カテゴリー: 会計・法務
公開日 2024.05.10
債権回収のコスト低減や回収不能となるリスクを回避するためなどに、債権譲渡のニーズが生じることがある。このような場合、タイでは債権譲渡はどのように進めることができるのだろうか。
タイの民商法典上、債権譲渡は書面で行うことがその有効要件とされている(同法306条)。この書面には少なくとも譲渡人の署名が必要とされており(最高裁判決No.1893/2512とNo.4139/2532)加えて譲受人の意思確認も込めて譲受人の署名も必要と考える。また債権を特定するために債権額やその債権のもととなる契約についても言及しておくべきである。
ただし、債権譲渡はその債権の性質が譲渡を許さない場合にはすることができない。例えば、夫婦間の扶養義務に関する債権などはその性質上譲渡を許さないものであるとの判断がされている(最高裁判決No.1366/2530)。さらに債権者と債務者の間で、当該債権の譲渡を禁止する合意がなされていた場合も、債権譲渡を行うことはできない(同法303条)。
なお、債権譲渡における譲渡価格について、その債権の譲渡価格が譲渡対象となる債権額より高額もしくは低額であっても、債権譲渡の要件を満たしたものであれば有効なものであると判断した事例がある(最高裁判所判決No.1974/2525)。しかしながら譲渡価格は税務面での影響も考慮したうえで決定すべきである。
債権譲渡に第三者対抗要件を備えるためには、当該債権譲渡について書面で債務者に通知し、もしくは債務者が書面で債権譲渡を承諾することが必要である。債務者が譲渡通知を受けたにとどまる場合、当該通知を受ける前に譲渡人(もともとの債権者)に対抗することができた事由を譲受人(新しい債権者)に対して対抗することができる(同法308条)。また債務者が異議をとどめたうえで債権譲渡を承諾した場合には、当該異議に係る事項は譲受人にも対抗できると解釈されている。
なお日本における債権譲渡でも、第三者対抗要件には通知もしく承諾が必要とされている。そして日本での通知もしくは承諾の方法には、第三者による日付の証明という意味で確定日付のある証書による通知もしくは承諾が必要とされている。他方、タイにおいては確定日付まで必要とはされていない。しかしながら、通知の日付が客観的に証明できるよう証人のサインや公証を行うなどの工夫を講じておくことが好ましい。
債権譲渡により、譲受人は譲渡人の代わりに債務者の債権者となり、債務者に直接請求をする権利を有することになる。
さらに民商法典305条において債権譲渡の対象となる債権に現存する抵当権、質権や保証契約も譲受人に譲渡されることが規定されている。
TNY国際法律事務所
日本国弁護士
藤原 杯花 氏
2017年1月よりタイのTNY国際法律事務所にて執務。TNY国際法律事務所は、日本人弁護士2名が共同代表を務める法律事務所であり、会社設立から規制調査、契約書のリーガルチェック、商標登録申請、相続手続きなどのサービスを提供している。
TNY国際法律事務所
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