事業の方向性転換のオプションと 検討の進め方について

ArayZ No.140 2023年8月発行

ArayZ No.140 2023年8月発行2030年 タイの消費財・ 小売りビジネスの未来

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事業の方向性転換のオプションと 検討の進め方について

公開日 2023.08.09

現在タイには日系企業が約6,000社前後あると言われているが、組織再編や子会社・事業の売却を行うケースも増えてきている。実際にタイからの撤退件数は図表1の通り、近年増加している。

また、日本経済新聞によれば2021年には日本企業の事業再編の数が368件と過去最多を記録した(タイと関係しないものも含む)。

この背景には、タイの経済成長の鈍化やBOIの恩典取得のために設立した会社の整理などがあると思われる。また、タイ国内の所得水準向上により単なる生産拠点としてではなく、消費市場としての魅力が向上したため、日本企業のタイという国に対するスタンスが変わったこともあると想定される。すなわち、在タイの日本企業について、製造業に加えてサービス業が進出しているケースが増えているという、ある意味産業の新陳代謝が進んでいると言える。

 事業改善のためのアクション

以上のような背景で、再編や撤退などの選択肢を含め、事業の方向性の転換を行うことが求められるケースがある。その場合、どのような選択肢があり、またどんな検討をすべきかという点について触れていきたい。

一般的に、企業が何かしら事業改善に向けてアクションを起こしたいと思った際は、図表2のような選択肢があると考えられる。大きくは、自社内で完結するもの、グループ内で完結するもの、他社との連携を必要とするものの3通りがある。必ずしもそのうち1つだけを選ぶということではなく、選択肢をいくつか組み合わせてアクションを起こすケースもある。

事業が苦境にある際は、一般的には効率化や事業縮小を目的とした打ち手を選択することになる。既存事業のテコ入れ、グループ内再編、会社清算、グループ外事業譲渡が一般的な選択肢となる。

検討の例

では、このような選択肢がある中で、どのように検討を進めるべきなのであろうか。以下のようなステップが考えられる。

① 事業性の評価
足元の市場や競合といった外部環境、事業ごとの収益性といった内部環境を把握し、中長期的な事業性を評価する(将来の事業計画のシミュレーションを行う)。

② あるべき姿の設定と現状のギャップの把握
事業性の評価、及びその他会社全体としてのビジョンや目標などを鑑みて、目指したい姿を検討する。その上で、現状とのギャップを把握する。

③ オプションの抽出と検討
ギャップを埋めるためのオプションをいくつか検討し、売上への効果/実行に必要な費用/実行までに必要な期間などで評価する。

④ オプションの決定と実行
③における評価を踏まえてオプションを決定し、実行プランを立てる。

事例

実務的には①②を行うことはかなり負荷がかかるので、事業が不振に陥った場合は③オプションの抽出と検討から入るケースも少なくない。しかし、その場合であってもある程度はどのような方向性で事業を行うのかは、最低限共通理解を社内で作っておかないと実行が難しくなるケースが多い。

弊社でもグループ内再編や清算、グループ外事業譲渡についてご相談を頂くケースがあり、また冒頭で記した通り日々それらに関連したニュースを目にする。自社内で完結した取り組みになるケースが多いが、外部の力を借りながら、事業の立て直しを図ったケースもあるため以下に紹介したい。

90年代からタイで操業する日系食品メーカーであったが、事業がうまくいっておらず、2010年代にナショナルスタッフの経理部長による棚卸資産の過大計上という会計不正が発生した。結果、更に業績を下方修正することとなり事業が苦境に陥った。また、操業から時間が経っていることから工場設備も老朽化しており、その点についても対応の必要があった。

その後、事業の立て直しを図るため、アライアンス先を探した。結果、タイの大手財閥企業とJVを設立することで合意。既存の会社は清算し、残った機能はJVに移管することとした。販売する製品についてはその会社のブランドを用いる一方、その大手財閥企業の生産設備を用いて製造を行う。アライアンスを通じて、大手財閥企業の販路活用を通じた事業のテコ入れだけではなく、生産設備の老朽化という課題も解決ができた。

このように、必ずしも自社だけで実行することにこだわるのではなく、アライアンスを通じて他社の力を借りるということも検討すれば、選択肢の幅が広がることもある。打ち手を考える際は「事業改善のオプション」の表にある選択肢を幅広く検討すると、打開策が見えてくることもある。

出所: 日本経済新聞2022年3月7日「21年の事業再編、コロナ禍で最多に『選択と集中』加速」、経済産業省「海外事業活動基本調査」
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kaigaizi/index.html
※本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをお断りする

寄稿者プロフィール
  • 谷口 純平 Jumpei Taniguchi プロフィール写真
  • Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
    Financial Advisory Services / Manager谷口 純平 Jumpei Taniguchi

    Deloitte入社以来、一貫してM&A・事業戦略をテーマに活動。特に各関係者の調整やスピード感を持ったプロジェクト推進で高い評価を得ている。主な実績は、大手ファンド向けBDDと事業戦略検討。総合商社のクロスボーダーM&AのPMIリードなど。2020〜22年8月タイ駐在。同年9月〜シンガポールに赴任。

    TEL:+65 (0) 8-763-6373
    E-mail: jumtaniguchi@deloitte.com


  • 柴 洋平 Yohei Shiba プロフィール写真
  • Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
    Financial Advisory / Manager
    柴 洋平 Yohei Shiba

    大手生命保険会社、大手電機メーカーを経てDeloitte入社。M&A関連や事業戦略策定、マーケティング支援などのプロジェクトに従事。入社以来、金融・テクノロジー・ライフサイエンス・消費財・電力など幅広い業種における支援をリード。22年8月からバンコクに赴任、特にPre M&AやPMIに力を入れて活動中。

    TEL:+66 (0) 6-3079-4893
    E-mail: yohshiba@deloitte.com


Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.<Financial Advisory>

Deloitteは会計・財務・税務・M&A等のサービスを世界各国で行うプロフェッショナルグループの一つであり、 主にタイの日系企業様向けにM&Aやリストラクチャリング/再編に関わるサービス提供を行っております。

AIA Sathorn Tower, 23rd – 27th, Floor11/1 South Sathorn Rd. Yannawa, Sathron, Bangkok 10120

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Financial Advisory Associate Director

谷口 純平 氏

商社を経て、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。2020年からバンコク及びシンガポール事務所に出向。戦略策定からPMIまで、シームレスに事業成長をサポートできることが強み。

【谷口 純平】
+65 (0) 8-763-6373
jumtaniguchi@deloitte.com

Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.

デロイトタイの日系企業サービスグループ(JSG)では、多数の日本人専門家を抱え、タイ人専門家と共に、タイにおけるあらゆるフェーズでの事業活動に対して、監査、税務・法務、リスクアドバイザリー、フィナンシャルアドバイザリー、コンサルティングサービス等を日系企業のマネジメントの皆様に提供しています。

Website : https://www2.deloitte.com/th/en.html

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