ArayZ No.120 2021年12月発行変わる日タイ関係-タイ人における日本の存在とは
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カテゴリー: ビジネス・経済, ASEAN・中国・インド
公開日 2021.12.09
みずほ銀行バンコック支店メコン5課が発行する企業向け会報誌 『Mekong 5 Journal』よりメコン川周辺国の最新情報を一部抜粋して紹介
今別府 菜央 | 国際戦略情報部 グローバルアドバイザリー第二チーム
目次
メコン5地域においては、タイの首都圏を除き鉄道網が未整備なエリアが大半であり、自動車が主要な移動手段となっている。一方で、交通事故の多発等が社会問題化しており、解決すべき課題として近年クローズアップされている(図表1)。
メコン5地域における自動車の総数は、登録台数ベースで見ても増加基調が継続している。交通事故等のリスク増加も懸念されることを踏まえれば、交通安全対策、道路環境の改善、交通インフラ整備等を通じた対策や環境強化をハード、ソフト両面で急いで取り組む必要がある。
本稿では交通事故に焦点を当て、メコン5ヵ国における交通環境を俯瞰するとともに、それに関連する日系企業のビジネスチャンスについても考えてみたい。
10万人当たりの交通事故死亡者数は2018年時点で32.7人であり、世界ワースト9位となっている。ASEANにおいて、登録済自動車台数は約4100万台と最多であることもその背景にあるが、改善に向けて日本は官民ともに協力を続けている。
具体的には、20年4月~23年4月を期間とした「交通安全に関する組織能力および実施能力向上プロジェクト」がJICAにより進められている。タイでは関係省庁、警察、病院・保険会社等で交通事故データが共有されず、交通事故の実態や事故原因が把握されていないという課題がある。
本プロジェクトの推進により、「パイロット地域において、交通事故データの信頼性及び利用状況の向上、交通事故分析・対策立案の精緻化、交通安全行動・文化の普及、運転免許制度の改善、商用車両運行管理の統制強化を実施すること、及び、運輸省および関係機関の道路交通安全に関する組織能力および実施能力の向上を図り、交通環境を改善することで交通事故死者数の減少に寄与すること」が計画されている。
民間の協力事例として、本田技研工業とヤマハ発動機は、タイ事故研究センターと共同で1000件の交通事故を分析した。それによれば事故主因は運転手の認知ミスであり、交通死亡事故は自動車の進路変更が主な原因との結論であった。この調査結果を受けて、同センターは、二輪・四輪車の運転者が衝突を回避できるような認知・判断・操作技術を高めるための安全運転コースの見直し、二輪車の免許証の取得プロセスや実技試験の見直し等、6項目の改善案を提言した。
ベトナムにおいて国民の主流となる交通手段は二輪車であり、特に直近20年間で経済水準の向上により購入が容易となってきたことなどから二輪車市場は急速に発展してきた。
交通事故の状況を見ると、依然交通事故は先進国と比較して多いものの、12年から20年にかけて交通事故件数は54.2%、死亡者数は67.7%の減少となっている。また事故による負傷者数も29.0%減と、着実に改善が進んでいる。
20年初頭には飲酒運転等への罰則強化の対象拡大を実施し、加えて運転免許制度の刷新についても議論が進められている。
交通関連において足許の課題の一つとして指摘されているものは、二輪車乗車時に使用するヘルメットの問題がある。10年以上前に乗車時のヘルメット着用が義務化されて以降、運転者のヘルメット着用は習慣化されたものの、規格を満たさないヘルメットの使用や同乗させた子供が非着用であることが多く、事故発生時の死亡や重傷に繋がっている。最近の調査では、使用されているヘルメットの約9割が品質基準を満たしていないことが判明した。
ホンダベトナムは18年より、小学1年生にヘルメットを寄贈するプログラムを実施している。ベトナムでは子供が二輪車で送迎される機会が多く、子供の事故被害の減少、ヘルメット着用の習慣化を企図した取り組みである。
19年の各種報道によると、ミャンマーにおける民間企業の交通安全に対する意識が徐々に高まりつつある模様である。日本の自動車関連企業のみならず、飲酒運転撲滅を掲げる地場アルコール飲料大手、自動車保険を販売する損害保険会社等、交通安全啓蒙のスポンサー数は過去最多となっていたことからも意識の改善が垣間見える。
ミャンマー政府は、20年に「Road Safety and Motor Vehicle Management Law」を発効した。これには安全ヘルメット着用義務、車両登録、運転免許の発行等の交通安全に向けた規制が盛り込まれている。 また、自動車による大気汚染、交通安全に関するファンドの設立にも言及されており、環境や資金面での援助等も含めた交通インフラ全体の底上げも意識しているものと考えられる。
現状は二輪車を中心としているが、18年~19年に実施された現地のアンケート調査によると、二輪車の事故の主な原因の上位はスピード違反、危険な追い越し、通行権の過失という順であった。
交通事故の削減に向け、20年5月1日より交通違反の罰金が大幅に引き上げられた。初日からの三日間で、全国に警察官3000人以上を配備し大々的な取り締まりが行われ、二輪車のヘルメット未着用、車体の整備不備、反対車線の走行、信号無視、スピード違反、四輪車でのシートベルト未着用、運転免許証不携帯、スピード違反、過積載、信号無視等、8400台以上の自動車に交通違反の罰金を科した。
これはまだ、交通ルール順守の国民意識が低いことを伺わせる結果であり、今後の改善余地が大きいものと思われる。
ラオスは、メコン5地域の中では最も交通事故による人口当たり死亡者数が少ないが、自動車普及度合いが最も低いことが背景にあると思われる。
ただ、ラオスにおいても年々自動車の登録台数は増加基調が続いており、近時では首都における路上駐車の増加が課題として指摘されている。駐車場の未整備、交通マナーの浸透不足等が主因と考えられるが、これによる渋滞の発生、道幅が狭い場所では路上駐車車両への衝突事故に繋がる可能性もあり、解消に向けた検討を現地政府も進めている。
また交通インフラは全体的に未整備な状況であり、改善すべき課題も多く抱えている。このような状況に着目し、21年6月にさくらインターネットと社会システム総合研究所が国際交通救急研究会JAGREを通じて、ラオスにおける救急医療のDXを支援実施する決定を発表した。
首都ビエンチャンでは、救急活動の内容や交通事故情報の記録が電子化されていない。加えて救急活動を統括する司令センターがないため、事故現場に複数の救急車が駆けつけるという状況も発生している。
この救急医療サービス支援システムにより、救急車の位置情報を管理、受傷者の状況や交通事故情報を記録し、その記録データを救急車から病院へ事前伝送できるようになる。またデータを蓄積し、教育・道路整備・交通違反の取り締まりに反映させ、交通事故の未然の防止に活用することも可能になる。
33バーツ前半で迎え、FRBがテーパリング(量的緩和の縮小)開始を決定するも、反応は穏やか。その後も良好な米経済指標が発表されたが、米金利上昇の一服感が漂う中、ドルバーツは節目の33バーツを割り込んだ。中旬は予想外に強い米10月CPI(消費者物価指数)が米金利と共に為替を33バーツ近く押し上げたが、予想比改善したタイの第3四半期GDPで成長率見通しが引き上げられると、32バーツ半ばへ下落。しかし、19日には感染拡大が深刻な欧州でオーストリアの再ロックダウン決定がセンチメントを悪化させ、32バーツ後半へ反発。下旬にはパウエル議長の再任が決まり、金融引締め前倒しが意識される中、再び33バーツ台に。南アフリカで新たなコロナ変異種が確認されたことも嫌気されて、月末にかけ33バーツ後半へと上伸した。
米金融政策が市場の思惑に押され、インフレ対応のために金融引締めに動くのではないかという見方が強く、ドル高地合いの継続を予想。また、年末に向けてドル需要が上昇していることが市場の取引からも確認されており、33バーツ前半を下限として底堅い展開となるか。
11月はVND高方向に推移。月初、22,750近辺でオープンしたUSD/VNDは、4日にベトナム中銀が介入水準の変更を発表。介入水準を22,750から22,650に変更したことで、実勢相場もVND高方向に追従し11月中旬には一時22,635近辺までVND高が進行。その後、パウエルFRB議長の再任や米国の早期利上げ期待により為替市場全体でUSD買いが優勢になる展開となると、USD/VND相場も22,700手前まで押し上げられ、同水準でクローズとなった。
12月は小動きながらもUSD高VND安方向への推移を警戒したい。10月以降のロックダウン解除による貿易収支の改善期待や、他国からの継続的な資金流入などのVND買い要因はあるものの、足許はインフレ圧力による米国の早期利上げ期待を背景にUSD買いが継続する可能性が高く、USD/VNDは22,700台まで押し戻される展開もあるだろう。
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みずほ銀行メコン5課
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