日本の生産技術が支えるローカルブランド展開の成功~サントリー「BRAND’s」工場特別視察

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日本の生産技術が支えるローカルブランド展開の成功~サントリー「BRAND’s」工場特別視察

公開日 2025.11.17

タイビスは11月4日、日タイ企業間の協業・新規事業の機会を探る「THAIBIZオンサイトビジット」を開催。チョンブリー県にあるサントリーのタイ法人Suntory Beverage & Food(Thailand)Co., Ltd. の工場を訪問した。この工場では、サントリーが1990年に買収したローカルブランド「BRAND’s」シリーズが生産されている。

「サントリーのBRAND’sシリーズ」出所:SUNTORY BEVERAGE & FOOD(THAILAND)
「サントリーのBRAND’sシリーズ」出所:Suntory Beverage & Food(Thailand)Co., Ltd.

サントリーグループ、グローバル売上収益は3兆円超

イベント冒頭では、同社副社長の松林秀貴氏がサントリーグループの概要を紹介した。「当グループは1899年に洋酒の製造・販売事業からスタートし、1972年に飲料・食品事業へ参入してブランド群を拡充してきた」と説明。また、「グループ理念の一つである『やってみなはれ』という言葉は、失敗を恐れず、新しい価値の創造に挑戦し続ける精神を大切にする企業文化を意味している」と、グループの挑戦心を強調した。

同氏によると、2024年度のサントリーグループの売上収益は3兆797億円に達した。80ヵ国以上でノンアルコール飲料のブランド展開・製造・販売を手がけるSuntory Beverage & Food Ltd.(サントリー食品インターナショナル株式会社)の売上収益は1兆6,968億円で、この20年間で約3倍の成長を遂げている。地域別では、タイを含むアジア太平洋地域が全体の25%を占めるという。

サントリーインターナショナル事業概要
提供:Suntory Beverage & Food(Thailand)Co., Ltd.

タイで展開するローカルブランド「BRAND’s」シリーズ

タイでは、1990年にサントリーがCerebos Pacificを買収し、「Essence of Chicken(EOC)」事業を中心とした健康食品分野に参入。その後、2018年には米飲料大手ペプシコ社との合弁会社として、Suntory Beverage & Food (Thailand) Co., Ltd.を設立した。

同社が展開する「BRAND’s」シリーズは、「BRAND’s Essence of Chicken(EOC)」、「BRAND’s Nest」、そして「BRAND’s Functional Essence」の3ブランドで構成されており、自社工場での生産能力は年間約3億本を誇る。

松林氏は製品について、「サントリーグループとして、“生活者”の視点に立った価値提案を通じ、180年の歴史を持つローカルブランドをタイ市場で着実に成長させてきた。なかでもEOCは、集中力向上や疲労緩和などの効果が高く評価されており、タイの健康・医療関連市場でシェアNo.1を維持している」と説明した。

続いて、同社のエグゼクティブ・セクレタリーであるオラヌット・ポンパナス氏からは、組織体制や、同工場が取得するISO認証をはじめとする世界基準の品質管理体制について紹介があった。

Suntory Beverage & Food (Thailand) Co., Ltd. 松林秀貴副社長
Suntory Beverage & Food (Thailand) Co., Ltd. 松林秀貴副社長

工場・ミュージアム見学で生産現場を体感

工場見学では、参加者が複数のチームに分かれ、生産ラインを見学した。最新設備を導入したラインでは、人員が最小限に抑えられており、高効率な生産体制が確立されている様子がうかがえた。

BRAND’s Nestの原料となる燕の巣を生産ラインに載せる前の最終検査工程では、松林氏が「燕の巣はすでに異物除去を終えた状態で工場に届くが、念のため最終的な目視確認を行っている」と説明し、安全性への徹底したこだわりを強調した。

また、EOCの生産ラインの視察では、「エッセンス抽出後の鶏肉は1日あたり約4,000トンにのぼり、現在は動物の餌として販売しているが、さらなる有効活用方法を模索している」と述べ、サステナビリティを見据えた他社との協業に向けた意欲も示した。

サントリー工場見学の様子
工場見学の様子

工場に併設されたミュージアムでは、来場者が日常の健康の悩みを選択すると、それに対応したBRAND’sシリーズのサンプル品が自動で出てくる体験型展示など、エンターテインメント性の高い仕掛けが用意されており、参加者の関心を引いていた。

見学後には、工場長/製造部長のイッティキット・ジラパッタラサクン氏が「日本式の生産ラインをタイ市場向けに最適化し、品質管理や生産体制においてグローバル水準を実現している。現場では、サントリーの“ものづくり”の考え方や哲学をスタッフに浸透させるため、さまざまな工夫を行っている」と語った。

組織体制や原料選定に関する質疑応答の後、会場内では名刺交換やネットワーキングも行われ、熱気あふれる雰囲気の中でイベントは締めくくられた。

参加者からは「今まで関心を持っていた企業の商品であり、会社・商品概要説明並びに工場見学が出来たのは非常に有益だった」「異なる業界の工場を視察できて大変参考になった。自動化に力を入れているところはぜひ見習いたい」等の感想が寄せられた。

THAIBIZ編集部
白井恵里子

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