ラオス最低賃金の改定に関するアップデート

ArayZ No.144 2023年12月発行

ArayZ No.144 2023年12月発行メコン5における中国の影響拡大

この記事の掲載号をPDFでダウンロード

ダウンロードページへ

掲載号のページにて会員ログイン後、ダウンロードが可能になります。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、[email protected] までご連絡ください。

ラオス最低賃金の改定に関するアップデート

公開日 2023.12.09

1. 背景

2023年8月16日付でラオス首相府は、7月の閣議決定に基づき、労働社福祉省からの最低賃金引き上げの要請に対して合意する告知(No1502)(以下、「告知」)を発行しました。

前回の最低賃金引上げは、22年8月1日に110万キープから120万キープへ(約80USD、1USD=15,000LAK、22年8月為替レート)、23年5月1日からは120万キープから130万キープへ(約75USD、1USD=17,000LAK、23年5月為替レート)2期間分けて、10万キープずつ、段階的に引き上げられました。今回の改正は、前回の引き上げから5ヵ月しか経過していませんが、ラオスキープの不安定化及び物価の継続的上昇に対応した改正と思われます。

2. 告知の内容

告知は、「7月の閣議決定に基づき、23年10月1日より、最低賃金を130万キープから160万キープ(約79USD)※1へ引き上げることに合意する」という内容のみで、詳細については、23年9月1日付で労働社会福祉省から発行された「ラオスにおける労働者の最低賃金改正の実施ガイドライン(No3226)(以下、「ガイドライン」)」に記載されています。

なお、7月の閣議においては、公務員、軍人、警察、党組織で働く労働者の最低賃金の引上げについては話し合われておらず、今回の引き上げは、民間企業に雇用されている労働者に対してのみ適用される見込みとのことです※2

また、ドルをベースとした場合、4USDの賃上げにしかならず、物価の上昇が続く中で、引き上げ額は十分ではないという評価がなされており、ラオス国民としては、最低賃金を200万キープ(約100USD)から220万キープ(約110USD)まで引き上げるべきとの声があがっています※3

3. 最低賃金と適用範囲

最低賃金の適用される労働者の範囲は、以下の通り、ガイドラインの中で規定されています(ガイドライン2条)。 (1)技能、技術、資格を未収得で、研修を受けたことがない、労働市場への新規参入者 (2)1ヵ月26日、1週間6日および1日8時間を超えない範囲で労働する者

最低賃金には、諸手当(時間外労働賃金、手当、賞与、食費、宿泊費、送迎費、その他の褒賞金等)は含まれない基礎給与を指すので注意が必要です(ガイドライン2条)。  なお、専門的な技術を持った労働者、資格を持った労働者、すでに9ヵ月以上勤務している労働者に対しては、最低賃金以上の基礎給与を支払う必要があり、就業規則や雇用契約書の中で規定する必要があります(ガイドライン3条)。  また、労働法第51条で規定する健康を害するような環境の下で行う業務、たとえば有害物や化学物質を扱う業務、放射線や感染症にさらされる業務、ガスや煙を吸い込む業務、地下やトンネル内での業務、水中での業務、高所での業務、非常な高温や低温での業務、常時振動のある道具を使用した業務、へき地での業務などの場合には、最低賃金に15%以上を上乗せした額を支払うことが義務づけられていますので、留意する必要があります(ガイドライン3条)。

※1 2023年10月の為替レート(1USD=約20300LAK)
※2 情報元:2023年8月18日 Laotian Timesウェブサイト(https://laotiantimes.com/)
※3 情報元同上(https://laotiantimes.com/2023/08/18/laos-to-increase-minimum-wage-for-workers-in-october/#:~:text=The%20Lao%20Prime%20Minister’s%20Office,USD%2083)%20starting%20in%20October)

寄稿者プロフィール
  • 内野里美 プロフィール写真
  • 内野里美 

    One Asia Lawyersラオス事務所に駐在。ラオス国内で10年以上の実務経験を有する。ネイティブレベルのラオス語を駆使し、現地弁護士と協働して各種法律調査や進出日系企業に対して各種法的なサポートを行う。
    E-mail:[email protected]

  • One Asia Lawyers
    One Asia Lawyersは、日本及びASEAN及び南西アジア各国の法に関するアドバイスをシームレスに、一つのワン・ファームとしてワン・ストップで提供するために設立された、日本で最初のASEAN及び南西アジア法務特化型の法律事務所です。
  • 【One Asia Lawyersグループ ラオスオフィス】
    Phanthaly Law: 2nd Floor, Vieng Vang Tower, Bourichane Road, Unit 15, Dongpalane Thong Village, Sisattanak District, Vientiane Capital, Lao PDR Lao
    +856-205453-0065
ArayZ No.144 2023年12月発行

ArayZ No.144 2023年12月発行メコン5における中国の影響拡大

ダウンロードページへ

掲載号のページにて会員ログイン後、ダウンロードが可能になります。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、[email protected] までご連絡ください。

THAIBIZ編集部

Recommend オススメ記事

Recent 新着記事

Ranking ランキング

TOP

SHARE