EV価値の急落で保険料見直しへ、タイ誇り党は大麻自由化策を堅持

EV価値の急落で保険料見直しへ、タイ誇り党は大麻自由化策を堅持

公開日 2024.07.15

7月8日付バンコク・ポスト(ビジネス1面)は、電気自動車(EV)向けの自動車保険を巡る新たな動きとその背景を分析する記事「EV insurance in the driver’s seat」を掲載している。同記事はまず、保険会社2社がEVに対する保険提供を中止することを示唆したとの最近の報道は確認されていないとした上で、保険会社、自動車メーカー、銀行は、EV販売にインパクトを与える保険などの問題を真剣に検討するようになったと伝えている。

そして、新型あるいは中古のEVの市場価格が大きく変動しているため、保険会社は保険料の設定が困難になっており、EV向け保険の提供に消極的になりつつあると指摘。東京海上グループのタイ現地法人は7月2日、1日から保険料の算定基準を見直し、EV向け保険の契約条件を変更したと発表したが、EV保険の提供を中止したとの一部報道は否定した。同社の声明によると、保険契約を更新する顧客は、過去の保険の履歴に基づいて保険料が算定され標準的なカバー内容を継続できるが、新たな顧客や保険を変更する顧客は現行の固定の保険料は一時的に中止されるという。また、自動車メーカーやディーラーとのプログラムに加入している顧客は依然、保険でカバーされるという。そして、顧客は、保険料について東京海上のスタッフに問い合わせをすることができ、スタッフが保険価値を審査し、ケースバイケースで保険料を提案するとしている。

タイ損害保険協会は、競争的な価格設定やEVの急速な価値下落が保険価値に影響を与える可能性があり、保険請求額が90~100%急上昇し、保険会社の収益に打撃を与えていると警告。さらに、EVの修理費用や交換部品のコストは内燃機関(ICE)車より50~60%高いとしている。タイ保険事業管理委員会(OIC)は、依然、保険会社23社がEV向け保険を提供していると報告した。


7月11日付バンコク・ポスト(ビジネス3面)によると、フィッチ・ソリューション傘下のBMIのアナリストらは、タイの2024年1~4月の自動車販売台数が前年同期比24%減の4万6738台(ASEAN AUTOFED調べ)と予想を下回り、今年下半期も家計債務問題を背景に、回復する見込みが薄いことを受けて、2024年の販売台数に悲観的になっているとの見通しを示した。BMIは従来、今年の販売台数予想が前年比6.1%増加すると予想していたが、タイの家計債務水準が高止まりし、金融機関の融資基準厳格化が続く中で、今年の販売台数は18.1%減になるだろうと予想を大幅に下方修正した。さらに、2025年の販売台数についても前年比4.2%減になるとの予測を示した。


7月10日付バンコク・ポスト(1面)によると、アヌティン副首相は兼内相は9日、首相府で記者団の取材に応じ、大麻を禁止麻薬リストから外し、栽培などを自由化したタイ誇り党の公約を堅持しており、麻薬管理委員会(NCB)でも大麻の再度の麻薬リスト入りに明確に反対するとの姿勢を明らかにした。ただ、セター首相が議長を務めるNCBのメンバーになっている内務省の次官に対し、自らに同調するよう強制はしないとしている。大麻の規制緩和は2019年の総選挙時にタイ誇り党が選挙公約としており、この時に発足した政権でアヌティン氏は保健相に就任し、自由化を推進した。しかし、アヌティン氏は現在の連立政権では内相となり、保健相には、大麻の麻薬リスト再掲載を推進するタイ貢献党のソムサック氏が就任。アヌティン氏は記者団に対し、「もし内閣改造があり、タイ誇り党が保健省を担当することになったら、私は再び大麻を麻薬リストから外すだろう。それがタイ誇り党の目玉公約だからだ」と明言した。


今週配信のコラムで、タイの年金制度が低所得者層にとっていかに不充分かを紹介したが、一方、英エコノミスト誌7月6日号はアジア面で久しぶりにタイを取り上げ、「タイのヘルスケアはいかに良いか」というタイトルの記事で、タイの公的医療システムが東南アジアのモデルになる可能性があるなどと称賛している。同記事は、過去20年間、タイでは首相が11人も代わる政治の不安定さが続いているが、「タイのガバナンスの成功例の1つが公的医療システムだ」と話を始める。そして国連の最新統計では、タイ人の平均余命が約80歳と、東南アジア全体の73歳だけでなく、欧米平均の79歳すらわずかに上回っていると指摘。途上国では珍しいこうした実績は、「タイの政治家が農村部の開発に焦点を合わせ、公的医療を最優先した結果」であり、医学部の卒業生には最初の3年間は農村部でキャリアを積ませるという人材への投資も奏功したという。

さらに貧困層をターゲットとして低額医療制度を推進し、特にタクシン元首相が2002年に導入した、国立病院の診察料を一律30バーツとする「30バーツ医療制度」の効果が大きかったと改めて評価。この「国民皆医療」制度は国民に恩恵をもたらしただけではなく、「新型コロナウイルス流行前まで、国の医療予算を国内総生産(GDP)の3~4%に安定化させることができた」などの政府にもメリットがあったと強調した。そして多くの国がタイを見習おうとしており、サウジアラビアは今年、タイ政府と公的医療制度で協力することで合意したという。ただ、タイで高齢化が進む中では、公的医療システムも圧迫される可能性があり、多くの医師が過剰労働の不満を訴えているともしている。

THAIBIZ編集部

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