THAIBIZ No.155 2024年11月発行タイの明日を変える!イノベーター大特集
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カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 食品・小売・サービス
公開日 2024.11.11
前編では、東南アジア小売市場において、ECシフトが急速に進んできた点について触れた。東南アジア消費者にとって既に一般的な購買様式に組み込まれたECの市場の半分は中国系プラットフォームであるLazada、Shopee、そしてTikTok Shopが抑えていることを大きな脅威だと述べてきた。
中国系ECプラットフォームの侵攻は、中国FMCG(Faster Moving Consumer Goods:日用消費財)にとって東南アジアでの拡販を実現するうえでの大きなアドバンテージになる。中国FMCGは、LazadaやShopeeといった中国系ECプラットフォームを介し、越境ECとして東南アジアへと流入していくからだ。
では、これからは何が起こるのか。次の段階でキーとなってくるのは中国系OTT(Over The Top:Netflix等の動画コンテンツ配信プラットフォーム)であると考える。
前編でも述べた通り、東南アジア消費者はオンラインへの依存度が高い。彼らは、一日の大半をスマホを通じてインターネットにアクセスしている。その時間の中で、OTTにて動画視聴する平均時間も82分と高い。このようなOTTヘビーユーザーである東南アジア消費者の中で、既に中国勢のプレゼンスが高まってきているのだ。
東南アジア全体で見れば、Viu、WeTV、iQIYIなどの中国系OTT(Viuは香港系)のシェアは25%近くもある。タイを含め国によっては中国系OTTが40%ものシェアを占めている。東南アジア消費者はこれら中国系OTTを通じて、中国ドラマなどの中国コンテンツを視聴するようになってきている。
現在、東南アジアで視聴されているコンテンツの国別構成比で中国は9%。まだそこまで高くはないものの、シェア10%の日本コンテンツが追い抜かれるのは間もなくだろう。日本人にとって、東南アジアの多くは親日国であり、アニメなどの日本コンテンツは愛されているという認識がある。もちろん、それに間違いはないだろう。しかし、客観的に見れば中国コンテンツと変わらない位置付けなのだ(図表1)。
中国が、中国コンテンツの普及を通じて目指すところは、韓国の国策のようにソフトパワーによる国としてのブランド向上ではないか。もちろん、容易なことではない。しかし、仮にそれが実現するのであれば脅威である。
前述の通り、中国系ECプラットフォームによって、東南アジアにおける流通インフラは既に抑えられている。そこに「中国」としての国のブランド力が高まっていけば、中国FMCGのシェアが東南アジアでさらに高まっていくことは必然だろう。実際、外務省の対日世論調査では、東南アジアから見た時の「信頼できる国」として中国の割合が急速に高まっている(図表2)。
東南アジアで生活する中でも、現地消費者にとっての中国のイメージが、もはや「安かろう悪かろう」ではないと感じる場面は多い。例えば、自動車はその典型例であるが、特に若い東南アジア消費者の中では、中国EVのイメージが「先進的」や「クール」と語られることも多く、品質面でのネガティブな印象も薄れている。50%に至る「EC市場の占有」と、国として「ブランド力の向上」の二つの柱によって、中国FMCGが東南アジア市場を席捲する日も遠くないのではないだろうか(図表3)。
その中で、日系FMCGが東南アジア市場でどう生き残っていくべきか─戦略の再検討は、喫緊の課題として取り組むべきだ。
THAIBIZ No.155 2024年11月発行タイの明日を変える!イノベーター大特集
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Roland Berger Co., Ltd.
Principal Head of Asia Japan Desk
下村 健一 氏
一橋大学卒業後、米国系コンサルティングファーム等を経て、現職。プリンシパル兼アジアジャパンデスク統括責任者として、アジア全域で消費財、小売・流通、自動車、商社、PEファンド等を中心にグローバル戦略、ポートフォリオ戦略、M&A、デジタライゼーション、事業再生等、幅広いテーマでのクライアント支援に従事している。
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Senior Project Manager, Asia Japan Desk
橋本 修平 氏
京都大学大学院工学研究科卒業後、ITベンチャーを経て、ローランド・ベルガーに参画。その後、米系コンサルティングファームを経て復職。自動車・モビリティ、消費財・小売を中心とする幅広いクライアントにおいて、グローバル戦略、新規事業、アライアンス、DX等の戦略立案・実行に関するプロジェクト経験を多数有する。
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ローランド・ベルガーは戦略コンサルティング・ファームの中で唯一の欧州出自。
□ 自動車、消費財、小売等の業界に強み
□ 日系企業支援を専門とする「ジャパンデスク」も有
□ アジア全域での戦略策定・実行支援をサポート
17th Floor, Sathorn Square Office Tower, 98 North Sathorn Road, Silom,
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