ArayZ No.114 2021年6月発行タイのアフターコロナ展望
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カテゴリー: 自動車・製造業, ASEAN・中国・インド
公開日 2021.06.09
エナジーアブソリュート(EA)はグリーンエネルギー分野で急成長し、最近は電気自動車(EV)関連事業を積極的に拡大しているタイの新興企業である。タイの証券市場(SET)に上場しており、モーターショーで自社開発のEVを展示するなど動向は世間でも注目されているが、その実像は意外と知られていない。
元証券会社社長でCEOのSomphote氏はタイのイーロン・マスク(テスラCEO)と称されている。2006年に個人投資家として株で儲けた資金でバイオディーゼル工場を購入して起業。11年に太陽光発電、13年に風力発電を立ち上げた。特に発電事業が大成功し、今は総売上約170億バーツの75%を稼いでいる(図表1)。
Somphote氏が次の事業として目を付けたのがEV関連事業だった。17年にEV充電ステーション事業を立ち上げ、民間企業として最大の1,000ヵ所の整備に投資すると発表。極めつけは18年に台湾企業を30億バーツで買収し、手にした技術でタイで世界最大級50GWhのバッテリー工場を建設すると発表し、世間の注目を浴びた。19年3月のバンコクモーターショーでは自社開発のEVのプロトタイプを発表し、タクシー会社から3,500台を受注した。
EAはその後も積極的にEV関連事業を次々と立ち上げ、EVに加え、電動バス、電動フェリーを開発、EVではバッテリー製造、自動車組立、販売・サービス、インフラまで上流から下流に至るバリューチェーンに全展開を図っている(図表2)。
転換も早い。中国系ブランドとの競争が厳しいと見れば、早々とEVの開発と生産を延ばし、より安定した収益が期待できる電動バスやフェリーに注力する方針に切り替える。
テック系でもない企業が、どうやってこの驚異的とも言えるスピードで新規事業を立ち上げられるのか不思議に思う人も多いだろう。その答えとなるのが、エネルギー事業からの滑沢なキャッシュフロー(19年90億バーツ)と、技術は買うものという投資ファンドに近い割り切った発想にある。
バッテリーは台湾企業、充電器は深圳の中国企業、乗用車の設計技術は台湾企業というように、華々しく打ち出される新規事業の裏を覗くと中国・台湾を中心とするテック系企業に出くわす。
その代わり、EAの経営者はさらに新しい事業機会の探求、最適なパートナー探し、政府との関係を含めて事業実現に向けた環境整備や株価対策に専念しているようである。
筆者がEAの幹部に日系企業との提携の可能性について聞くと、「中国系企業は自社ブランドに拘らないし、技術コストも安いので組みやすい。日系の技術はコストが高く、ブランドに拘るのであまりメリットがない」と切り捨てた。
CASEの時代、アジアの新興勢力はもはや日米欧の技術を当てにしなくなった。これまでタイの製造業の常識では合弁といえば日系や欧米などとの組み合わせを指していたことから、隔世の感がある。
ArayZ No.114 2021年6月発行タイのアフターコロナ展望
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NRI Consulting & Solutions (Thailand)Co., Ltd.
Principal
山本 肇 氏
シンクタンクの研究員として従事した後、2004年からチュラロンコン大学サシン経営大学院(MBA)に留学。CSM Automotiveバンコクオフィスのダイレクターを経て、2013年から現職。
野村総合研究所タイ
ASEANに関する市場調査・戦略立案に始まり、実行支援までを一気通貫でサポート(製造業だけでなく、エネルギー・不動産・ヘルスケア・消費財等の幅広い産業に対応)
《業務内容》
経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション
TEL: 02-611-2951
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