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公開日 2026.05.29
タイ政府が進める東部3県(チョンブリ、ラヨーン、チャチュンサオ)の経済特区(SEZ)「東部経済回廊(EEC)」プロジェクトで、税制の恩典などを付与して投資誘致を担うのがタイ投資委員会(BOI)だ。BOIは、タイ全般への投資誘致を図っているが、EECをどのように位置付けているのか。近年地政学的な影響の拡大と産業構造の変化が起きる中、BOIのナリット長官に投資誘致戦略とEECの役割について聞いた。

――BOIの投資誘致戦略の中で、EECはどのように位置付けられているのか。
EECは、高付加価値産業への転換を進めるタイにとって中核拠点だ。BOIが承認した投資案件(金額ベース)で半数以上が集中しており、国家の投資戦略においても重要な位置を占める。従来の自動車や電機、電子、石油化学産業に加え、電気自動車(EV)や半導体、次世代電子機器、バッテリー、クリーンエネルギー、デジタル、人工知能(AI)といった分野を軸とした産業構造の転換をけん引する役割が期待されている。
――投資の半数超がEECに集中しているが、今後もこの傾向は続くのか。
EECは今後も主要な投資先であり続けるとみている。チョンブリ、ラヨーン、チャチュンサオの3県には、輸送網や深海港、国際空港、工業団地などのインフラが整い、電力や工業用水の供給も安定している。特に国内約70カ所ある工業団地の半数が集積している。国立ブラパ大学(チョンブリ県)や職業訓練機関が人材育成を支えている点も強みだ。

――3空港を結ぶ高速鉄道などEECのインフラプロジェクトへの評価は。
鉄道システムは国家インフラの中核で、地域経済への波及効果が大きい。産業分野にとどまらず、観光の活性化や生活の質の向上、沿線開発の促進につながる。スマートシティーの基盤としても重要な役割を果たす。
――EEC以外でタイ国内の有望な投資先は。
EECに加え、バンコクおよび周辺地域にも約25%が集中している。残りは北部や東北部、南部に分散している。高付加価値産業では、北部のランプン県やチェンマイ県が電子産業の集積地として有望だ。
――今年のタイの国内総生産(GDP)成長率は前年を下回ると予測されている。政府は4年以内の3%成長を目標としている。BOIは現在の経済状況をどう評価しているか。
投資は拡大している。2025年の投資申請件数は3,000件を超え、過去最高となった。申請額は1.8兆バーツ(約8兆8,200億円)を上回り、前年比67%増と大きく伸びた。海外直接投資(FDI)も66%増加した。
地政学リスクやAIの進展、脱炭素といった世界的な潮流の中で、インフラや人材、供給網、自由貿易協定(FTA)の充実を背景にタイの投資競争力は維持されている。

中東危機を機会に、持続性も重視
――中東情勢の悪化はタイへの投資誘致に影響しているか。
エネルギーや物流コストの上昇、一部原材料の供給不安などのリスク要因はある。だが、投資資金は安定した地域と評価される東南アジアへと流れており、タイにとっては投資誘致の機会でもある。
――ではBOIが重点的に誘致していく産業分野は。
5つの戦略クラスターを設定している。具体的には◇先端農業やフードテック、クリーンエネルギー、医療・ウェルネスなどを含むBCG(バイオ・循環型・グリーン)経済◇EV・電池◇半導体・電子産業◇ヒト型ロボット(ヒューマノイド)などの応用を含むデジタル技術とAI◇地域統括拠点・物流拠点――だ。

――30年に向けた投資・産業構造のビジョンは。
競争力の維持に向け、自動化やデジタル技術、ロボットの導入を通じた産業の高度化を進める。同時に、持続可能性への対応も加速させる。脱炭素化は世界的な大きな潮流であり、もはや選択肢ではなく必須の要件だ。クリーンエネルギーや持続可能な素材の活用などを通じて、産業構造の転換を図る。
――一方で、タイは日本と同様に高齢化が進んでいく。
われわれはタイが高齢化社会に突入していることを認識している。労働力の制約が強まる中、生産性向上には自動化やデジタル化が不可欠だ。高付加価値産業への転換と持続可能性への対応を両立させていく。
※次回の「AI・電動車の受け皿を強化/BOIナリット長官に聞く(下)」に続く

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