THAIBIZ No.155 2024年11月発行タイの明日を変える!イノベーター大特集
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カテゴリー: 特集, スタートアップ, 食品・小売・サービス
公開日 2024.11.11
LINE MAN Wongnaiの成長スピードは圧倒的で、その勢いはとどまる所を知らない。同社の飽くなき挑戦をさらに深堀するため、Vice President of Public Affairsのイサリヤ・パイリーパーイリット氏に詳しい事業内容や企業文化、タイのスタートアップ環境などについて話を聞いた。
同社の事業は、オンデマンドサービス、マーチャントデジタルソリューション、決済・金融サービスの3領域に分けることができる(図表2)。
核となる事業であるオンデマンドサービスでは、LINE MANアプリを通じて、フードデリバリー、配車、メッセンジャーのサービスを提供している。イサリヤ氏によれば現在、全国で約1,000万人のユーザーと約10万人のライダー・ドライバーが登録している。さらに同氏は「2024年には陸運局(DLT)から配車サービスのライセンスを取得し、LINE MANアプリを通じて自家用車の予約が可能となった」と補足する。
マーチャントデジタルソリューションでは、レストラン経営者向けに包括的なシステムとマーケティングソリューションを提供している。具体的には、各地域のレストラン情報を集積したWongnaiアプリや、レストラン経営者が LINE MAN アプリを通じて受けた注文を効率的に管理するための 「Wongnaiマーチャント」などだ。
イサリヤ氏はWongnaiマーチャントについて、「マーケティング戦略に基づき売り上げを伸ばし、ブランド認知度を向上させるための機能も備えている。現在約70万人のユーザーが登録している」と説明。さらに同社は、約900万人の登録ユーザー数を誇るLINE Payを通じて決済サービスを提供している。
タイのフードデリバリー市場やPOS市場を見ると、主な競合は外国企業だ。イサリヤ氏は、「マーチャント、ライダー、ドライバーと強固な関係性を築き上げてきたため、オフラインオペレーションに優位性があると自負している」とし、さらに「Wongnaiアプリのデータベースには100万以上のレストラン情報が含まれており、ミシュランガイドなどの外国のレストランガイドには掲載されていない、地方都市や小さなローカルレストランも網羅している」と、タイ企業ならではの強みついても明かした。
同社は企業としてさらに成長するために、文化の醸成にも力を入れているという。イサリヤ氏によれば企業文化は、シリコンバレーのスタートアップスタイルの影響を受けながらも、タイのコンテキストに合わせたものとなっている。同社には3つのコアバリューがある。
一つ目は、革新的なスピードだ。テック企業にとって欠かせない、迅速な作業の重要性を強調している。二つ目は、より深い関係性作りだ。外国企業との差別化を図るためにも、顧客、マーチャント、ライダー、ドライバーとの深い関係構築に注力している。最後は、全ての人へのリスペクトだ。全方面のステークホルダーを、リスペクトの念をもって平等に評価することを大切にしている。
従業員を大切にする同社の具体的なエピソードとしてイサリヤ氏は、「新しいオフィスビルに移転した時、特に対面での勤務を希望する従業員からのフィードバックを求めた。さらに当社は、従業員を育成するために、管理職への昇進を支援する専門的なトレーニングプログラムを提供している。
マネージャーは、チームメンバーのニーズを最も理解していると考えているからだ」と説明する。同社には1,200人の従業員が在籍しており、通常は年間100〜200人の新入社員を採用しているが、イサリヤ氏によれば2023年は、約4万人が入社を希望するという圧倒的な反響があったという。
ユーザー、パートナーレストラン数を順調に伸ばし、スタートアップからユニコーンへ一気に駆け上がってきたLINE MAN Wongnai(図表3)。
タイでスタートアップが成功するためには、どのようなポイントを意識すればよいのだろうか。イサリヤ氏は「新しいスタートアップは、大企業と競争するのではなく、ニッチな領域をターゲットとしたアプローチを取っている。『垂直型』と呼ばれるスタートアップは、個々のセクター内の課題を特定し、その解決に向けたソリューションを提供している」と説明。
「タイでは、多くの垂直型スタートアップが、ドラッグストアアプリケーションなどのニッチな市場で事業を展開している」と、特定の専門分野でのアプローチが有効である可能性について語った。
さらに、日本のスタートアップのタイ進出について同氏は、「タイ市場を理解するためには、徹底的な市場調査が不可欠だ。日本の成功がタイでの成功を保証するものではない」とした上で、「高度な技術、強力なチーム、より多くの資本という利点を持っている日本のスタートアップは、互いのニーズがマッチするパートナーシップと適切なアプローチさえあれば、成功する可能性は十分にあると思う」との見解を示した。
LINE MAN Wongnaiが持つ「オフラインの強み」を日本企業が発揮することは容易ではないが、タイの人々を一番に理解するローカル企業とのパートナーシップは、大きな突破口となりうるだろう。
次ページからは、まさに「垂直型」としてタイの変革に挑む日系スタートアップ2社の取り組みを紹介する。
THAIBIZ No.155 2024年11月発行タイの明日を変える!イノベーター大特集
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THAIBIZ編集部
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