カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2016.10.31
目次
タイ中央銀行が発表した2016年7月の重要な経済指標によると、緩やかながら拡大を続けています。供給面では、農業所得は増加傾向が続き、サービス業も観光業で好調を維持してはいるものの、輸出と公共支出は鈍化しました。
7月のタイ経済は緩やかに拡大基調
7月の民間消費は前年同月比2.4%の上昇で、前月の同3.6%から伸びが減速しました。消費財のバーゲンセールや自動車の新モデル投入など、支出を刺激する一時的なプラス材料があったことを受け減速したことが理由です。ただし、サービス支出は引き続き拡大しています。
一方で、民間投資は前年同月比0.8%上昇し、ほぼ横ばいとなっています。電力、通信設備などの分野で投資が加速したものの、全体としては投資の回復は一部の産業に偏っています。
7月の輸出は、前年同月比4.5%減の172億7700万米ドルとなりました。水産品や米国向けのIC(集積回路)、太陽光パネルなど一部を除き、おおむね低調でした。その主な理由は、主要貿易相手国経済の回復の遅れが輸出数量に影響を及ぼしたほか、輸出価格も、特に石油関連商品で前年同期を下回る水準にとどまっているためです。
商務省が発表した2016年8月の貿易統計によると、タイの輸出額(約188億)は前年同月比6.5%増となり、5ヵ月ぶりにプラス成長となりました。主要市場の中国、米国、欧州連合(EU)、オーストラリア向けの輸出が軒並み回復しました。
品目別に見ると、8月の工業製品の輸出額は、前年同月比9.0%増となりました。車両・部品が同35.7%増と急伸し、全体を押し上げました。乗用車が同56.0%増、ピックアップトラック・バス・トラックが同63.8%増と好調でした。
しかしながら、農産物・加工品は、前年同月比4.1%減少しました。主要農産物のキャッサバが同5.7%増と持ち直したものの、天然ゴムが同31.9%減、コメが同8.0%減と低調でした。
2016年7月の工業生産に関しては、前年同月比5.1%の収縮で、前月の同0.8%増から伸びが落ち込んでいました。国内外で需要が鈍化した自動車の生産が減少したほか、在庫調整でゴム製品の生産も落ち込みました。タイヤ原料のブロック状ゴムは、中国製タイヤが米国からアンチ・ダンピング措置を受けており、事業者は今後の中国からの引き合いの減少を警戒しています。
サービス・セクターでは、特に、観光業の成長が引続き拡大しました。外国人旅行者数は前年同月比10.8%増の295万人と好調拡大を維持しました。ラマダン(断食月)が明けたことで、マレーシア、インドネシア、中東といったイスラム圏からの旅行者が伸びたほか、中国とロシアを除く欧州も堅調に推移しました。観光業の好調が関連のサービス分野の伸びをけん引しました。
商務省が発表した8月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比0.29%の上昇で、前月の同0.10%増から伸びが加速しました。食品・飲料部門の伸びが前月から拡大したことが理由です。
品目別にみると、食品・飲料部門では、前年同月比1.88%の上昇で、前月の同1.83%増から伸びが横ばいとなりました。米・粉製品以外はプラスで、特に果物・野菜が同7.41%と高騰しました。肉・魚および卵・乳製品も食品・飲料全体の上昇率を上回りました。また、非食品部門は0.59%下落しました。燃料石油を含む運輸・通信および住宅が下がりました。
一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.79%の上昇で、前月から伸びが横ばいとなりました。
バーツ相場の変動については、バーツは、2016年9月16日には1米ドル=34.8バーツの終値をつけ、2016年8月31日の1米ドル=34.6バーツから小幅なドル高傾向を見せました。その原因は、9月の米利上げの可能性がまだ残ると予想され、ドルを買う動きがあったことです。
一方、バーツ対円の変動について、2016年9月16日には100円=34.1バーツの終値をつけ、2016年8月31日の100円=33.5バーツから円高傾向が継続しました。その原因は、世界経済の回復が遅れた為、投資家がリスク回避の姿勢をとり、円を買う動きが強まったためです。
円対米ドルの変動について、2016年9月16日には1米ドル=102.04円の終値をつけ、2016年8月18日の1米ドル=99.89円からドル高傾向を見せました。その原因は、9月の米利上げの可能性があると予想され、ドルを買う動きが強まったことです。
事業活動のために膨大な情報を取り扱うには、事業者が独自にシステムを開発・保有・運営するという選択肢の他に、クラウド・コンピューティング・サービス(Cloud Computing Service:CCS)を利用するという方法があります。前者を選べば、その投資額は、莫大な規模になります。それだけの投資が可能な事業者は限られた大手企業しかなく、中小企業が追随する余地はほとんど残されていません。その意味では、CCSは、中小企業にとっては、コストが低く最適な選択肢と言えます。このサービスでは、単に大量のデータを保管するだけでなく、それを分析するためのソフト開発の支援や、既成ソフトを活用したデータ解析を行うことも可能になります。
タイでは、CCSはまだ新しく、これを活用して膨大な情報を解析していくような動きは、現時点ではまだ普及していませんが、海外では、コストの低さや使い勝手の良さ、ニーズに素早く対応できる快適さなどで、すでに評価が定着し、広く利用されるようになってきています。ある調査によれば、CCSを利用した場合、事業者が独自のシステムを開発・運営した場合に比べて、経費は70%以上も節約できるという結果が出ています。このコストの飛躍的な節減効果は、CCSがタイの産業界で普及していく上で大きな要素になり得ます。中でも通信、小売、金融の各分野は、同サービスを活用した莫大な情報の解析に真っ先に進出してくる可能性があります。
データの解析ソフトの開発業者は、CCS・プロバイダーと提携し、相互補完的に事業活動を展開していく可能性が高いと考えられます。現状では海外での経験豊富な外資系の開発業者のみがプレーヤーで、国産プレイヤーの登場を待つには今暫く時間が必要かもしれません。
尚、CCSを供給していく上で、当面最も需要が高いのは、恐らくマーケティング面での情報収集と解析に関するサービス提供です。特に消費者の消費行動の深部にまで達する分析は、商品やサービスの購入意欲を刺激 めの販売戦略を模索する上で貴重な情報を提供してくれるはずです。CCSに基づく情報解析サービスの需要が高まれば、サービス・プロバイダーもリスク管理や品質管理など他方面へサービスの幅を広げていくことが可能になります。
現在、タイの大量情報解析に関わるサービスは、事業者自身による全面的な投資によるものがほとんどです。その市場規模は、2016年に10億8460万~11億960万バーツ程度で、前年比9.5~11.9%の伸びが予測されています。この傾向は今後暫く続く見通しで、CCSに重心が移るにはもう少し時間が必要になると思われます。CCSによるデータ保存の安全性にまだ不安を抱く事業者が多いためで、まずは重要性が低いデータやソーシャル・メディアを通じた流動的なデータなどがCCSで活用されていくことになると見込まれます。
一方で、顧客情報などの重要データは、依然として自社で保管・運用するスタイルを維持すると見られます。ただし、中期的には自社による独自のデータ管理システムは徐々に減少傾向に向かい、CCSへの移行が進むと見込まれます。
カシコンリサーチセンターでは、2016年のCCSによる大量情報解析に関する需要は、1億1870万~1億2430万バーツ程度の規模で、前年比で19.8~25.4%増となると予測します。現時点の市場規模はまだ小さいかもしれませんが、将来性は決して低くありません。今後5年間の中期で見れば、市場規模は着実に拡大していくと見込まれます。事業競争は消費者の消費ニーズや消費行動に関わる生の情報をより必要とするようになっていくためです。
従って、2021年までの5年間の平均伸び率は、33.5~43.1%に達し、2021年の市場規模は6億2960万~9億6720万バーツの規模にまで成長する可能性が十分にあると予測します。2016年の約6.6倍の規模ということになります。
本資料は情報提供を唯一の目的としており、ビジネスの判断材料とするものではありません。掲載されている分析・予測等は、資料制作時点のものであり、今後予告なしに変更されることがあります。また、予測の妥当性や正確性が保証されるものでもありませんし、商業ないし何らかの行動の為に採用することから発生した損害の責任を取れるものでもありません。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自でご判断ください。
THAIBIZ編集部
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