カテゴリー: ニュース
公開日 2023.04.11
4月1日付英エコノミスト誌はLeadersとアジア面で、アジアと世界の「コメ作」に関する記事を掲載している。今回はLeadersの「緑の革命2.0~いかに世界コメ危機に対処すべきか」という記事のみ紹介する。この記事の副題は「世界で最も重要な穀物は気候変動と糖尿病を促進する」だ。同記事は、「『緑の革命』は最も偉大な人類の創造物の1つだ。小麦、特にコメの高い単収の品種を促進することで、インド、メキシコ、フィリピンの生産者は、中国を飢餓から救い、インドの飢餓回避に貢献した。1965~1995年の間にアジアのコメ単収は2倍になり、人口増加にもかかわらず、貧困者を半減させた」と話を始める。
そして「コメは世界の人口の半数以上を持続可能にする主要食糧だ。アジア人はコメの90%以上を生産し、消費カロリーの4分の1以上はコメから得ている。アジアとアフリカの人口増を背景にコメ需要は急増する見通しだ。ある推計では世界は、2050年までに、コメの生産量を3割増やす必要がある。これは難しいと思われ、またある意味望ましいことではない」と指摘する。それは過去10年間コメの単収が1%未満しか増えておらず、その前の10年より大幅に低い水準という。特に東南アジアでの単収の増加ペースが鈍化し、4億人の人口を抱えるインドネシアとフィリピンは、農地と労働力の減少から既にコメの輸入大国になっているという。
そして過剰な農薬・肥料の使用と灌漑により土壌が有毒になり、損なわれているが、最も大きな影響は地球温暖化かもしれないと指摘。最大のコメ輸出国インドでは昨年の干ばつで収穫量が減少し、輸出禁止措置を取るなど事態は悪化しているという。そして、コメは単に気候変動の犠牲者であるだけでなく、その原因ともなっているとの見方も示す。土壌の酸素不足や田んぼの耕作がメタンを排出するバクテリアを増加させ、それは畜牛以外で最も温室効果ガス排出が多い食物でもあると訴えている。さらにコメは麦やトウモロコシより肥満の原因となり、南アジアでのコメの大量摂取は糖尿病の多さにつながっているとも警告している。
アジア開発銀行(ADB)は4月4日に発表した「アジア開発見通し」で、2023年のアジア太平洋地域の国内総生産(GDP)伸び率が4.8%となり、2022年の4.2%から上昇するとの予想を明らかにした。中国の渡航規制緩和を受けて経済活動が正常化するとの期待が高まっているためで、2024年の成長率も4.8%になる見通し。
ADBは中国の成長率について23年が5.0%、24年が4.5%と、22年の3.0%を大幅に上回ると予想。東南アジアの平均は2022年が5.6%だったが、2023年は4.7%、2024年は5.0%となる見通しだという。2023年の各国別予想ではインドネシアが4.8%(2022年5.3%)、マレーシア4.7%(同8.7%)、シンガポール2.0%(同3.6%)、タイ3.3%(同2.6%)、フィリピン6.0%(同7.6%)、ベトナム6.5%(同8.0%)、カンボジア5.5%(同5.2%)、ラオス4.0%(同2.5%)だった。軍事クーデターを受けて2021年に-5.9%とマイナス成長に落ち込んだミャンマーは2022年は2.0%とプラスに転じ、2023年には2.8%まで回復する見通し。
ADB見通はタイについて、個人消費の急拡大と観光業の回復で、2022年は景気拡大が続いたが、2023~2024年も観光と個人消費が経済のけん引役になると見込んでいる。ただ、世界経済の減速により、リスクが下方に傾く中で、タイ経済の回復軌道が損なわれる可能性があると指摘。また、カーボンニュートラル経済シフトが政策課題だが、タイ経済は世界の気候変動への耐性はあるとの見方を示している。
7日付バンコク・ポスト(ビジネス3面)によると化学品販売会社UACグローバルは、再生可能エネルギーへのシフトを推進するために3億バーツを投資する計画を明らかにした。同社のチャチャポン最高経営責任者(CEO)によると、約2000万バーツをコンケン県のバイオガス発電所(3メガワット)の建設に充当する。この発電所は、政府のコミュニティー発電所計画「Energy for All」のプロジェクトの1つで、今年第3四半期中に操業開始する予定だ。
TJRI編集部
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