THAIBIZ No.153 2024年9月発行ヒットメーカーが語る!タイの外食産業必勝法
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カテゴリー: 対談・インタビュー
連載: 在タイ日本人駐在員の挑戦
公開日 2024.09.10
自身の役割に向き合いながらも、チャンスを掴むことができずに葛藤している駐在員も多いだろう。丸紅泰国会社の播磨諒人氏は、「新規事業創出」という大きなミッションの達成に向け、着実にチャンスを掴み続けている。その背景には、大胆かつ地道な行動力と、失敗を次に生かす前向きな姿勢があった。
目次
当社は今年設立70周年を迎え、社員は116人、うち日本人は23人です。化学品、金属、食料、フォレストプロダクツ、ライフスタイル、電力、インフラ、社会産業・金融—の8つの営業部があります。私が所属する社会産業・金融部では、着任当初はモビリティのみ見ていましたが、徐々に領域を増やし、今ではフィンテックや航空宇宙なども加わり6分野の事業を手がけています。
私はガーナでの研修や日野自動車への出向等を経て、2021年3月にタイ赴任となりました。2021年はモビリティ事業の新規案件創出を行い、2022年からはフィンテック事業をスタート、そして丸紅によるイタリアのD-Orbit社への出資を契機に、2024年から航空宇宙事業の新規案件創出にも携わっています。
タイでは二発のロケット打ち上げ実績がありますが、いずれも外国の技術をそのまま転用したものです。国産化のロケット打ち上げを今後の目標とするタイに、外国企業、特に日本企業の技術や知恵が貢献できる可能性を模索しています。
私自身のタイでのミッションは「モビリティ関連の新規事業創出」であり、具体的には商用EVを切り口に新サービスを検討しています。商用EVの導入にあたっては、例えば、リース会社や充電サービスの不足、不十分なメンテナンス、バッテリーの劣化など、様々な困りごとが付随します。
これらの課題をワンストップで解決するサービスを「フリートマネジメント」と呼びますが、丸紅は既に日本でこのサービスを立ち上げた経験があります。そのノウハウを活かして、タイでフリートマネジメントの事業を立上げることが現在の目標です。
タイでの商用車やEVのマーケットを意識的に見てきた中で、日本とは比べ物にならない程の大きなポテンシャルを感じます。タイ企業の環境への意識やコミットメントが非常に高いことや、トップダウンの構造もあり「やると決めたらやる」という強い姿勢が影響していると思います。新しい取り組みに慎重な日本企業と比べ、タイ企業のEV導入スピードは圧倒的だと感じます。
タイで新会社を設立するためには地場企業とパートナーを組む必要があるため、着任から3年間かけて情報収集や種まき、地場企業との関係構築を進めており、現在も進行中です。商社の特性上、自社サービスや独自技術を持っているわけではないため、アイデアやコンセプトのみで相手を魅了しなければならない点が難しくもあり、やりがいでもあると感じます。
「アイデアは面白い」の一言で話が終結してしまうことが多い中、諦めず継続的に複数社へアプローチした結果「自分たちも挑戦したいと考えていた」と積極的な姿勢を見せてくれる地場企業とようやく出会うことができました。パートナーが一社決まると、本社も動かすことができる上、事業の解像度も一気に上がるので大きな一歩でした。
一年半かけてフィンテック事業を立ち上げたことです。丸紅が2020年に出資したモンゴルのフィンテック企業AND GLOBAL社の技術をタイにも持ち込むべく、当社として様々な地場企業と協議してきましたが、最近ついに二社と業務提携が決まりました。
トップ層から承諾が得られたものの、実務にうまく落とし込めず見送りとなってしまった案件もあり、その時の失敗経験を活かして次に臨んだことが、成功要因の一つだと捉えています。業務提携が叶った一社はイオンタナシンサップ社。同社は個人向けのローン・クレジットカード会社ですが、少額ローンのニーズが大きい中間層向けのローンサービス分野での業務提携となります。
丸紅では既にモンゴルとフィリピンで消費者金融の事業を行っていますが、他国でのサービスをそのままタイで展開するのではなく、タイならではの勘所を押さえながら、ローカライズ方法も含めて話を進めていきました。パートナーのAND GLOBAL社と二人三脚で、粘り強く行動を積み重ねた結果だと思います。
近年、丸紅全体で駐在員の役割を改めて問い直しています。個人的にも、世の中の潮流が大きく変化している中で、駐在員の役割だけが不変であることに対して違和感を抱いていました。そして自分が駐在員となった今、この問題についてより具体的に考えられるようになりました。
「もっと現地化を進めるべき」と思う一方で、自分にしか出来ないことは責任を持って推進していかなければなりません。特に新規事業の創出では、部分的にはタイ人社員に任せながらも、自分が舵を握っておく必要があると考えています。
例えばフィンテック事業の立上げにおいては、アプローチ先のリスト化やアポ取りはタイ人社員、プレゼンターは自分、と役割分担をしていました。これまでのキャリアで培った知識やノウハウを駆使して事業作りを牽引することは、駐在員である私の大きな役割だと認識しています。
帰任までの目標は、フリートマネジメントの事業を立上げ、タイで新会社を設立することです。将来的には、インドや中近東、アフリカで新規事業の創出に挑戦してみたいと思います。日本企業が輝きを取り戻すためには、人口が多いこれらの国・地域にも、積極的にアプローチする必要があると考えているからです。
タイではトライアンドエラーを繰り返しながらも、諦めず地道な努力でチャンスを掴んできました。この経験を糧に、今後も日本企業の技術や知恵を世界の発展に繋げるべく尽力していきます。
播磨 諒人氏
Deputy General Manager,Transportation & Industrial Machinery,Financial Business Division
Marubeni Thailand Co., Ltd.
2012年に丸紅株式会社へ新卒入社。2014年、Toyota Ghana社にて海外研修を経験後、本社の自動車関連部署、日野自動車への出向を経て、2021年3月より丸紅泰国会社に赴任し、社会産業・金融副部長を務める。
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THAIBIZ編集部
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