EV振興策後に予想される各メーカーの動向

ArayZ No.124 2022年4月発行

ArayZ No.124 2022年4月発行タイの労務 -従業員の雇用前から退職まで-

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EV振興策後に予想される各メーカーの動向

公開日 2022.04.10

前月号ではタイのEV振興策の詳細について説明した。

振興策では、現地生産予定のモデルに対して7〜15万バーツの補助金を供与する方針であることから、中国勢などのメーカーが現地生産を開始することが予想される。また、エナジーアブソリュート(EA)や石油公社PTTなどのローカルプレーヤーも現地生産を開始しようとしている。本稿ではEVに関わる各社の動きについて紹介したい。

EV市場動向

2021年のタイにおけるEV販売台数は、前年比53%増の1,956台に達した。しかし、ハイブリッドを含むx-EV全体の市場の34,000台の約6%に過ぎず、まだ市場のテークオフ段階にある。ブランド別販売台数を見ると、中国メーカーが高いシェアを占めている。

21年には、上海汽車傘下のMGが小型SUVの「ZS EV」を1,000台以上販売し、EV全体販売の半分を占めた(19~21年のMGのEV累積販売台数は2,800台超)。

次いでTESLAが222台、Porscheが194台、FOMMが109台、Miniが83台だった(現地自動車ネットニュース「Car2Day」より)。

同統計には納車タイミングの理由で含まれていないが、長城汽車(GWM)も気になるところだ。GWMは20年のタイ進出時に、3年で毎年3モデルのEV・ハイブリッドを販売する「9 in 3」戦略を発表。21年10月末から小型EVの「ORA Good Cat」の販売を開始し、6,000台の先行予約を受け付け、同年末に462台を納車している。

猫の目に似せたかわいらしいヘッドライトのデザインや、自動駐車支援機能などの新しいテクノロジーの搭載が特徴だ。

現地生産で先行を目論む中国勢

今後、注目されるのは振興策導入後の中国メーカーの次の一手である。中国メーカーはすでに完成車(CBU)でEVを輸入しているが、振興策の補助金を活用して、現地組み立てに転じることが予想される。現在進行中の自動車メーカーのタイでのEV生産計画を図表1に示す。

またMGは、今年3月のモーターショーで「ZS EV」及び「EP」のマイナーチェンジを発表。今年5月にも「ZS EV」を年間3,000台で生産開始する計画である。同社は昨年末にBOIから電動車やバッテリー組立工場等への36億5,619万バーツ(約124億円)投資プロジェクトの承認を受けており、迅速に現地生産を拡大する構えだ。

さらにGWMも現地化の動きを進めており、来年までにEVの生産を計画する一方で、基幹部品の現地化に動き出している。

現地生産を拡大するローカルプレーヤー

EVの現地生産で気になるのは、EAとPTTのローカルプレーヤー2社の動向である。両社の共通点は、豊富なエネルギーや燃料収入をEVの新規事業に投入しながら、技術的には中国勢や台湾勢の新興メーカーとの連携を強めていることだ。

EAの本業はバイオ燃料や太陽エネルギーや風力発電所であるが、将来的に代替エネルギーへの補助金が削減されることを見越して、2010年代半ばからEV市場に進出。同社が車両組立・販売で事業の中心に据えているのは、EVバス・商用車である。EAは中国製バスの輸入・販売を行っているNex Point(EA40%出資)と合弁会社を立ち上げ、22年初めに年産3,000台のバス・トラックの工場建設を完了した。

現在は、中国から輸入販売している都市間中距離バスのディーゼルバスを今後現地で生産するEVバスに切り替えていく予定だ。Nex Pointは手始めに、バンコクのバス公社BMTA向けに中国製のEVバスの納入を開始している。

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NRI Consulting & Solutions (Thailand)Co., Ltd.
Principal

山本 肇 氏

シンクタンクの研究員として従事した後、2004年からチュラロンコン大学サシン経営大学院(MBA)に留学。CSM Automotiveバンコクオフィスのダイレクターを経て、2013年から現職。

野村総合研究所タイ

ASEANに関する市場調査・戦略立案に始まり、実行支援までを一気通貫でサポート(製造業だけでなく、エネルギー・不動産・ヘルスケア・消費財等の幅広い産業に対応)

《業務内容》
経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション

TEL: 02-611-2951
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Website : https://www.nri.com/

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