第1回 官民共創が牽引する タイ社会課題解決の新たな展望

ArayZ No.145 2024年1月発行

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第1回 官民共創が牽引する タイ社会課題解決の新たな展望

公開日 2024.01.10

 長年、深刻な社会課題となっているバンコクの交通渋滞や大気汚染。近年、世界的にSDGsやESG投資、タイにおいてもBCG経済が取り沙汰されるようになったことで、政府や自治体だけでなく民間企業がこうした社会課題解決に取り組む気運が高まっている。そこで、本連載ではJICA事業を通しタイの社会課題解決に奔走する知られざる日系企業の取り組みを紹介する。

タイが抱える社会課題

国際的な研究組織である持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が世界各国のSDGsの達成度を評価した「Sustainable Development Report 2023」によると、タイは健康・福祉、海や陸の豊かさ、平和と公正などの項目で深刻な課題があった(図表1)。これらの指標を詳しく見ていくと、結核や交通事故、海洋地域の環境保護や廃水処理、PM2.5やCO2排出、森林伐採など環境問題について多くの課題が見られた。本調査で明らかにされている課題に加え、交通渋滞や降雨による冠水、高齢化など様々な社会課題が顕在化しており、これらの解決に資する事業やビジネスへの期待が高まっている。一方で、社会課題に取り組むビジネスは、例え社会的に意義のある事業でもビジネスにすることが難しいことから手を付けられてこなかったものも多い。

タイのSDGs達成度(2023年)

JICAによる「中小企業・SDGsビジネス支援事業」

JICAは「信頼で世界をつなぐ」というビジョンのもと、約150の国と地域で開発途上国の課題解決に取り組んでいる。タイとの協力関係も長く、2024年にODA(政府開発援助)70周年、JICA事務所設立50周年という節目の年を迎える。

12年から展開する「中小企業・SDGsビジネス支援事業」は、その国の経済・社会課題の解決につながることおよびビジネスとしての利益を生むことの双方を満たす事業を支援するものだ。一般的に政府機関との関係づくりをしようとしても民間企業のみでは現地パートナーにアクセスするにも相当な困難を要するが、JICAのネットワークを活かすことで一定程度調整コストが減り、事業実施を加速させることが出来るのが大きなメリットである。

民間企業の技術活用が期待される分野

タイではこれまでに74件の事業を実施している(図表2)。特徴としては、他国に比べ高齢化が進んでいることから、介護向け製品などの高齢化対策につながるビジネスに関心を持つ企業が多い。また環境やインフラ、農業に関連する事業も多い。

タイで実施されたJICAの事業別実績

近年ではDXや先端機器等を活用した提案も増えているが、必ずしも最新の技術である必要はなく、社会課題解決につながる製品・サービスか否かという観点がより重要となる(図表3)。また、タイでは格差が大きく、地方ではバンコクと違った課題があるため、どういった地域をターゲットにするか明確にしておくことも重要である。

タイで活用が期待される民間企業の製品・技術(例)

JICA民間連携事業への応募

本事業を実施するためには、毎年の公示期間に提案をいただき、審査で採択される必要がある(22年度実績では倍率は4倍程度)。注意点として、日本で法人登記のある企業からの提案が必要で、タイ現地法人の場合は日本の本社などを通じて提案いただく必要がある。また、大企業、中小企業、スタートアップなどの区分によって提案できるスキームや支援金額等に違いがあるため、確認の上検討してほしい(図表4・QR参照)。

JICA民間連携事業支援メニュー

次号からは、実際にJICA事業を活用し、社会課題解決につながるビジネスをタイで実施している企業を紹介していく。自社でもこんな事業が出来るのではということがあれば気軽にJICA事務所に相談いただきたい。

寄稿者プロフィール

JICAタイ事務所

  • 木下真人 プロフィール写真
  • Representative木下真人

    タイの社会課題解決につながる日系企業のビジネス支援を担当。インドネシア、中国、シンガポール、トリニダード・トバゴなどで15年以上にわたり海外のJICA、日本大使館の国際協力業務に従事。2008年以来二度目のタイ赴任。International Institute of Social Studies 開発学修士。

JICA
JICAタイ事務所
Tel: +66(0)2-261-5250
Email: [email protected]
31st floor, Exchange Tower,
388 Sukhumvit Road, Klongtoey
Bangkok 10110, THAILAND
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JICAタイ事務所
Representative

木下 真人 氏

タイの社会課題解決につながる日系企業のビジネス支援を担当。インドネシア、中国、シンガポール、トリニダード・トバゴなどで15年以上にわたり海外のJICA、日本大使館の国際協力業務に従事。2008年以来二度目のタイ赴任。International Institute of Social Studies 開発学修士。
Email:[email protected]

JICAタイ事務所

31st floor, Exchange Tower, 388 Sukhumvit Road, Klongtoey
Bangkok 10110, THAILAND
TEL:02-261-5250

Website : https://www.jica.go.jp/overseas/thailand/office/index.html

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