カテゴリー: ASEAN・中国・インド, ニュース
公開日 2023.08.29
中国の不動産バブルの本格崩壊の可能性に世界が一段と身構え始めているようだ。英エコノミスト誌は8月19日号、同26日号と2週連続で、表紙と巻頭記事で中国を取り上げている。今回はまず19日号の巻頭記事「中国経済の沈滞が、若者の間での幻滅につながっている」の一部を紹介する。同記事は、1985年に「WHAM!が共産主義中国で演奏する初めての西側ポップグループとして登場した時、観客は座席にとどまるよう命じられた」ことから、「ジョージ・マイケルらを見ても熱狂しているようには見えなかった」と話を始める。
そして、「その後30年間、中国経済は急成長し、新たなチャンスをもたらした。中国人の海外への旅行者、留学生は増加した。・・・この時代には、未来への大きな希望があった」と振り返る。そして現在、「現実は期待する水準までは届いていない。1990年代~2000年代に生まれた中国人の上には暗い雲が覆っている。習近平氏が2012年に権力を握ってから、中国政府はより抑圧的になり、社会の活力は低下した。検閲がインターネットを陰鬱な場所に変えた。大学生は、習氏の気難しいイデオロギーに向き合わなければならない。最悪なのは中国経済が沈滞しつつあることだ。16~24歳の失業率は21%を超えている」などと、特に中国の若者をめぐる環境変化を概観している。
同記事は、同じ号でより詳細に分析した特集記事「中国の敗北した若者」で、「われわれは、中国の若い男性と女性にどう感じているか話を聞いた。多くがまだ共産党に忠誠心を持っており、中国を強くするという習氏の呼びかけを支持している。しかし、多くが深い怒りの感情にとらわれている。大学生は、長年学んだスキルは経営者が求めているものでないことに気づきつつある。雇用の減少と不動産価格の懲罰的な押し下げが家を買い、家族を持つ希望を消し去った。われわれはソーシャルメディアをチェックする中でムードがより暗くなっていることに気づいた。幻滅した若者は横たわり、腐りつつある。あきらめの兆候だ」と分析している。
中国経済社会の沈滞がタイ経済に与える影響も懸念されている。8月24日付バンコク・ポスト紙(ビジネス2面)によると、ホテル・不動産開発大手デュシット・インターナショナルのスパジー最高経営責任者(CEO)は中国の不動産価格の下落は、同社の中国での2件のホテル開発に影響はないとの認識を示したという。一方、同面の別の記事では、タイ商務省貿易政策戦略事務所(TPSO)のプーンポン所長が、中国の景気減速によりタイの観光業と、化学製品やプラスチックペレットの輸出が減少するとの予想を明らかにしている。
一方、中国がらみの前向きのニュースでは、19日付バンコク・ポスト(ビジネス1面)がタイと中国・雲南省が、ロジスティクスや越境Eコマース分野などで協力する目的で、ミニ自由貿易協定(FTA)に関する覚書を結んだと報じた。また24日付バンコク・ポスト(1面)によると、タイ政府報道官は、タイ中国鉄道の第2期(ナコンラチャシマ―ノンカイ間)の計画について今年末までに閣議承認を求める一方、第1期(バンコク―ナコンラチャシマ間)は2026年までに営業開始できるとの見通しを明らかにした。
バンコク・ドゥシット・メディカル・サービス(BDMS)傘下のバンコク病院は8月22日、Eコマース大手ラザダ・タイランドと提携し、ラザダのアプリケーションを通じて消費者がより良い健康を維持できるヘルスサービスを提供していくと発表した。「ハロー、サワディー、より健康的なあなたへ、バンコク病院はここにあります」という名称のキャンペーンを展開する。バンコク病院第1グループのメーティニー副社長は、「タイのヘルスケア市場のリーダーとして、最新技術やアドバイス、治療を提供できる学際的医療チームで包括的なヘルスサービスを提供する準備が整った」とした上で、ラザダの「LazMall」内で、タイ語、英語、日本語、中国語などの多言語でヘルスサービスの詳細を紹介しているとアピールした。
TJRI編集部
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