脱水技術で広げるGXの可能性~多様なニーズに「仲間と応える」

THAIBIZ No.173 2026年5月発行

THAIBIZ No.173 2026年5月発行いま、日本のスタートアップがタイに向かう理由

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脱水技術で広げるGXの可能性~多様なニーズに「仲間と応える」

公開日 2026.05.25 Sponsored

本連載では、在タイ日系製造業の中小企業が集結し、タイの食品製造業におけるグリーントランスフォーメーション(GX)実装に挑むプロジェクト「RaiWay(ライウェイ)」に参画する各社の技術や参画メリットを紹介します。あわせて、一社ではなく「チームで挑むGX」の可能性とその行方を追っていきます。

「食品廃棄物処理にコストをかける」という考え方は、かつてタイでは受け入れられにくかった。しかし今、その前提が変わり始めている。スクリュープレス脱水機メーカー・川口精機の大澤宏典代表取締役社長は、その変化を最前線で体感してきた一人だ。大澤社長に、同社の事業の歩みとタイでの事業展開、そしてRaiWay参画によって生まれた相乗効果の実態を聞いた。

会社の危機から立ち上げた「スクリュープレス脱水機」

川口精機株式会社の大澤代表取締役社長
川口精機株式会社の大澤代表取締役社長

川口精機の沿革と主力製品について教えてください

当社は1949年に静岡県で創業し、今年で77年目を迎えます。当初は親会社である川口鉄工の下請けとしてプラスチック射出成形機を製造しており、これまで約60年間、さまざまな機械の部品加工から完成までを一気通貫で担うOEM製造を行ってきました。

しかし、2008年のリーマンショックで売上が約3分の1に落ち込み、会社が立ち行かなくなる危機に直面しました。そこで自社ブランドの立ち上げを決断し、射出成形のスクリュー技術を応用した「スクリュープレス脱水機」の開発を2010年頃から開始しました。

スクリュープレス脱水機の導入は、どのように広がっていたのでしょうか

開発のきっかけは、静岡県のもやしメーカーからの相談でした。もやしは、売り場に出せる状態に整える過程で約2割が廃棄物となります。その廃棄物は90%以上が水分のため、半日放置するだけで異臭を放ち、その処理にもコストがかかります。こうした課題に対し、当社の機械でもやしの廃棄物を脱水し、搾りかすを牛の飼料としてリサイクルする提案を行いました。

この初の取り組みが後に他のお客様に採用され、その後はカット野菜、お茶殻、クラフトビールの麦芽などへと展開。脱水・リサイクルの取り組みは全国に広がっていきました。現在、日本国内では北は北海道から南は沖縄まで約300件の導入実績があり、「リサイクルまで実現できる脱水機メーカー」として認知を広げています。

川口精機のスクリュープレス脱水機(写真提供:川口精機)

タイ市場のニーズに合わせた提案で商機を模索

タイを含む東南アジアへの事業展開について教えてください

日本と同様に、東南アジアでも将来的に廃棄物処理の需要が高まると予測し、海外展開を視野に入れていた頃、YN2-Tech(Thailand)Co., Ltd.(以下、YN2-Tech)の中村亮太社長に想いを明かしました。すると、「食品業界のGX分野への挑戦」という方向性が一致し、2018年に両社でタイの展示会に出展したことが、進出の第一歩となりました。

しかし当時は、「廃棄物にコストをかける」という認識がタイでは十分に浸透しておらず、需要を取り込むことができませんでした。そこで機械の仕様を一部変更し、「脱水機」ではなく「搾汁機」として販売する方向へ提案内容を転換しました。その結果、2022年にはタイ・ビバレッジ社でパイナップルの搾汁機として、2024年にはマレーシアでココナッツミルクの搾汁機として採用されています。

その後、主にタイでの事業はどのように推進されていますか

昨年2月にタイ駐在事務所を開設しました。出張ベースでは商機を逃すリスクがあり、メーカーである私たち自身が現地に赴き、泥臭く顧客フォローを行わなければ受注にはつながらないと痛感したためです。

こうして現地に軸足を置いたことで、今年4月には駐在員事務所開設以来最大規模のスクリュープレス脱水機正式発注をいただきました。「植物からの薬品原料抽出」という、タイでは新しい用途での導入です。自社の出張機会を待つことなく、顧客の要望に即座に対応し、テストや品質管理(QC)の確認を行えたことに加え、昨年積極的に展示会へ出展したことなどが奏功したと考えています。

現在はタイを基盤に、ベトナム、マレーシア、フィリピン、スリランカなどへと活動の幅を広げています。

タイ市場におけるGXへの意識に変化は感じられますか

最近になり、タイでも廃棄物削減やリサイクルを進めたいと考える企業が増えてきたと感じています。例えば、パイナップルの皮や芯などの廃棄物が1時間に15トン発生する缶詰加工メーカーでの脱水処理や、飲食店の残飯処理など、環境負荷低減を目的とした導入が徐々に進みつつあります。

日本と比べて企業規模が10倍、20倍と大きいケースも多く、GXの取り組みを導入した際の効果も非常に大きいと感じています。

RaiWay参画で、多様な要望に応えられるように

RaiWay参画の経緯とメリットについて教えてください

YN2-Techが食品分野におけるGXの取り組みを掲げており、RaiWayの構想を聞いた時に当社のビジネスとの親和性が非常に高いと感じたことから、参画を決めました。当社単体では「脱水」や「搾汁」に限られますが、RaiWayの枠組みであれば、「乾燥」や「粉末化」、「搾油」など他の技術を持つ企業とチームを組むことができます(図表1)。

これにより、お客様の多様な要望に対して一式で提案できるようになり、対応領域が大きく広がりました。企業間の文化の違いによる衝突もなく、互いの強みや弱みを理解しながら連携できています。

タイ市場の難しさと、RaiWayに期待することは

タイは日本と比べて農産物の量が格段に多く、規模が大きい分、ビジネスチャンスも多いと感じています。また、QCの水準が非常に高く、日本と同等の厳密な分析が求められる点も特徴です。この点は当社の技術力を評価いただける機会でもあると捉えており、まずはタイでも日本と同様に300件の導入実績の達成を目指したいと考えています。

その一方で、当社の機械はまだタイでは認知度が低く、顧客が「最初の一歩」を踏み出すにはハードルがあるとも感じています。認知度や浸透、実績の積み重ねという観点から、RaiWayの取り組みに大きな期待を寄せています。

今後の展望についてお聞かせください

タイでGXに取り組む企業はまだ手探りの段階にあり、「何かしなければ」と考えながらも具体的なアクションに至っていない企業も少なくありません。「脱水することでリサイクルしやすくなる」という認知の浸透とともに、当社のスクリュープレス脱水機をタイ市場に広めていきたいと考えています。将来的には、RaiWayのパートナー企業とともに、東南アジア全体へと活動の幅を広げていくことも目指したいです。


川口精機株式会社

1949年、静岡県に設立。2010年から自社製品であるスクリュープレス脱水機の製造販売を開始。2024年、バンコク駐在員事務所を開設。
Website:https://kawaguchiseiki.co.jp
E-mail:info@kawaguchiseiki.co.jp

THAIBIZ編集部
白井恵里子

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