ArayZ No.134 2023年2月発行タイ鉄道 - 新線建設がもたらす国家繁栄と普遍社会
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カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 特集
公開日 2023.02.10
目次
2022年2月の新型コロナウイルス第4波により感染者が急増したが、3月以降は行動制限措置が緩和されたほか、約2年ぶりに国際旅客便の再開、入国時の隔離条件や検疫体制も緩和。22年12月現在において、日本人の入国規制について通常通りビザの取得は必要であるが、渡航目的による制限はなく、現地医療保険の購入とワクチン接種証明書があれば出発前検査は不要であり、入国隔離規制も不要となっている。ヤンゴン市内の様子を見ても、車の渋滞は増え、週末のショッピングモールは混雑している。市内の人流は徐々にではあるが回復しつつある。
政治・社会の不安定化に伴う経済活動の停滞や新型コロナ感染拡大の影響も相俟って、2021年度のGDP成長率は▲18.0%(世界銀行)と大きく落ち込んでいたが、22年度は3.0%(世界銀行)と若干回復する見込である。新型コロナの落ち着きによる主要都市の経済活動正常化や一部製造業や建設業で業績が上向いていることを要因として挙げているが、後述の新外貨兌換規制や通貨安に伴うインフレの影響もあり、経済活動は新型コロナ前の水準までは戻っていない。また、22年10月FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)は同国をブラックリスト(FATF勧告19の1「強化された顧客管理」の適用)に指定。今回の勧告は外貨取引を制限するものではないものの、FATF加盟国・金融機関によるミャンマー取引の監視強化、経済制裁などに影響が出る可能性もあり今後の動向には注意が必要である。
2022年4月3日、ミャンマー中央銀行(Central Bank of Myanmar、以下CBM)は、外貨のミャンマーチャット(以下、MMK)への転換に関する告示及び通達を発出し外国為替管理規制を大幅に強化。主な規制内容は下記のとおり。
① ミャンマー居住者が国外との取引で獲得した外貨を1営業日以内にMMKへ強制兌換
② 当該外貨からMMKへの転換レートをCBMが規定(実質固定相場)
③ 国外への外貨送金において当局の事前承認が必要
発出当初は対象企業の範囲や諸手続が不透明であったが、ミャンマー投資委員会(Myanmar Investment Committee)で許可を得て操業中の外国直接投資事業や経済特区(Special Economic Zone)進出企業などが本規制の免除対象となり、承認申請も一部取引は承認が下りている状況。ただし、輸入決済に必要な外貨を確保するのは非常に困難となっており、企業活動の制約となっている。
2021年2月の政変以降、現政権と対立勢力との膠着状態が継続。22年11月のASEAN首脳会議においても情勢打開に向けた策を見出せず、暴力の即時停止など5項目の履行を求める従来路線が維持された。23年8月の総選挙が予定通り実施されるのか、仮に実施される場合でも、その結果を国際社会が受け入れるかについては現時点において不透明さが残る。
経済動向については、縫製業の稼動など一部分野では緩やかな回復基調にあるが、海外からの支援や投資の停滞に加えて、外貨不足等の影響もあり回復は限定的となる見通し。 足もと、既進出の日系各社においては、様子見の姿勢を継続している企業が大部分と見られるが、政治対立の膠着や経済停滞が長期化する場合においては、経営判断を要する1年となるか。
政府は自国内の高いワクチン接種率や観光収入や関連産業への経済影響も勘案し、周辺国の中でも比較的早い2021年11月よりワクチン接種完了者の検疫隔離期間を廃止するなどウィズコロナへの舵を切った。22年3月には入国者のPCR陰性証明書提示が廃止され、以前に実施されていたワクチン接種完了者の検疫隔離撤廃と合わせて入国規制が事実上解除された。期待された観光客数は22年1〜10月で前年同期比約10倍となる157万人に上ったが、過去最高だった2019年に比べると3割程度の水準にしかならない。タイ・ベトナム・ラオスといった周辺国からの観光客が6割を占めた一方で、2019年に全体の36%を占めた中国人観光客はわずか5%弱に留まり、今後の本格的な客足回復の要因として期待される。
2022年は昨年から続く縫製品などの軽工業品輸出の回復に加えて観光業の復興により5.1%のGDP成長率が見込まれている。輸出入の数値からは、中国からの輸入および米国向けの輸出の増加が目立っており、表面化はしていないものの米中貿易摩擦の影響でカンボジアを経由する商流が新たに発生している可能性がある。
カンボジアは経済成長の方向性として、ハイテク産業およびR&D、グローバルサプライチェーンに貢献する産業など高付加価値産業の投資誘致・技術移転等を加速すべく2021年に新投資法を制定した。ソフト面の取組みと同時並行で、高速道路・コンテナターミナル拡張・新空港建設等ハード面の改善にも取り組んでおり、22年10月には首都プノンペンと深海港を有するシアヌークビルを結ぶ高速道路が開通した。更に12月にはプノンペンとベトナムとの国境に位置するバベットを結ぶ高速道路の建設にかかる契約調印準備が整ったと報じられており、成長著しいホーチミンへと繋がる南部経済回廊の物流改善が期待されている。
2023年は5年ぶりの総選挙が7月に実施される。前回18年の総選挙前には最大野党が最高裁より解党を命じられるなど、その後の外交・経済に影響を与える出来事が起きていたが、今回はそういったインパクトのある出来事は想定されていない。ただ選挙前の常として官・民ともに23年上期はそれほど活発な活動が起きないと予想される。なお、総選挙の前哨戦となる22年6月の地方評議会選挙ではフン・セン首相率いる与党が有効投票数の74%の支持を得ていた。
経済成長という観点では、中国からの観光客の回復等を主因として前年を上回る6.6%のGDP成長率が計画されている。一方で高度にドル化された小国経済の特徴として、米国と無関係に自国経済状況に基づいた金融政策をとることができないことから、特に米国経済の影響を受けやすい点はリスク認識しておく必要がある。例えばUSドルを中心とした金利の上昇により欧米景気が冷え込み、主力の縫製業輸出が下振れた場合、中央銀行が金利を適正化できずに国内景気の悪化を長期化させてしまう懸念がある。
後発開発途上国指定の解除が近づいており、縫製業や観光業といった特定産業への依存度をなるべく軽減し、より付加価値の高い産業を育成することが求められている。新投資法や物流インフラの改善が多角化された安定的な経済発展を下支えすることに期待したい。
自国の医療水準を念頭に慎重な姿勢を継続していたが、1月より観光客の入国を段階的に許容し、周辺国の動きに呼応する形で5月に民意を確かめたうえで全面開国(入国前検査廃止)に至った。あわせて、外貨獲得手段として重要な存在である周辺国への出稼ぎ労働者も越境を再開した。
2022年のGDP成長率は2.5%と推計されている。アフターコロナに舵を切るなか、21年末に開通した高速鉄道「中老鉄路」を活用した運輸および観光がプラス材料の一方、急激なインフレと通貨安と財政不安が民間投資の足を引っ張った様相。ラオスは日用品など幅広く輸入品に依存しており、ロシアによるウクライナ侵攻後急激なインフレに襲われ、特に5月に起きたガソリン不足は大きな混乱をもたらしたうえ、その後も月を追うごとにインフレ率は上昇していき11月には前年同月比38%を記録した。また、同時に地場通貨LAKはUSDに対して年初来36%減価しており、インフラ投資のための外貨建て対外債務負担が強く意識されており、格付け機関フィッチは8月に1ノッチ引き下げた(その後商業上の理由で格付け中止)。
陸封国であるラオスにとって、物流面の資本不足はこれまでの課題であったが2021年12月に念願の中老鉄路が開通した。22年は旅客・貨物ともに本格稼働の年となり、特に旅客の人気は22年末になっても衰えておらず依然としてチケットの入手が困難な状況にある。貨物に関しては、ビエンチャン・ロジスティクスパークにてタイ鉄道との積み替えが可能となり、順調に利便性を改善させている。
GDP成長率は3.1%(IMF)と予想されている。プラス材料としては、2022年に段階的に改善してきた観光産業の通年寄与に加え周辺国への売電事業の拡大。一方で25年までは既存債務の返済負担が過大であり、最悪のケースとして22年まで水面下でなされたであろう二国間債務のリストラクチャリングが不調に終わった場合はデフォルトになる可能性もゼロではない。さまざまな国際機関が提言しているように、トップラインの伸長に加えて、徴税効率の改善等を通じた歳入の底上げや公共投資のガバナンスの向上を通じたコスト管理の強化による財政機能の安定化を期待したい。
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みずほ銀行メコン5課
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