「HEVが牽引、タイ自動車市場に回復の兆し」「BEV生産には関心がない、スズキの戦略」

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「HEVが牽引、タイ自動車市場に回復の兆し」「BEV生産には関心がない、スズキの戦略」

公開日 2025.10.07

タイの自動車市場が回復の兆しを見せている。9月29日付のタイ紙クルンテープ・トゥラキットによると、今年1〜8月の累計販売台数は前年同期比0.1%増の39万9,945台となり、今年初めてプラス成長に転じた。8月単月では47,622台(前年同月比5.4%増)と堅調で、年間目標60万台の達成も視野に入ってきた。

この成長を支えたのはハイブリッド車(HEV)で、8月の販売は1万1,230台(前年同月比26%増)に達し、xEV市場の過半数を占めた。なかでもトヨタ自動車は「Yaris ATIV HEV」を8月末に発売し、1か月足らずで3,700台超を販売。また、電気自動車(EV)「bZ4X」もオンラインで1,890件の予約登録があったという。

「Yaris ATIV HEV」出所:Toyota Motor Thailand Co., Ltd.

今年1〜8月のブランド別では、トヨタ自動車が依然としてトップシェア(37.3%)を維持。人気モデルは「Yaris ATIV」(3万5,017台)、「Hilux REVO」(2万5,182台)だった。販売全体では、乗用車が前年同期比0.7%微減だった一方、商用車は12.3%増と好調だった。

ただし、9月以降の市場は横ばいとの見方もある。新政権による経済政策の不透明性やガソリン価格の変動、高いローン審査基準が消費者心理に影響を与えており、今後の推移が注目される。


9月26日付のバンコク・ポストによると、スズキはバッテリー式電気自動車(BEV)への投資を行わず、代替技術を活用したハイブリッド車(HEV)と燃料電池車(FCEV)の開発に注力する方針を明らかにしている。

アジア・中南米・オセアニア地域を統括する原野匡史常務は「BEVの生産には今のところ関心がない」とした上で、「二酸化炭素(CO2)削減という世界的課題に対し、BEVだけが唯一の解決策ではない。電動モビリティ技術だけでは、ネットゼロ目標の実現には不十分」との見解を示した。

スズキは2025年にタイでの生産を終了し、現在は輸入販売体制へと切り替えている。消費の冷え込みや家計債務により自動車ローンが通りにくい状況が続くタイにおいては、9月29日にハイブリッドスポーツタイプ多目的車(SUV)「FRONX」を投入。2025年は8,000台の販売(前年比41%増)を目指すという。


9月29日付のバンコク・ポストによると、タイ中央銀行(BoT)の新総裁にウィタイ・ラタナコン氏が就任した。同氏は政府貯蓄銀行(GSB)元総裁で、低所得層や中小企業(SME)向けの融資支援に取り組んできた経歴を持つ。BoTでも家計債務問題や資金アクセスの改善が期待されている。

タイの家計債務は依然として高水準にあり、2025年第1四半期時点で16兆3,500億バーツ(国内総生産(GDP)比87.4%)に達する。非公式債務を含めればGDP比は104%に上るとの試算もありBoTには、こうした構造的課題への取り組みが求められている。

一方で、市場関係者の間ではBoTの独立性維持に対する懸念も根強い。タマサート大学のキアットアナン准教授は、「政府との協調は重要だが、中銀は政治的な圧力から独立していなければならない」と指摘している。

新政権下では経済刺激策の実行が進められており、BoTにも金融政策面での柔軟な対応が期待される。特に輸出・観光・不動産といった産業からは、バーツ高や高金利への懸念が相次いでおり、為替・金利の安定化とともに、資金調達の円滑化が急務となっている。


9月24日付のタイ紙ターンセタキによると、2025年のタイ市場におけるインフルエンサーマーケティングは、視聴数やフォロワー数ではなく、エンゲージメント(反応)やコンバージョン(購買)といった「成果重視」の傾向にあるという。

SNS分析を専門とするタイのアイデアズラボ社の調査では、国内企業のインフルエンサーマーケティング関連投資は前年比23%増と大幅に拡大。特に「体験レビュー」「ストーリーテリング」「期間限定キャンペーン」など、信頼と共感を生むコンテンツが一般広告の2倍近い反応を獲得しているという。

活用プラットフォームは、TikTok(38%)、Instagram(25%)、Facebook(19.5%)の3つで約8割を占め、ショート動画や画像コンテンツがエンゲージメントを高めるための重要なツールになっているという。なお、Lemon8も12.9%にシェアを伸ばし、新興層への浸透が進んでいる。

第4四半期は、飲食・美容・ライフスタイルなどの分野で競争が激化する見通し。Z世代を中心に「効果が実感できること」や「本音のレビュー」を求める傾向が強まっており、同社は「タイのインフルエンサーマーケティング市場は今、成果を求める時代へと移行しており、エンゲージメントやコンバージョンが次世代マーケティングの中核を成す指標になりつつある」と総括している。

THAIBIZ編集部
サラーウット・インタナサック

THAIBIZ編集部
タニダ・アリーガンラート

THAIBIZ編集部
和島美緒

THAIBIZ編集部

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