
公開日 2026.01.09
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中国のEVメーカーMGは、中国国外で初となる生産拠点にタイを選び、その舞台としてWHA工業団地を採用した。東南アジアのEV化競争が激しさを増す中、MGがWHAグループをパートナーに選んだ背景には、インフラ整備力と信頼性、そして戦略的なビジョンがある。
タイでMG車の生産・販売を担う「SAIC Motor-CP Co., Ltd.(以下、SAIC Motor-CP)」のスロート・サーンサニット副社長は、WHAを「信頼できるプロフェッショナル」と評し、共に描く未来への期待を語る。

赤いスタイリッシュなロゴが印象的なMGは、元エンジニアで実業家のウィリアム・モリス氏と、先見の明を持つセールスマンのセシル・キンバー氏が手を組み、1924年に英国初の自動車ブランドとして設立され、以来、多くの実績と名声を積み重ねてきた。現在は中国の上海汽車(SAIC Motor)が親会社となっている。


MGは2014年、SAIC Motorとチャロン・ポカパン(CP)グループの合弁会社である SAIC Motor-CPの設立を通じて、タイのWHA工業団地で事業を開始した。現在、同社は生産を担当しており、年間約10万台の生産能力を誇る。
また、全国でのMG車の販売は、MG Sales(Thailand) Co., Ltd. が担っており、タイで最大規模の自動車・自動二輪展示会「タイ国際モーターエキスポ」でのMG車予約台数は、2021年の2,297台から2025年は4,827台まで、大きくはないが着実に伸びている(図表4)。

スロート氏はタイを生産拠点として選んだ理由について、「2023年、中国は世界最大のEV輸出国としての地位を確立した。しかし、アメリカによる追加関税により、中国の自動車輸出は完成車と部品の両方で直接的な打撃を受けた。それでも、中国は市場を多様化することで輸出量を維持しており、障壁が少なく、成長の可能性が高い新しい生産拠点を積極的に探している。その中で、タイは非常に魅力的な選択肢として浮上した」と説明する。
市場の先行きがまだ不透明なインドネシアや、既に国内EVブランドを確立しているマレーシア、ベトナムと比べ、「タイは非常に高いポテンシャルがあると判断した」とスロート氏は語る。
実際、多くの中国自動車メーカーはタイに生産工場を設立し、国内市場への供給だけでなく、欧州向けの輸出拠点としても活用している。欧州ではネットゼロに関連する規制が強化され、EV需要が高まっているためだ。
この状況について同氏は、「タイにとって製造能力を高める大きなチャンスとなる。成功すれば、欧州への輸出が増加し、サプライチェーンは強化され、タイ経済の持続的な成長に貢献できるだろう」と期待を示す。
一方で、中国の自動車メーカーは、タイ政府によるローカルコンテンツ規制により、タイのサプライチェーンに依存せざるを得ない状況だ。同氏によれば、規制の要件を満たすには相当な時間がかかるとみられ、中国企業は暫定の打開策として、ASEAN各国の部品を組み合わせて要件を満たす「ASEANコンテンツアプローチ」を推進しているという。

スロート氏は、「民族的な障壁がなく、政変による政策への影響も比較的小さい。政府は明確な産業発展のロードマップを掲げている。こうした特徴により、タイはASEANにおけるEV産業のハブとしての地位を確立しており、現在ではASEANのEV市場の約80%を占めている」と、タイの優位性を強調する。
タイのEV市場は急成長しており、タイ工業連盟(FTI)の発表によると、2025年1〜10月におけるバッテリー式電気自動車(BEV)の累計新規登録台数は11万6,608台となり、前年同期比で41.93%増加した。
今後の展開について同氏は、「政府の補助金政策の動向に左右されるが、家計債務の影響による融資の厳格化が進まなければ、2026年にはASEANにおけるEV市場のシェアが最大で90%に達する可能性がある」と見通しを示す。
さらに、タイ企業はEV産業に限らず、あらゆる分野で国際的なパートナーとの協力にオープンであることも評価されており、「高い柔軟性と強い顧客志向が、タイを魅力的な投資先にしている」と分析する。
MGは中国国外で初めて生産拠点を設立した中国車ブランドだ。同氏は、「MGのタイ進出は、中国車のタイ市場への受け入れ基盤を整える一端を担ったと思っている。われわれにとっても、中国で高い認知度と信頼を誇るCPグループとの連携は大きな転機だった」と語る。
さらに、WHA工業団地を選んだ理由についてスロート氏は、「WHAIDには高いプロフェッショナル意識、フルサービス能力、戦略的なビジョン、そしてベトナムを含む国際的なネットワークがある」と説明する。
印象的なエピソードとして、「敷地の開発中、高圧送電線の鉄塔が課題となったが、WHAIDは無事に移設を完了した。WHAIDのチームは非常に協力的で、特に中国語を話せるスタッフの存在が、コミュニケーションや調整をスムーズにし、大きな安心感を与えてくれた」と当時を振り振る。

タイ、そしてWHA工業団地を舞台に躍進するMG。さらなるEV産業の発展に向け、同氏は「共同事業の推進」の重要性を強調する。タイのサプライチェーンは高度な技術を有しており、特に自動車部品の生産に強みがある一方で、次世代技術に必要なノウハウはまだ十分とは言えないという。
「サプライチェーン全体で技術力を高めるには、企業の枠を超えた共同事業を推進し、知識を互いに共有することが不可欠だ」と、他企業との協業に前向きな姿勢を示す。
さらに同氏は、「企業連携にあたっては、関与する企業の国籍ではなく、そこから生まれる利益に焦点を当てるべきだ」と訴え、品質を最優先するMGでは、多くの部品を日本のメーカーから調達していることも明かした。
この考え方は、ジャリーポーンCEOが提唱する「マルチパートナーシップモデル」とも通じる。国籍を問わず、共通のビジョンを持つ企業同士が互いの強みを活かし、さまざまな観点で優位性の高いタイを起点に成長していく。WHA工業団地は、こうした柔軟な発想を実現する場として最適な舞台なのかもしれない。

THAIBIZ編集部
サラーウット・インタナサック / タニダ・アリーガンラート / 白井恵里子


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