商用ビザ免除制度について

THAIBIZ No.148 2024年4月発行

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商用ビザ免除制度について

公開日 2024.04.10

商用ビザ免除制度について:長谷場氏コラム

タイで就労するにはビザと就労許可書(WP)が必須となる。しかし、観光で入国する際にはビザなしで30 日間の滞在が認められる。ビジネス目的の短期出張も一定条件を満たせばビザ等が不要とされている。今回、日本人向けの商用ビザの免除という時限措置がタイ政府から発表された 。背景には何があったのか解説する。

昨年末に「2024年1月1日から2026年末までの3年間の時限措置で商用ビザが日本人向けに免除される」とのニュースが流れた。その後、2023年12月29日に在日タイ大使館ウェブサイトに手続きやルールの詳細が掲載された。

実は、この措置が必要となった背景には長年、私が関わってきた問題があった。少し解説すると、タイの雇用局は2014年7月等の布告で「視察や商談、展示会見学、自社の取締役会への参加などの活動は『就労』に該当しない」としている。要するに「これらに該当する活動の範囲内であれば就労許可書(WP)が不要」と明示している。

一方「ビザは」というとタイの入国管理局は日本側からの確認に対し「雇用局が就労に該当しない、としている活動であれば商用ビザは不要」という回答だった。これは上記の雇用局の布告以降、一貫して変わっていなかった。従ってタイ側で確認する限り「商談や面談であればビザもWPも不要」となる。

しかし在日タイ大使館のウェブサイトにはノンイミグラント-B(短期商用)の入国目的に「短期間の会合や商談もしくは投資活動、業務を目的とした短期出張」との記載がある。このため「商談等での出張にビザが必要か不要か」という点について混乱が起きていた。雇用局は労働省、入国管理局は内務省、大使館は外務省という省庁の縦割りの問題でもあるが、出張者を送り出す日本企業にとっては不安でしかない。結局、一番の安全策と考えてビザを取得する企業もあれば、ノービザで入国するケースもあったと理解している。

今回、多くの関係者の努力があり特例・時限措置として「日本人に対する30日以内滞在の商用ビザ免除」という制度ができたと承知している。在日タイ大使館のウェブサイトには必要書類等が掲載されているので、ぜひご覧いただきたい。

しかし、これらの書類を入国時に提示しても「担当官の判断で適用」と書かれていることに注意が必要だ。担当官次第ということに不安を感じるが、逆の立場で考えると当然ともいえる。多くの日本人も変な外国人に入ってきて欲しくない、と思っているだろう。従って、制度に沿った書類を有していても入国を許可されることが当然ではない。入国管理官は入国を許可しない権限を有しており、傲慢な態度で担当官の心証を悪くすると入国が認められない可能性がある、これは万国共通だろう。「他人の国に入らせていただく」という気持ちを持つことが大切だと思う。

雇用局が就労ではないとしている活動

  • 会議・セミナーの「参加者」の立場で、当該事業の実現に関与することなく入国する者(会議・セミナーの主催者の従業員や請負人は就労に該当)
  • 企業の「視察・商談担当者」の立場で入国する者(企業視察・商談をセッティングする者の従業員または請負人は就労に該当)
  • 特別・学術講演の「聴講者」の立場で入国する者
  • 技術研修・セミナーにおける講義の「聴講者」の立場で入国する者
  • 展覧会・展示会の「見学者」の立場で入国する者
  • 展示会における「商品購買者」の立場で入国する者(展示会設営者の従業員または請負人は就労に該当)
  • 自社の取締役会への参加:2015年3月6日付の雇用局布告「2008年外国人労働法に基づく就労に該当しない活動」により追加

■ 2024年1月~2024年2月の経済・政治関連トピック

国家経済社会開発委員会(NESDC)が2月19日に発表した速報値によると、2023年通年の経済成長率は前年比+1.9%で2022年の同+2.6%から減速。観光客数の回復がプラス要因だったが、輸出不振が響いた。1人当たりのGDPは7,332米ドルと、前年の7,094米ドルから伸びた。NESDCは2024年について前年比+2.7~+3.7%と予測したが、今発表で+2.2~3.2%に下方修正。また、タイ国家統計局によると、2023年第4四半期の失業率は0.8%で、2015年第4四半期以来8年ぶりの低さとなった。15歳以上の労働人口4,067万人のうち最多業種は商業・サービスで、全体の47.3%の1,925万人。

出所:SBCS作成。(*)タイ中央銀行より引用

経済

エネルギー省の発表によると、2023年のタイの二酸化炭素(CO2)排出量は前年比▲2.4%の2億4,400万トン。タイ環境研究所(TEI)のウィジャイ氏はこの結果を受け、工業部門で新技術を導入していることが要因の一つとの見解を示した。そして、重要なことはどの燃料を使うかであり、例えEVが普及しても、その電力が石炭に由来していればCO2は増えると指摘。2023年の燃料別の排出量は石油が1億500万トン(前年比▲1.1%)、石炭が5,900万トン(同▲15%)であり、石炭の使用量が大きく減っている。同氏はまた、タイは地球温暖化の影響を受けやすい国の上位10位に入るとも指摘。タイ政府は2050年までにカーボンニュートラル、2060年までにネットゼロを目指す。

・・・・

タイ国家電気自動車政策委員会(EV委員会)は2月21日、企業が商用として使用する大型トラックやバスを対象に、バッテリー式電気自動車(BEV)に移行した場合、奨励金を付与すること、またEVバッテリーセル製造業者を対象に助成金を付与することを承認した。


政治

2月26日の観光・スポーツ省の発表によると、2024年1月の訪タイ外国人旅行者は前年同月比+41.5%の303.5万人。国別にみると、中国が同+453.7%の50.9万人と最多で、マレーシアの同+11.4%の32.2万人、韓国の同+31.3%の22.3万人と続いた。日本は12位で、同+60.2%の7.4万人。また、観光・スポーツ相のスダワン氏は、今年の訪タイインド人旅行者数の目標を200万人に引き上げるようタイ国政府観光庁(TAT)に通知。

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2月15日に公示された上院議員選出に関する官報によると、国家平和秩序評議会(NCPO)が任命した250人の上院議員の任期が2024年5月に満了し、同月に選挙が行われる予定。また、2017年憲法の規定により上院議員の定数は現在の250人から200人に削減される。選挙では20の専門分野からそれぞれ10人が選出される。出馬条件は40歳以上で、10年以上専門分野の職業に従事していた人。最初は市町村レベルの選挙を実施し、その後県レベル、全国レベルと候補者が絞られていく仕組み。各段階で、候補者が互いに投票し合う方式だ。最終的には専門分野ごとに上位10人が選ばれ、合計200人を構成する。

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SBCS Co., Ltd.
Executive Vice President and Advisor

長谷場 純一郎 氏

奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、2010年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。2012年から2018年までジェトロ・バンコク勤務。2019年5月SBCS入社。2023年4月より現職。

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SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。

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