カテゴリー: ニュース
公開日 2023.01.31
1月24日付バンコク・ポスト紙(9面)は、マレーシアのアンワル首相が来月、タイを訪問することを受けて両国間の外交に関する論説記事を掲載している。同記事は「タイとマレーシアの関係の現状については『かなり近いが、まだかなり遠い』という表現が一般的だ」と話を始め、両国関係における6つの課題を挙げている。
課題の1つ目は、両国首脳の信頼関係の一段の強化だと訴える。アンワル氏が昨年12月に首相に就任した際にタイ政府や、タイ深南部の紛争を担当するタイ国家安全保障会議(NSC)の間で安堵感が広がったと指摘。1990年代にマレーシアのマハティール元首相がタイを訪問した際には、タイの当時の首相だったチュアン現下院議長との信頼関係構築により楽観的なムードが広がったと回顧する。その上で、タイのプラウィット副首相が先月、クアラルンプールを訪問してアンワル首相と会談し、同首相の訪タイのおぜん立てを作ったことに言及。来月の首脳会談では、特に停滞している深南部の和平手続きが議題になるとの見方を示している。
2つ目の課題は両国国境地帯での貿易、輸送施設、経済特区、観光を推進するために2004年に創設された「国境地帯の共同開発戦略(JDS)」の強力な推進だと指摘。3つ目もタイ深南部の和平プロセスに関するもので、イスラム教コミュニティーへの配慮の重要性を挙げる。4つ目は、タイとマレーシア間の国境開放による陸路、河川での往来の活発化が犯罪などにつながらないことを担保する必要があるとしている。5つ目はミャンマー情勢の正常化支援に向けた両国の連携で、アンワル政権は前政権とは異なり、東南アジア諸国連合(ASEAN)主導でのコンセンサス作りに取り組んできたと評価している。
さらに6つ目は両国の若者が将来世代のために社会・文化の枠組みを構築するとともに地域社会に貢献できるようにする共同プログラムの推進だという。同記事によると、新型コロナウイルス流行前にはマレーシアに居住するタイ人は、労働者、学生、飲食店経営者など少なくとも17万人いたという。その大半は若者で、多様な文化や宗教についての理解があり、地元コミュニティーの中でマレーシア市民との対話を通じた和平プロセスを支援できると強調した。
同記事は両国首脳の会談は7年ぶりで、改めて新時代に向けて毎年協議し、ビジョンを共有すべきだと訴えている。そういえば、2022年のタイへの外国人観光客数のトップはマレーシアだった。タイに住んでいても隣国のマレーシアについて話題になることが少ない印象もある。ビジネスでも周辺国ではCLMV諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)ばかりに視線が向かう。観光、ビジネスでももっと両国の連携強化はありなのではと感じる。
サイアム・コマーシャル銀行(SCB)の調査機関エコノミック・インテリジェント・センター(EIC)は1月20日に発表したタイ経済に関するリポートで、中国の国境移動の再開に伴い、2023年には少なくとも400万人の中国人観光客がタイを訪問し、外国人観光客の総数は2830万人と達するとの予想を明らかにした。この結果、今年の経済成長率は観光と個人消費がけん引役となり、3.4%まで回復すると予測している。
一方、2023年のタイの輸出額は、世界経済の減速を背景に前年比1.2%増にとどまる見込み。また、国際エネルギー価格の上昇が鈍化しつつあり、タイのインフレ状況も2022年第3四半期にピークを過ぎたものの、エネルギー価格や食料品価格が高止まり、生産者のコスト負担が消費者に転嫁される状況は続き、2023年のインフレ率は3.2%になるとの見方を示した。
29日付バンコク・ポスト紙(2面)によると、タイ運輸省鉄道輸送局(DRT)はDRTと財務省関税局幹部が最近、ラオスを訪問するなどラオス政府幹部と中国・ラオス・タイ鉄道に関する交渉を行っていることを明らかにした。同鉄道により、今後3~5年間で貨物輸送コストは30~50%削減することが可能だという。タイ政府によると、2022年の両国国境の貿易額は新型コロナウイルス流行にもかかわらず、前年比39.9%増加した。
TJRI編集部
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