ArayZ No.119 2021年11月発行コロナと観光業 in タイランド
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公開日 2021.11.09
みずほ銀行バンコック支店メコン5課が発行する企業向け会報誌 『Mekong 5 Journal』よりメコン川周辺国の最新情報を一部抜粋して紹介
橋本 裕輝 |グローバルトランザクション営業部 調査役 バンコック駐在
信用状取引では船積書類の授受に基づき代金の支払いが行われるため、各国における書類の配送状況を確認することが重要である。新型コロナウイルス感染拡大を受けたメコン5各国では厳格なロックダウンが実施され、一部の国で書類の配送が遅れたり停止する事例が発生している。
書類の配送に支障をきたす場合にどのような対策をとり得るか、在ベトナム日系企業A社が在タイ日系企業から商品を輸入している事例を通してポイントとなる事項を紹介したい。
A社 新型コロナウイルスの感染拡大によりベトナムでは書類の配送が遅れる可能性があると聞いています。弊社はタイにある取引先から商品を信用状ベースで輸入しており、その影響について教えてもらえますか。
橋本 以前、信用状取引(以下、L/C取引)についてご説明しましたが、輸出者は船荷証券(Bill of Lading)といった各種船積書類の原本を取引銀行(以下、通知銀行)へ渡し、通知銀行はL/C発行銀行に対して送付します。
L/C発行銀行は受け取った書類がL/C条件を充足することを確認し、輸入者へ書類交付。最終的に輸入者は船会社へ船荷証券を渡すことで貨物を受け取ることができます。
書類の到着が遅れた場合、船積書類を渡すことができないため貨物を受け取れず、貨物の保管料がかさむ、貨物の品質が変わる、商機を逸するといった問題が起きる可能性があります。
A社 それでは貨物が先に到着してしまったものの、船積書類が届かない場合、どのように対処すれば良いでしょうか。
橋本 Shipping Guarantee(S/G)をご検討されてみてはいかがでしょうか。
輸入書類が未着の段階で輸入者が船荷証券なしで船会社から貨物を引き取るため、船会社に差し入れる保証状に、信用状発行銀行が保証を行うことです。
万が一船荷証券なしで貨物を引き渡したことにより、船会社が何らかの損害を被った場合、輸入者と銀行が全ての損害を賠償する必要があります。例えば以下のようなケースで船会社が損害を被る可能性があります。
1) S/Gを船会社に差し入れて貨物を引き取った輸入者が、船積書類到着後、貨物を引取済であることを隠したまま善意の第三者に船荷証券を譲渡し、その第三者が船会社に対して船荷証券を提示し、貨物の引渡しを請求した場合
2) 輸入者がS/Gを船会社に差し入れて貨物を引き取った後、船積書類が紛失あるいは盗難に遭い、最終的に善意の第三者に渡って、その第三者が船会社に対して船荷証券を呈示し、貨物の引渡しを請求した場合
上記の場合、船会社は善意の第三者に渡すべき貨物がないため、第三者に対して賠償をしなければなりません。損害賠償をした場合船会社は、賠償金として支払った金額をS/Gに署名した銀行または輸入者に請求します。
S/Gとは輸入者の信用状発行銀行が船会社(※場合によってはフォワーダー等に保証を差し入れるケースもあるが、以降、簡略化のため船会社と記載)に対して発行する保証です。
船会社が了解すれば、輸入者はS/Gを船会社へ渡すことにより、船荷証券の原本無しに貨物を引き取ることが可能です。その後、L/C発行銀行経由で船荷証券が届き次第、輸入者は船会社に対して船荷証券原本を渡し、それと引き換えにS/Gを回収、信用状発行銀行へS/Gを返却します。
S/Gは借入と同様に銀行からの与信取引にあたりますので、取引開始にあたって輸入者は銀行の審査が必要となりますのでご注意ください。
A社 S/Gを利用する場合、他に気をつけるべき点があれば教えて下さい。
橋本 L/C取引とは船積書類が信用状に記載された条件を充足していることを条件に信用状発行銀行、最終的には輸入者が支払いを確約する取引です。
しかしL/Cを利用した場合、船積書類到着前に貨物を引き取るため、船積書類に不備があったとしても、輸入者に支払義務が発生する点には注意が必要です。例えば信用状の条件として記載された原産地証明が添付されていない場合でも支払いが必要となります。
また、S/Gは船会社に差し入れる保証なので、輸入者から船会社へ事前にご相談いただくことも必要です。保証書の内容や、また最終的にS/Gを船会社から返却いただくといった事務フローについて調整が必要となります。
上旬は2017年以来約4年ぶりに34バーツ台に乗るかという動きがあったが、トライに失敗。その反動でバーツ高に振れやすくなったものの、原油価格上昇によるタイの交易条件悪化や米金利上昇にサポートされて33バーツ後半で底堅く推移。中旬は11月からの外国人観光客受け入れ決定が好感され、ドルへの仕掛け売りも相まってドルバーツは下落。中国恒大集団のデフォルトリスクが懸念される中でも33バーツ前半をレンジの中心帯として推移した。下旬は11月FOMC(連邦公開市場委員会)の金融政策に関する発言を禁ずるブラックアウト期間を前にパウエル議長がテーパリング(量的緩和の縮小)の早期開始を正当化する発言をしたが、ドルバーツの上昇は限定的。祝日を挟んで取引量も少ない中、安値トライの動きで一時33バーツ近辺へ。月末に向けてドルが買い戻され、33バーツ前半で推移。
FOMCでのテーパリング開始決定は既に織り込まれてると考えられ、相場への影響は限定的か。むしろ、11月から46ヵ国・地域を対象に外国人観光客の入国制限緩和を開始したことで当面はセンチメント改善にサポートされ、ドルバーツは下値を探る動きがメインと予想。
10月は極めて狭いレンジでの推移となった。月初、22,750台でオープンしたUSD/VNDは、月を通じて終始22,750~22,760台で動意の薄い展開。10月中旬以降、為替相場全体でUSD買い優勢となるも、ベトナムへの資金流入フローに相殺される形でUSD/VNDへの影響は限定的。結局、同レベルでのクローズとなった。
11月もレンジ相場の継続を予想する。為替市場全体では、米国のテーパリングおよび早期利上げ期待によりUSD買い優勢となる可能性があるものの、ベトナムでは新型コロナウイルスの感染状況の落ち着きを背景に、今後は貿易収支の改善や資金流入の増加が見込まれることから、一方的なUSD高という展開は想定し難い。引き続き、中銀介入レベルの22,750近辺を中心に、狭いレンジでの推移となりそう。
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みずほ銀行メコン5課
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