する。

さらに、インフラ開発モデルにも大きな違いがあるという。タイでは、EECなどの特定の戦略的エリアで迅速な開発を行う集中型モデルにより、ウタパオ空港の拡張や高速鉄道の接続などの統合的開発が効率的に進められている。一方、ベトナムでは各地域が独自の投資戦略を立てる分散型モデルのため、国全体で見ると開発に長い時間を要する。

こうした違いはあるものの、WHAIDは、ベトナムの高い経済成長率や充実した投資優遇措置を背景に、工業団地開発を積極的に進めている。2025年10月にWHAグループは、ベトナムのDeOuSi社と協業し、団地内に近代的な複合施設を開発することを発表。住みやすい産業エコシステムの創出に向けて、動きを加速している。

WHAIDの企業誘致戦略

WHAIDの企業誘致戦略について、パジョンウィットCEOは「工業団地事業における成功の鍵は立地にある」と断言する。「立地は高速道路や空港、さらに水や電力など重要インフラへのアクセスに大きく影響する。選定にあたっては、洪水など自然災害のリスクも考慮する必要があり、慎重な判断が求められる」と語り、同社の立地戦略に自信を示す。

充実したサービスも同社の大きな強みだ。同CEOは「WHAIDは、アフターサービスを含む一貫した顧客サポートを重視している」と説明する。中国企業向けには、中国語の堪能なスタッフが顧客との信頼関係を構築しているほか、生産拠点付近での住居ニーズにも応え、団地内に専用住宅エリアを設ける計画も進めているという。

日本企業向けにも、日本語の堪能なチームによるきめ細やかな対応を行っており、工業団地内の日本企業会員コミュニティは毎月欠かさず交流会を開催している。WHAIDは在タイ日本国大使館や独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)と緊密に連携し、四半期ごとに意見交換や投資動向の共有を行い、日本企業のニーズ把握に努めているそうだ。

さらなる日本の投資にも期待

日本企業との協力の可能性について、同CEOは「日本からのさらなる投資を期待している。タイには豊富な資源があり、特に農業・食品産業において、日本の技術や専門知識と相性が良い。両国の強みを融合させることで、タイに強固かつ持続可能な生産拠点を築くチャンスが広がるはずだ」と展望を語る。

さらに「日本の中小企業が先端技術分野に進出すれば、タイの産業エコシステムをさらに多様化・強化することができる」と述べ、中小企業の投資にも期待を寄せる。

WHAIDは、世界中の投資家のニーズに応じた工業団地の設計・開発に注力するだけでなく、一貫した手厚いサービスと、各国企業のニーズを汲み取り形にする力を持つ。こうした徹底した戦略の実行こそが、世界中から企業が集まる所以なのだろう。

THAIBIZ編集部
サラーウット・インタナサック / タニダ・アリーガンラート / 白井恵里子

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