カテゴリー: 対談・インタビュー, 特集, バイオ・BCG・農業
連載: タイ企業経営者インタビュー
公開日 2023.07.18
タイ証券取引所(SET)上場のサコン・エナジー(SKE)は自動車用天然ガス燃料(NGV)事業で創業後、現在はバイオマス発電やごみ固形燃料(RDF)製造などエネルギー・環境分野で事業の多様化を進めている。欧米や中国主導の世界的な電気自動車(EV)シフトがタイにも押し寄せつつあることに加え、タイ政府が、バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済モデルを推進していることも背景だ。
同社のチャクラポン・スメートチョティメタ社長 (Jakkraphong Sumethchotimeth)に話を聞いた。
(インタビューは5月18日、聞き手:mediator ガンタトーンCEOとTJRI編集部)
目次
チャクラポン社長:サコン・エナジー(SKE)の事業は主に3つある。①トラック向けの自動車用天然ガス(NGV)の充填サービス ②バイオマス発電所 ③廃棄物(ごみ)固形燃料(RDF)の製造だ。2009年に会社を設立し、最初の事業が国営タイ石油会社(PTT)のガス輸送トラックへのNGV充填サービスだった。現在はパトゥムタニ県とサラブリ県に充填ステーションがある。
2017年にタイ証券取引所(SET)に上場し、調達した資金で北部プレー県に9.9メガワット(MW)のバイオマス発電所(メークラティン発電所)を建設した。その後、石炭の代替資源となるごみ固形燃料(RDF)事業に機会を見出し、セメント工場を主な顧客に市場に参入した。RDFは子会社の「N15 テクノロジー」が事業をしている。2014年にチョンブリ県のアマタナコン工業団地に年5万3000トンの製造能力を持つ工場を建設した。さらに、今年1月には中部サラブリ県で年30万トンの製造能力を持つ工場が完成した。
チャクラポン社長:RDFは環境にやさしい燃料で、熱エネルギーが得られ、発電の原料となる。その製造工程では、有害ではない可燃ごみを原料とし、ごみを減量化、湿気も減らし、成分調整などをした上でRDFを製造する。ごみを燃料として再利用するためごみの量を減らし、適正なごみの燃焼処理により、有害物質の発生も抑えることができる。
ごみの収集では、①企業が処理したいごみをSKEの工場まで輸送する ②自社で近隣のごみ処理場から購入する ③一般個人にわれわれの環境プロジェクトに参加してもらうため、ごみをSKEに郵送してもらう―という3つの方法がある。あらゆるルートからのごみを歓迎している。チョンブリ県の工場では、近隣工場に出向いて、ごみを回収するサービスも行っている。これらの産業廃棄物は通常、処理コストがかかるため、工場や周辺の環境にとってメリットは大きい。
チャクラポン社長:RDFは需要の増加が見込まれ、将来的な成長の可能性は高い。特にセメント工場は石炭の利用を従来の20%減にする目標を設定していたが、現状では10%減しか削減できない。削減の代替としてRDFを利用できると考えている。
また、この分野で事業を展開している会社はまだ少ない。製造能力の小さな会社は多くあるが、大規模に製造している会社は10社だけだ。われわれがごみを受け入れたり、購入したりしているが、十分ではない。そこで、移動式シュレッダーを購入し、ごみ処理場などの現場でごみを細断できるようにするための投資も行っている。バンコクでもさまざまな機関と協力して1日あたり約40トンのごみを集めている。
チャクラポン社長:NGVは便利で、さまざまな使い方がある。しかし、現在は世界が電気自動車(EV)の方向に向かっているのは明らかで、NGVの利用は減少傾向にあり、最終的にはなくなると予想している。当社とPTTとの契約も残り4年で、その後の契約延長はない見通しだ。
チャクラポン社長:タイは農業国なので、バイオマス発電所の持続的成長は可能だ。しかし、再生可能エネルギーの利用はコストが高い。このため、政府は化石燃料と再生可能エネルギーのバランスを取る必要がある。個人的には両者は両立可能だと思う。一方、バイオマス発電所の発展では技術的問題より、農業廃棄物という原料の確保と、コスト管理が重要になってくる。
チャクラポン社長:タイの電気料金が急騰した原因の1つは長期電源開発(PDP)だ。計画は経済成長予測に基づいて作られ、国のエネルギー消費予測と安全保障につながる。しかし、タイの国内総生産(GDP)は予想通りに伸びなかったため、エネルギー消費量予測とのギャップができてしまった。
現在のタイの発電容量は約6万MWに達したのに対し、ピーク時の電力消費量は全国で約3万1000MWにとどまっている。このため、相対的にコストが高まり、電気料金も上昇してしまった。解決策としては、PDPを見直す必要があり、これ以上発電能力を増やさないことだ。経済成長率に応じて計画を修正すれば、国のコストを削減できる。
チャクラポン社長:BCG経済モデルは良い政策だが、実現はとても難しい。温室効果ガス排出のネットゼロも目的であるため、ほとんどの企業が同意しているが、実現には基盤となるタイ農業セクターの強化から始めなければならない。さらに、タイは地方分権や汚職の問題もあり、地方のプロジェクトの実行は難しい。BCGモデルの実現にはこれらの社会課題の解決が不可欠だ。
チャクラポン社長:RDFの需要は増えていくだろう。もし日本企業がごみを処理したかったら、われわれの工場まで持ってきて欲しい。われわれの工場に送ってくれば、ごみを再利用する近道となるだろう。
TJRI編集部
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