ArayZ No.120 2021年12月発行変わる日タイ関係-タイ人における日本の存在とは
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カテゴリー: 特集
公開日 2021.12.09
目次
タイ USD/THB
米利上げ期待などで底堅い動き 年末にかけてバーツ高優勢か
前半レンジ推移、以降年末にかけバーツ高優勢の展開を予想。米では2022年6月にテーパリングが終了する見込みで22年末までに利上げに踏み切ることが予想されており、前半は米利上げへの期待感、米金利の上昇にサポートされて底堅く推移しつつも、タイ観光業の回復に伴いレンジ推移となるだろう。年後半は米利上げもほぼ織り込まれるであろうことから、グローバルに経済回復が確認されるにつれセンチメント改善とヒト・モノの動きが正常化することで輸出・観光に依存するタイにとってプラスの環境となろう。
ハノイ支店 日系営業課課長 伴 元勝
ホーチミン支店 支店長 和田 正明
△中間シナリオ予測
必要な電力量を確保し、製造拠点のみならず、拡大する国内消費マーケットを狙った海外からの投資が増加。貿易黒字を背景として、ドン高圧力に対しドル買介入を実施し外貨準備が積み上がりベトナム経済が安定。GDP成長率は政府目標の6.5%以上を維持、2030年に一人当たり名目GDPが5,500ドルに到達。
×悲観シナリオ予測
必要な電力需要を自国内で賄えず、海外から呼び込んだ生産拠点が撤退。貿易赤字に転落し経済が停滞。急激なドル高ドン安を食い止めるため外貨準備が減少し、金融危機懸念が台頭。
ベトナムは2021年に5年に一度の党大会を経て、共産党の新政権が発足した。「30年に近代的な工業を有し、上位中所得国レベルの国となる」ことを目標とし、目指すべき経済指標として「GDP成長率は今後5年間で平均6.5~7.0%」「25年の1人当たりGDP4,700~5,000ドル」等を掲げた。
21年7~9月のGDP成長率は、前年同期比6.2%減と四半期ベースでは過去最低を記録。新型コロナウイルスの影響により、海外からの投資は19年をピークに新規進出、追加投資、M&Aそれぞれの分野で減少している。
一方で日系企業の他、韓国、台湾、シンガポール、タイの投資家はコロナ後の景気回復をにらみ、ベトナムへの投資機会を積極的に伺っている。17年まではベトナムへの新規投資は製造拠点としての進出がメインであったが、18年からベトナム企業への出資(M&A)が急拡大している。
人口拡大、経済成長による一人当たり所得の増加や購買力の向上を背景に、内需マーケットで成長するビジネス(小売・食品・衣料・不動産・物流・エネルギー等)は人気が高い。直近では、アミューズメント企業に出資する企業も出ており、投資対象業種はさらに多様化すると思われる。
また、20年にRCEP(地域的な包括的経済連携)やEVFTA(EUベトナム自由貿易協定)を締結したことで、今後製造、輸出拠点としても従来以上の価値を発揮することも期待されている。
懸念されるのは、将来の安定的な電力供給。ベトナムでは30年の消費電力は、20年対比2倍になるとの試算されており、将来の電力供給不足対策として再エネプロジェクトが林立しているが、大型の発電所建設については計画の進捗が芳しくない。将来の拡大する電力需要に対し、電源確保や送電網整備等に大きな課題を残している。
20年のワーカーレベルの月額賃金はホーチミン市で242ドル、ハノイ市で217ドルと低く、地方ではさらに安価な賃金での労働力確保が可能な状況が継続する見通し。安定的な電力供給さえクリアできれば、貿易立国や生産拠点として今後10年は安泰であろう。
医療水準が低いこともあり、必要に応じ政府は即時にロックダウンを行い、人々は忍耐強く政府方針に従い、家族や知人に広げないように注意深く生活を送っている。コロナ対策において、ベトナムは挙国一致の精神で臨んできた。こうした気質は、近年の安定した経済成長を生み出している源泉だと感じる。22年以降のベトナム経済の成長に注目している。
バンコック支店 メコン5課 参事役 岸田 一作
×悲観シナリオ予測
対外債務償還問題の解決が不安視され、中国との結び付きがさらに強くなった結果他国からの投資が抑制され、経済成長の足かせに。
ラオスの将来を予測する際に手がかりとなるのは、5年ごとに報告される経済・社会開発5ヵ年計画である。2021年1月党大会では、21~25年の第9次計画案が提示されたが、成長率目標は年平均4%以上と従来比大きく引き下げられた。
コロナからの回復と投資、対外債務、財政管理の強化を最優先課題として掲げ、これまでの高成長路線から持続可能な成長率目標へ引き下げることで、経済成長が生んだ歪みを意識したうえで慎重に取り組んでいく姿勢が伺われた。
ラオスにおいて今後一番期待される成長機会は、交通インフラの改善を起因とした投資の増加。首都ビエンチャンと中国雲南省を南北に結ぶ鉄道が21年に開通し、さらにタイまで延伸する計画がある。
同じ区間に高速道路も開通予定で、さらに国土を縦断してカンボジアのプノンペン、ベトナムのホーチミンと結ぶ計画まで展望されており、物流の基本インフラへの投資は着実に実施されている。
そもそも近隣国に比して相対的に安価な労務費と、メコン川の水力発電に由来する安定的かつ安価な電力供給は、引き続き新規投資の際の魅力であり続ける。また、タイ・ベトナム・カンボジア等の周辺国の経済成長も、ラオスにとっては売電機会の出現として相乗効果が期待される。
一番の懸念材料は対外債務の償還。足元ではコロナ禍により観光収入が激減していることに加え、周辺諸国への出稼ぎ労働者の帰国が相次いでおり、外貨獲得手段は確実に細ってきている。
以前から不安視されていた外貨準備高の低さに加えて、償還期限を迎えるインフラ関連既存債務の返済不透明さを主因に、20年には複数の格付け会社より格下げの評価を受けている。
仮に債務の過半を拠出していると見られている中国系投資家との間で、個別に債務の再構築が成されたとしても、中国以外の投資家は投資に慎重になりかねず、経済成長の足を引っ張る材料に成り得る。
また、国土の大半が山岳地帯であり、50を越えるとも言われる少数民族が一律に経済成長の恩恵を受けることは考えにくく、これまでの高経済成長により引き起こされている民族格差・貧富格差への対応も迫られる。
プノンペン出張所 出張所長 佐藤 暢史
×悲観シナリオ予測
脆弱なインフラや周辺国比高いコスト等が是正されず、製造原価低減や品質向上が実現できない状況が変わらない。投資優遇は拡大されたが、縫製業以外の付加価値の高い製造業の進出が進まない。
2021年10月、カンボジア新投資法が施行され、法人税優遇拡大など投資恩典が拡大。今後カンボジアへ進出を検討する外国企業が拡大していくことが期待される。
新投資法制定に際し、カンボジア政府は縫製業依存の産業構造から脱却し、高付加価値の産業誘致に注力したい意向であり、特に自動車やエレクトロニクスは重点分野と明言している。
近年、自動車部品や電子部品などの輸出金額は着実に拡大しており、労働集約型の製品について、中国やタイなどからカンボジアの生産シフトが相応に進んでいる状況が窺がえる。しかしながら、発展途上で脆弱なインフラ、エンジニアなどの高度専門人材の不足、低い現地調達率などはカンボジアへ製造業が進出する障壁となっており、状況は以前と比較して改善はしているものの、直ちにカンボジア進出ブームが到来する可能性は高くないと考える。
中長期的にはカンボジアへの製造業進出の課題が改善し、進出が本格化するポテンシャルは高い。タイの労務費上昇や少子高齢化の一層の顕在化により、タイの既存工場は高付加価値製品にフォーカスし、労働集約製品はカンボジアで低コスト生産を実現していく水平分業が加速していく動きは大きくなるであろう。
また10年後には高速道路など道路網整備も大きく進展し、タイなどへの陸送のリードタイム短縮や物流コスト低減やスキルやワーカーの質が改善されれば、低コスト生産拠点としてカンボジアの優位性が高まる。また、二国間FTAやRCEP等の進展は、低コスト生産拠点としてカンボジアへ進出を検討する際のプラス材料となりうる。
● 投資適格プロジェクト(QIP)の対象拡大 カンボジア発展に寄与する分野及び投資活動と判断されるものは当該18分野以外でも優遇対象と成り得る
①ハイテク産業及びR&D
②高付加価値の技術を有するベンチャー企業
③グローバルサプライチェーン
④エレクトロニクス
⑤デジタル産業
⑥物流
⑦グリーンエネルギー等(18分野)
● 1.法人税免税3年~最長9年間に加えて、その後最長6年間の法人税優遇(優遇率25%~75%)または2.特定費用について9年以下の最大200%の特別控除(1か2の選択)
● 資本財輸入に関する関税、VAT免除に加えて、QIP実施に必要な生産財の国内調達に関するVAT免除
● 特定の活動(研究開発、人材育成、福利厚生拡大等)は課税標準から150%控除
● 申請から登録完了までの期間を20営業日に短縮
GDM(Thailand) Co. Ltd.
電話 : 086-513-7435(高尾)
Eメール : [email protected]
URL :https://gdm-asia.com/
57, Park Ventures Ecoplex, 12th Fl. Unit 1211 Wireless Road, Lumpini, Patumwan, Bangkok 10330
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