公開日 2024.08.13
TJRI(Thai-Japanese Investment Research Institute:タイ日投資リサーチ)は、ワークベンチャー社と連携し、2024年6月に在タイ日系企業で働くタイ人従業員を対象とした意識調査を実施しました。
本調査では、ワークベンチャー社が提供する「Best Places to Work調査」と同様の調査票を使用し、タイ人従業員から見た日系企業の魅力や課題を明らかにするための分析を行い、優秀なタイ人を「惹きつけ、選ばれる」ためのポイントを探りました。今回は、同社による分析結果を報告します。
目次
アンケート実施時期:2024年6月
対象:従業員数100人以上の在タイ日系企業に勤めるタイ人従業員
回答者数: 3,566名
背景・目的
多様化する現代のビジネス環境において、企業の成長には優秀な人材の確保が不可欠です。そのためには、従業員の価値観を把握し、企業ブランディングを強化することが求められます。本調査では、非日系企業(タイ企業、その他の外資系企業)と比較しながら、日系企業の強みを発見し、それを強化するためのヒントを提供することを目的としています。
本調査で得られた4つのポイント
①タイ人が日系企業を選ぶ理由まず回答者の属性について、年齢層は、21歳以下が1.5%、22〜35歳が58.0%、36歳以上が40.5%でした。職種別では、生産・工場部門が50.4%と最多で、次いでオフィス勤務が38.3%、オペレーション・サービスが11.3%。勤務地はバンコク首都圏が30.2%、その他が69.8%でした。
本調査結果によると、タイ人従業員が日系企業を選んだ理由と働き続ける理由の上位は「会社の安定性」と「福利厚生」が共通しており、入社前後で変化はありません。入社の決め手の4位には「企業イメージ」がランクインしていましたが、入社後は「研修・開発」が重視されること明らかになりました。
ワークベンチャー社によると、非日系企業の場合、「給与水準」と「福利厚生」が上位を占めるのが一般的であるのに対し、今回調査した日系企業では「安定性」が最も重要な要素に選ばれました。「給与水準」については入社前では5位、入社後も3位にとどまっています。このことから、タイ人従業員が給与以外のどのような理由で日系企業を選び、働き続けるのかを明らかにすることが、優秀な人材の確保のヒントになると考えられます。特に1位の「安定性」においては、従業員が自分の人生を預けてもよいと思われるような人事施策やブランディングをしていくこともポイントとなるでしょう。
次に勤務年数別では、2年未満が全体の25.3%、2年以上が74.7%でした。勤務年数別での働き続ける理由では、2年未満のグループは「研修・開発」や「チームワーク・コラボレーション」、「尊重・共感」などの要素を重視している一方で、2年以上のグループでは給与などの報酬面が重視されていました。この結果から、人事施策として、勤務年数別の施策を立案し、実行していくことも効果的といえます。
「この会社であと何年働くと思うか」という質問に対しては、30.6%が1〜5年、69.4%が5年以上と回答しました。特に「定年まで勤めたい」という回答が39.4%と高く、終身雇用が一般的ではない現代においても、安定した企業で働き続けたいという層が一定数いることが明らかになりました。
定年まで勤めたいと回答したグループを年齢別にみると、36歳以上が58.8%、22〜35歳が39.5%、21歳以下でも1.7%いました。定年まで勤めたいと回答したグループが働き続ける理由として重視する上位5つの要素は、「安定性」、「福利厚生」、「チームワーク・コラボレーション」、「給与水準」、「研修・開発」であり、これらを会社が提供できれば、長く勤務してもらえる可能性は高くなります。いずれにしても、それぞれの層が求める環境を整えていくことで、優秀な人材のエンゲージメントを高め、その結果、定着にもつながるといえます。
一方で、5年以上勤務しているにも関わらず、「この会社であと何年働くと思うか」という質問に対して、36.4%が1〜2年と回答しており、この層はさらに深く解析していく必要があります。
続いて、自由回答の3つの質問から得られたキーワードについて、入社の決め手では、「福利厚生」、「安定性」、「評判」、「仲間」などが挙げられ、会社の強みを評価する質問では、「自宅の近く」というキーワードが強調されました。これは、バンコク首都圏と地方では、同じ距離でも移動にかかる時間が異なり、今回の回答者の約70%がバンコク首都圏以外に勤務していることが関係しているためと考えられます。
一方、会社の弱み(改善の余地がある)の質問では、「マネジメント」、「厳しさ」、「年功序列」「キャリアパスの低さ」など柔軟性の欠如を指摘するキーワードが目立ちました。弱みとなるキーワードは、働き続ける理由と相反するものであり、これらの弱みが増えるとタイ人従業員は辞めたくなる可能性が高くなるため、改善が推奨されます。
本調査を主導したワークベンチャー社のジラワット・タンバウォーンピチェット氏は、今回の調査結果について、「22〜35歳の製造業で働く人が大半を占めており、その特徴がよく反映されていた」とコメントした上で、「従業員の価値観を理解し、次のステップとして、組織としてそれらを提供できているか、パフォーマンスが出せているのかなど実態を把握することが重要。会社の強みを発見し、それを強化していくことが、企業のブランディングや優秀な人材確保につながる」と強調しました。
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「タイ人を知る」
タイの歴史や道徳教育、社会構造などを背景とした一般的なタイ人の仕事への価値観、就労観について考えます。また、日本とは大きく異なるタイの商習慣やビジネス文化にも着目し、タイ人とのビジネスをより円滑に進める方法を学びます。日本で⻑く働いた経験を持つガンタトーンが、日本人タイ人両方の視点からタイでのビジネスの効率化やコミュニケーションの円滑化、タイ人と働く上で知っておいてほしいタイ人の価値観やビジネス文化に迫ります。
THAIBIZ x Asian Identity「なぜタイ人は日系企業を”選ぶ”のか?」シリーズ
ビジネス経済情報誌ArayZ2023年10月号の特集記事「なぜタイ人は日系企業を辞めるのか?」の反響を受けて、著者Asian Identityの中村勝裕氏に、経営変革に取り組む在タイ日系企業の事例をご紹介いただきます。
上記はほんの一例。今後の開催セミナーの詳細・スケジュールは、THAIBIZ Newsletterにていち早く情報をお届けします。ご登録がまだの方は、本ページの下部の「メールマガジン登録」よりお申し込みください。
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THAIBIZ編集部
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