【連載】カシコン銀行経済レポート 2019年6月号

ArayZ No.91 2019年7月発行

ArayZ No.91 2019年7月発行離陸したタイ航空機関連産業

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【連載】カシコン銀行経済レポート 2019年6月号

公開日 2019.07.10

タイ経済・月間レポート(2019年6月号)

4月のタイ経済は内需に支えられ拡大傾向

2019年4月のタイ経済は緩やかな成長になりました。主要輸出先の経済の減速や、米中貿易摩擦の影響などにより、輸出が縮小しました。また、民間投資が依然として鈍化傾向にあります。しかしながら、国内需要により、民間消費はすべての支出項目で拡大しました。農家の収入が減少した一方で農家以外の収入は増加したことが民間消費を押し上げました。

19年4月の消費者物価の上昇率は、前年同月比1.23%上昇し、前月から伸びがほぼ横ばいでした。22ヵ月連続で上昇しました。非食品・飲料部門の伸びが引き続き加速しました。また、食品・飲料部門の上昇も全体を押し上げました。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、同0.61%の上昇で、前月から伸びがほぼ横ばいでした。

ここ数年、タイにおける食事配達サービスの利用は上昇傾向にあります。スマートフォンなどのインターネット関連のテクノロジーの発展により、モバイル・アプリからいつでも、どこでも、どんな時でも料理を注文できるようになりました。また、お気に入りのストリートフードのデリバリーも可能で、このような新しい形態のフードデリバリーも増えています。

カシコンリサーチセンターの調査では、バンコク首都圏の消費者の約63%は、さまざまな食事の注文アプリがあることで、アプリで食事を注文するようになりました。その結果、19年のタイのフードデリバリー市場が前年比14%増の330~350億バーツ規模に拡大すると予測します。すなわち、今年のフードデリバリー市場の規模は、外食市場全体の8%を占めるようになる見込みです。

2019年4月のタイ経済情報

 タイ中央銀行が発表した19年4月の重要な経済指標によると、タイ経済は内需に支えられ前月から拡大しました。輸出は収縮を続けているものの、内需の拡大が景気を下支えしています。民間消費はすべての支出項目で拡大しました。農家の収入が減少した一方で農家以外の収入は増加したことが民間消費を押し上げました。

 4月の民間消費は前年同月比3・4%上昇しました。前月に比べると伸びは加速しました。購買力が総じて良好な水準を保っていることが支援要因で、特に非農林水産業の被雇用者の所得が拡大を続けています。農林水産業の所得も収縮幅が縮小しました。

 一方で、民間投資は前年同月比0・3%拡大しました。主に設備投資がけん引しました。資本財の輸入、建材の販売、商用車の購入がそれぞれ5・6%、4・4%、4・2%上昇しました。しかしながら、建設認可を受けた土地の面積は同11・2%縮小しました。

 4月の輸出は、前年同月比2・9%縮小しました。米中貿易戦争が過熱する中、電子製品の輸出が減少を続けたほか、機械やゴム製品、砂糖が低迷しました。しかしながら、エアコンやテレビなどの家電や、果物、自動車・部品は伸長しました。

 工業生産に関しては、前年同月比2・0%増となり、前月のマイナス成長からプラス成長に転じました。民間消費が拡大した結果、工業生産も増加しまし た。特に国内市場向け自動車の生産が伸びています。

 観光業では、外国人観光客数が前年同月比3・3%増の319万人となりました。アセアンからの観光客が増加しました。また、欧州からの観光客は、今年の復活祭が4月半ばにずれ込んだ影響で3月は前年同月比で収縮していましたが、4月はプラスに転じています。いずれにしても中国からの観光客数は収縮を続けています。

2019年5月のタイのインフレ率

 商務省が発表した19年5月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比1・15%上昇し前月から伸びがやや減速しましたが、23ヵ月連続で上昇しました。長引く暑期の影響で、果物・野菜を中心に食品が上昇しました。一方で、非食品・飲料部門の伸びが減速しました。

 品目別にみると、非食品・飲料部門が前年同月比0・20%上昇しました。運輸・通信が同0・08%、住宅が同0・33%、医療・ケアが同0・21%それぞれ上昇する一方、たばこ・酒は同0・02%下落しました。食品・飲料部門は同2・83%増となりました。米・粉製品の上昇率が同3・74%、肉・魚が同3・26%、調味料が同1・77%、果物・野菜が同11・08%上昇しました。

 一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0・54%の上昇で、前月から伸びがほぼ横ばいでした。

2019年5~6月の外為相場

 5月に入り米中貿易戦争が激化する中でもドル・円は1ドル110円を中心としたレンジで底堅く推移していました。しかし、月末にかけては円高傾向が強まり、6月には108円台の円高水準となりました。米中を中心とした貿易戦争により、世界景気の先行き不透明感が強まり、且つ米国の利下げ観測が広がり、円高傾向が継続すると予想されます。

 ドル・円と同様にドル・バーツは5月2日には1ドル32バーツから6月8日には31・2バーツまでバーツ高傾向が強まりました。今後ともバーツ高傾向が継続する見通しです。

タイのフードデリバリー市場は食事配達アプリの利用増加で拡大傾向

 ここ数年、タイにおける食事配達サービスの利用は上昇傾向にあります。2014~18年のタイのフードデリバリー市場の伸び率は年平均10%となり、外食市場の同3~4%を大きく上回っていました。今年はさらに加速する見込みです。また、食事配達アプリの利用増加が消費行動を変化させています。

 近年、タイでは、スマートフォンなどのインターネット関連のテクノロジーの発展により、モバイル・アプリからいつでも、どこでも、どんな時でも料理を注文できるようになりました。また、お気に入りのストリートフードのデリバリーも可能で、このような新しい形態のフードデリバリーも増えています。

 元来、タイにおいて、フードデリバリーは個人が自宅に料理を届けてもらうのが一般的でした。しかし、最近では個人が使うものだけではなくなっており、企業が社員のためにデリバリーを頼んだり、複数の社員がグループ単位でオフィスに料理を運んでもらったりするケースが増加しています。これに加え、近年ますます共働き夫婦が増えていることによって、食事に対する時短ニーズが高まっている点もフードデリバリーサービスの利用増加の背景となっています。

 タイのフードデリバリーサービスは、従来の出前のように店舗やレストランのスタッフが出前を行うのではなく、一般人による「出前代行システム」が確立されています。基本的にオートバイを所有していれば、だれでも配達パートナーになることが可能です。このシステムによって、人件費の問題で出前スタッフを雇えないストリートフードなどの個人店舗でも、比較的容易に導入でき、売上アップが見込めます。

 一方で、食事の注文アプリの増加が、消費者の行動を変化させています。カシコンリサーチセンターの調査では、バンコク首都圏の消費者の約63%は、さまざまな食事の注文アプリがあることで、アプリで食事を注文するようになりました。一方で、外食する機会は逆に減りました。
 
 従って、カシコンリサーチセンターは、2019年のタイのフードデリバリー市場が前年比14%増の330~350億バーツ規模に拡大すると予測します。すなわち、今年のフードデリバリー市場の規模は、外食市場全体の8%を占めるようになる見込みです。

※本資料は情報提供を唯一の目的としており、ビジネスの判断材料とするものではありません。掲載されている分析・予測等は、資料制作時点のものであり、今後予告なしに変更されることがあります。また、予測の妥当性や正確性が保証されるものでもありませんし、商業ないし何らかの行動の為に採用することから発生した損害の責任を取れるものでもありません。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自でご判断ください。

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THAIBIZ編集部

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