組織課題に“効く”新しい会議のカタチ ~レゴ®シリアスプレイ®メソッドとは?

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組織課題に“効く”新しい会議のカタチ ~レゴ®シリアスプレイ®メソッドとは?

公開日 2025.07.11 Sponsored

日本人とタイ人が共に働く在タイ日系企業でよく見られる課題として、「会議ではいつも同じ人しか発言しない」「タイ人社員にも発言してほしいが、遠慮してしまう」といった悩みが挙げられる。こうした実質的に一部の参加者だけが発言する会議で決定された経営方針や事業方針は、社員の理解は得られても行動が伴わない「絵に描いた餅」となってしまうこともある。

「全員が参加する会議」を実現する難しさの背景には、タイの階層的な文化や言語の壁、価値観の違いなど様々な要因が潜んでいるが、そうした課題の解決策として徐々に認知が拡大しているメソッドが、レゴ®を活用したワークショップ「レゴ®シリアスプレイ®(以下、「LSP」)」だ。「レゴ®=子ども向けの玩具」というイメージを持つ人も多いかもしれないが、実はアメリカ航空宇宙局(NASA)やソフトバンクなどの大手企業でも導入された実績があり、脳科学の観点からもその有効性が証明されている。

「全員のアイデアを引き出すことができると、決定した方向性や目標に対して全員のコミットメント(当事者意識)が得られるため、行動変容につながる」と力強く語るのは、株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツの取締役であり、LSPマスタートレーナー協会(デンマーク)理事でもある石原正雄氏だ。

LSPセッションの様子(写真提供:株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ)
LSPセッションの様子(写真提供:株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ)

在タイ日系企業が抱えるコミュニケーションの課題

一般的にタイ人は上司に意見することをためらう傾向があり、在タイ日系企業では日本人マネジャーから「タイ人部下の率直な意見や本音を引き出せない」「タイ人中間管理職を介して現場の声を聞く機会があっても、良いことしか伝わってこないため本質的な課題が見えてこない」といった悩みが多く聞かれる。

石原氏はこうした状況について、「在タイ日系企業で多数のLSPセッションを実施してきたタイ人認定ファシリテーターによると、このようなコミュニケーションの課題の背景には、言語の壁だけでなく、タイの階層的な文化や価値観の違いがある。さらに、両者ともにハイコンテキスト(間接的なコミュニケーションを好む)文化であることも影響している」と説明する。

「タイ人社員を含め、全員の意見を取り入れたい」と考えて会議を設定しても、実際にはごく一部の人しか発言せず、そうした場で決まった方針や目標に対しては、真の意味でのコミットメントが得られにくい。同氏は「このようなコミュニケーションの課題は、最終的にイノベーションを阻む要因にもなりうる」と警笛を鳴らし、「LSPはその打開策として、在タイ日系企業の組織力の向上に実際に貢献してきた」と語る。

MIT発の理論を基にLEGO社が開発

LSPの起源は、米国マサチューセッツ工科大学 (MIT) メディアラボのシーモア・パパート教授が提唱する教育理論「コンストラクショニズム(構築主義:手と頭が連携を取りながら、新しい知識を構築していくという考え方)」に基づき、LEGO社が2001年に完成させたLSPのプロトタイプに遡る。石原氏は「当時LEGO社で研究開発を統括していたロバート・ラスムセン氏に声をかけられ、私は日本人で初のLSP認定ファシリテーターとなった。2005年頃から日本でLSPの普及活動を開始し、2008年に株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツを共同設立した」と、LSPとの関わりを振り返る。

その後、日本では不動産会社シンクタンクや専門商社、広告代理店、外資系企業など、幅広い業界で活用が進んだ。現在では企業にとどまらず、大学などの教育機関、地方自治体や公的機関でも導入が進み、同社は1,000以上のクライアントを持つまでに成長した。

レゴ®作品を通して自己と他者の内観を知る

LSPは、レゴ®ブロックを用いて作品を作ることで、一人ひとりの内観を可視化するワークショップだ。参加者は作品を通して内観に向き合い、作品の意味を語る。他のメンバーは様々な視点から作品に対する質問を投げかける。こうした双方向のプロセスで、自己と他者の内観に気付くことができるという。

例えば「目の前にあるブロックで、あなたが仕事で大切にしていることを表現してください」と指示された場合、参加者は手を動かしながら考えて作品を作っていくが、作品が完成した段階で「なぜこの作品ができたのか」「なぜその色を選んだのか」「ブロックの配置にはどのような意味があるのか」を完璧に把握できている人は少ない。作品について説明する中で質問にも答えることで、自分の内に秘めている内観に気付くことができる。

レゴ®ブロックを使うメリットについて石原氏は、「頭の中で考えていることを言葉にするには限界があるが、レゴ®作品を作ることでその言語化を補完できる。レゴ®はシステマチックで誰でも簡単に組み立てられるため、絵画や粘土作品のような”上手い、下手”といった技術的な差異が生まれず、誰でも完成度に自信を持つことができる。また、気軽に何度も作り直せることも利点だ」と解説する。

さらに、「人」ではなく「作品」に目線を向けて議論を行うことで、心理的安全性が担保できるメリットもあり、これらの特徴が「全員が平等に意見できる場」を生み出しているのだという。

LSPセッションで作られた作品(写真提供:株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ)
LSPセッションで作られた作品(写真提供:株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ)

コミットメント(当事者意識)が得られるから、実際の行動につながる

石原氏によれば、LSPセッション終了後、参加者は主に3つの成果を得ることができる。ひとつ目は、普段以上の「気づき」だ。他者の考えに触れるだけでなく、自分自身でも気づいていなかった想いや価値観を可視化することで、新たな発見が生まれる。ふたつ目は、「自信」だ。「自分の意見をしっかり伝えられた」「あの人の本音が聞けた」という体験を通じて、自信が芽生えるという。

そして三つ目は、「コミットメント(当事者意識)」だ。全員の声を反映して決まった目標や方向性には、一人ひとりが主体的に責任を持つようになる。さらに、LSPを通じたチームビルディング体験から「上司や同僚と一緒に取り組む意義」も見つけることができる。ゆえに、「決めて終わり」ではなく、実際の行動につながる合意形成がなされるのだ。

「面子を保ち、意見を引き出す」タイ文化と調和するLSPの力

「LSPは脳科学からも有効性が証明されているため、国や文化に関わらず効果を発揮できるメソッドだが、タイの文化的価値観とは特に相性が良い」と石原氏は続ける。レゴ®の作品やメタファー(比喩)を通じて、タイ人が普段「言いにくい」と感じていた本音や課題を自然に表現できるほか、参加者全員が一緒に作るプロセスは、対立を避ける傾向のあるタイ人に安心感を与えるという。同氏は「年長者や上司も”面子を保ったまま”参加しやすい仕組みになっていることも、タイの職場文化に無理なく馴染む理由の一つだ」と説明する。

石原氏によれば、この見解は、タイで11年以上にわたってLSPセッションを実施してきたスラティン・サティットラート氏も共有している。同氏は、「タイのプロフェッショナルは優れた洞察力を持っているが、文化的な価値観から率直な発言を控える傾向がある。LSPは、まず“つくる”ことで考えを表現し、その意味を説明するという安全な場を提供している。この間接的なアプローチは、タイの参加者にとって自然で心地よく感じられる」との見解を示している。

実際に在タイ日系企業でLSPを活用し、大きな成果が生まれた事例がある。ある大手日系自動車メーカーのタイ現地法人では、現地サプライチェーンにおける品質に課題があった。従来の問題解決アプローチは「責任追及」や「コンプライアンス重視」に偏っており、真の原因究明には踏み込めていなかった。そこで、LSPセッションを導入し、日本人マネジャー、タイ人エンジニア、現地サプライヤーが参加。それぞれが「設計から納品までの品質の旅」をレゴ®作品で表現した。

突破口となったのは、あるタイ人サプライヤーが「コスト制約が品質要件と矛盾している」という現実を、作品を通じて可視化したことだった。これは、それまで誰も口に出せなかった真実であり、課題解決に向けた大きな一歩となった。その結果、コスト制約と品質基準の両立を図る品質プロセスの再設計が実現し、半年で不良率が40%削減したという。

LSPセッションの様子(写真提供:株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ)
LSPセッションの様子(写真提供:株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ)

タイで本格展開へー導入実績80社超、記念イベントも開催

石原氏は、「LSPは主にヨーロッパや日本を含むアジアで先駆けて普及してきた。タイでは2014年から普及活動を行っており、これまで80社以上に対して150回以上のセッションを実施した。アーリーアダプター(初期導入層)の段階を越え、一般的なビジネスシーンへの定着が進んでいることから、2024年にロバート・ラスムセン・タイランドを立ち上げた」と、タイでのさらなる認知拡大に向けた意気込みを語る。

7月30日には、ロバート・ラスムセン・タイランドの設立記念イベントがバンコクの「Grande Centre Point Surawong(グランデ センター ポイント スラウォン)」にて開催予定だ。同イベントは、アジア太平洋地域のLSP専門家が一堂に会する貴重な機会だ。LSPメソッド生みの親であるロバート・ラスムセン氏をはじめ、日本の石原氏、シンガポールのクリス・テイ氏、タイのスラティン・サティットラート氏が登壇。参加者は実際のLSPセッションを体験し、チームの関係性や思考のプロセスがリアルタイムで変化していく様子を体感できる。専門家から直接学び、自社への即時的な応用可能性を探ることができる、またとない学びの場となりそうだ。

石原氏は「翌日31日には、日本人を対象とした体験ワークショップイベントも開催する。組織内のコミュニケーションに課題をお持ちの企業の皆様の参加をお待ちしている」と呼びかけた。

東南アジアのLSPハブとしてのタイの未来

石原氏は最後に、「LSPの創始者ラスムセン氏は、タイをLSPにとって戦略的に重要な地域だと位置づけている」とした上で、「タイの文化的価値観との高い親和性、拡大する国際ビジネスコミュニティ、そして数々の成功事例から、タイは東南アジア全体のLSPハブとなるポテンシャルを秘めている」と締め括った。

ロバート・ラスムセン・タイランドの設立は、同地域におけるLSP専門人材の育成を加速させ、東南アジア全体でのLSPコミュニティの強化につながると期待されている。7月30日に開催されるイベントは、その新たな章の幕開けとして、LSPの未来をかたちづくる特別な瞬間になることだろう。

ロバート・ラスムセン・タイランド設立記念イベント開催概要

日時:2025年7月30日(水)13:00~17:00(タイ時間)
会場:Grande Centre Point Surawong(グランデ センター ポイント スラウォン)
言語:英語
参加費:無料

イベントに関する問い合わせ先:ロバート・ラスムセン・タイランド
TEL:064-563-6245 
E-MAIL:panchornsorn@rasmussen.co.th

プログラム

12:15|受付開始
13:00|イベント開始・開会の挨拶
13:30|基調講演:「LSPメソッドでより良いビジネスを構築する」
14:00|地域における成功事例の紹介
14:50|LSPデモ:「LSPを活用したイノベーション構築」
15:50|LSPデモ:「3Dノートテイキング」
16:30|ラッキードロー(景品抽選)
17:00|イベント終了

石原 正雄氏

株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ 取締役
LSPマスタートレーナー協会(デンマーク)理事
MIT認定教育モバイルコンピューティングエキスパートトレーナー(米国MIT)

 
レゴ®ブロックを使った新しい企業向け組織開発プログラム、 LSP実践のパイオニア。広告代理店、リテール企業、外資系金融機関等でLSPの指導を行う他、10数年にわたり、世界の青少年の創造性開発教育、STEM(理数・技術)教育に従事。日本やアジアで青少年の科学技術振興に取り組む。CSK、インタフリージャパン等での事業経験を持つ。ラスムセン・アカデミー校長。米国タフツ大学CEEOアドバイザリー(2012~2015)など大学研究機関とのつながりも深い。

 


株式会社ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ

2008年10月設立。デンマークのLEGO社と中心に開発された人材・組織開発のユニークなプログラム(レゴ®シリアスプレイ®)を主体とした研修企画、開発と提供、コンサルティングを実施。日本におけるレゴ®シリアスプレイ®実践のパイオニア。プログラムの主任開発者であるロバート・ラスムセン氏と提携。顧客のニーズに合わせた、カスタマイズしたプログラムの開発と実施、企業内ファシリテータの指導も可能とする。

問い合わせ先(ロバート・ラスムセン・タイランド)
TEL:064-563-6245/065-649-9515
E-MAIL:panchornsorn@rasmussen.co.th / surathin@rasmussen.co.th / rasmussen.co.th@gmail.com

 

THAIBIZ編集部

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