カテゴリー: バイオ・BCG・農業, イベント
公開日 2023.03.14
タイ紙ターンセタキは2月24日、セントラルワールド内にあるバンコクコンベンションセンターで、タイを世界のメディカルツーリズム(医療観光)のハブに発展させるために病院などの医療産業やIT関連産業の専門家が情報を共有し、課題解決策を提案する「ヘルス&ウェルス・サステナビリティーセミナー」を開催した。
同セミナーでは最初に、バンコク都のチャチャート・シティパン知事が「Health in the City」と題して特別講演を行った。同知事は「タイをメディカルツーリズムのハブにするためにはまず市民が健康であることが必要だ。都市に大勢の人が集まった場合には病気の発生の可能性も高まる。バンコクの住民が健康でなければ、タイがメディカルツーリズムのハブになることは難しい」と指摘。その上で、バンコク市民の健康増進に向け次のような3つの対策を説明した。
(1)プライマリー医療システムの拡充
バンコクでは多くの専門医がいる2次、3次医療機関は充実しているが、プライマリー(1次)医療システムはぜい弱だ。このため69カ所の保健サービスセンターを拡充する必要がある。専門医療クリニックや時間外診療、移動診療ネットワークなどを増やし、住民が直接病院に行かなくても済むように整備する。
(2)高齢化社会への対応と現代病の予防
バンコクは全国でも高齢者人口が最も多い。このため、肥満や糖尿病、心臓病、癌などの非感染性疾患(NCDs)を持っている人も他の県よりも多い。また、昨年のメンタルヘルス患者数は7500人で、その60%は21〜59歳という生産年齢人口の中核層だ。このため、住民が心身ともに健康な生活をできるよう、バンコク都庁(BMA)は予防医療を支援している。例えば、高齢者の社会参加活動や公共の場でのイベント開催などを行っている。
(3)呼吸器疾患の問題
バンコク都の微小粒子状物質(PM2.5)の発生源は、人為的なものと気象という2つ原因がある。人為的なものの50〜60%は運輸部門で、半分以上はディーゼルエンジンのピックアップトラックやトラックなので、政府は欧州の排ガス基準「ユーロ5」に適合するエンジンの導入を推進する必要がある。産業部門、農家が農業残渣などを焼く「野焼き」がそれぞれ10~20%程度あり、その他が5~10%だ。バンコク都庁は「PM2.5ダストセンター」を設置し、早期警戒情報を発表している。また、電気自動車(EV)のエコシステムの拡充、歩きやすい街づくりも推進している。
一方、チュラロンコン大学医学部長のチャンチャーイ准教授は「タイの医療システム統合の挑戦」と題して講演。「現在、タイ人の平均寿命は80歳だが、死亡するまでの約5年間は不健康な状態が続く人が多い。そこで、健康上の問題によって日常生活が制限されることなく生活できる期間である『健康寿命』を伸ばし、不健康な期間をできるだけ短くする必要がある」と主張した。
同准教授はさらに、タイの健康問題の解決策について「全ての政策において健康を考慮する(Health in All Policy)ことが重要だ。公的、民間のすべての部門が市民の健康を最優先に考えることが不可欠だ。タイをメディカルツーリズムのハブにするためには、政府も市民の健康について考えて政策を作る必要がある」と訴えた。
また、トンブリ・ヘルスケア・グループ(THG)の子会社トンブリ・ウェルビーイングが運営する高齢者住宅「ジン・ウェルビーイング・カウンティ」のティモシー最高経営責任者(CEO)も登壇。「高齢化社会が懸念されている。タイは世界で最も急速に高齢化が進んでいる国のトップ3に入っており、高齢者数は東南アジアの平均のほぼ2倍で、将来は超高齢化社会になるだろう。そのため、社会は高齢者とその生き方に対する考えを見直す必要がある」との認識を示した。
さらに、「高齢者は経験豊かな人たちであり、政府は能力のある高齢者が隔日勤務や半日勤務などの形で働き続けることを支援すべきだ。定年退職後の高齢者は以前に比べ友達が少なくなり、社会的義務も少なくなり、積極的な活動もしなくなるので、ストレスが高まり、うつ病にもなりやすい。高齢者が働き続けることで社会の負担を軽減することができる」と訴えた。
TJRI編集部
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