カテゴリー: ニュース
公開日 2023.05.10
トヨタ自動車は8日、グループのダイハツ工業で発覚した海外向け車種の衝突試験の認証手続きに不正があった問題で、タイのディーラーなど関係者に説明するとともに記者会見を行った。
今回の対象車両は、タイで生産しトヨタブランドとしてOEM供給をしている「ヤリス・エイティブ」などで、豊田章男会長は昨年12月のタイ国トヨタ自動車(TMT)創立60周年記念イベント以来、約5カ月ぶりに訪タイし、自ら先頭に立って説明・謝罪する形となった。
豊田会長は、「ダイハツ工業の問題はお客様の信頼を裏切り、絶対にあってはならない行為だ。トヨタは問題が発生した時には真因を追求し、再発防止に取り組んでいく会社であり、創業以来ずっと大切にしてきた思想だ。この地道な努力を続け、信頼回復に向けグループ一丸となった取り組みを進めていく」と訴えた。
同社の前田昌彦アジア本部長によると、ヤリス・エイティブはタイのゲートウェイ工場で昨年8月から製造を開始し、4月末時点で3万9757台半販売してきたが、出荷・販売をいったん停止したという。
認証試験の際に不適切な加工をした原因について、ダイハツ工業としては比較的に大きなセダンであり、新しいデザインにするために複雑な構造のドアトリムとした上で、短い期間で開発しようとしたため、開発現場に過度のプレッシャーがかかってしまったのではとの認識を示した。
豊田会長はまた、コスト優先の車づくりをしているのではとの質問に対し、2010年にリコール問題で自ら米国議会の公聴会で証言したことに改めて言及し、トヨタの車づくりでは「優先順位を安全、品質、量の確保、最後に収益」とはっきり決めてきたと述べ、コストが最優先ではないと強調。
「収益を上げた人が褒められるという風土があるのも現実だが、会社の中で責任者であり、決断者であるような立場の人は絶対に優先順位の順番を間違えてはいけないと言っている」と理解を求めた。
英エコノミスト誌4月22日号は、巻頭とスペシャルリポートで自動車産業の特集を組んでいる。このうちスペシャルリポートの1本目のタイトルは「自動車産業~自動車製造のすべては一度に変化しつつある」で、改めて自動車産業の歴史を振り返るとともに、電気自動車(EV)シフトとソフトウエアの重要性の高まりなどの大局を概観している。
同記事はまず、ドイツのベンツが1886年に乗用車を始めて開発した頃は整備士が油まみれの手の汚れを落とすのに薬局で薬剤を買わなければならなかったなどの自動車産業初期の苦労話から話を始める。そして自動車産業は今や「大衆に輸送手段を提供するために年間売上高が3兆ドルの産業に発展し、世界中の道路で10億台以上の乗用車が走行している」と産業全体の基礎データを紹介。ドイツだけでなく、その後、米国ではT型フォードで大量生産を実現、日本が信頼性を重視、「ジャスト・イン・タイム」生産システムを開発したなどと歴史を振り返る。
そして次のフェーズでは、テスラによるEV化の加速などのテクノロジー企業の参入、中国企業の新規参入と急成長の局面に入ったと指摘。特に中国は過去40年間での経済大国化とともに、2009年に米国を上回る世界最大の自動車市場となり、2022年にはドイツを上回り世界2位の自動車輸出国にのし上がった(トップは日本)と説明する。そして、テスラと中国勢の台頭により自動車産業は前例のない変革期を迎えており、2022年には世界の新車販売の10台に1台がバッテリーEV(BEV)となり、プラグインハイブリッド(PHEV)を含めるとEVの販売台数は1050万台と、シェアは13%にまで高まると報告している。
これらEV主導の新規参入業者の増加により自動車産業の競争は一段と激化する一方で、世界の自動車販売台数は既にピークを迎えていると指摘。特に自動車販売台数を押し上げてきた中国市場の拡大にブレーキがかかったことなどから、2018年以後3年間は景気悪化と新型コロナウイルス流行により、世界の乗用車販売台数は2017年の7300万台でピークとなった後、2022年には6200万台まで減少したと報告した。そして今後、販売台数は2019年の水準まで戻るものの、それ以上に増加することはないだろうという米ガートナーの厳しい予想を紹介している。
また、伝統的自動車メーカーには内燃機関(ICE)技術の蓄積という明らかなアドバンテージがあるものの、「ソフトウエア側で何が起こるのかがより重要だ」とのドイツのメルセデス・ベンツ幹部のコメントを引用した上で、「将来の自動車ブランドは主にその利用方法の経験によって差別化されるが、それはハードウエアよりもソフトウエアによって決まってくる」と強調。
ソフトウエア依存の自動車は「インフォテインメント」や「ボイスコントロール」などが機能的特徴となり、これらは工場出荷後も無線通信によるアップデート可能だという。そして多くのメーカーがテスラに羨望のまなざしを向け、中国の新興企業は車内カラオケを提供することでテスラに対抗しようとするなど、自動車産業の最前線を伝えている。
TJRI編集部
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