NIA、イノベーション国家への戦略発表

NIA、イノベーション国家への戦略発表

公開日 2022.09.20

タイ国家イノベーション庁(NIA)は9月2日、NIAの設立13周年を迎えて開催したセミナー「タイランド・グローバル・イノベーション・フォーラム2022」で、タイは2030年までに世界知的所有権機関(WIPO)のグローバル・イノベーション・インデックス(GII)のランキングで世界のトップ30位入りを目指すとの目標を明らかにした。

WIPOランキングで世界トップ30入り目指す

セミナーではまずNIAのパンアート事務局長が登壇し、WIPOのGIIについて世界各国の知識、技術、創造性、研究開発の生産性を反映したイノベーション能力の指標だと紹介。調査対象となっている132カ国中、タイは2020年が44位、2021年が43位と1ランク上昇したと報告。さらに2021年の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国のランキングでは、1位がシンガポール(世界8位)、2位がマレーシア(同36位)、タイは3位だという。2021年の世界ランキング上位は、1位がスイス(2012年から10年連続1位)、2位スウェーデン、3位米国、日本は13位だとした上で、タイはイノベーションでは世界の主要国から大幅に遅れをとっているとの認識を示した。

同氏は、タイをイノベーション先進国へとステップアップさせるため、まず2027年までにランキングを35位まで引き上げ、2030年までにトップ30入りを目指すと強調。この目標を達成するために以下の4つの戦略を強化すると述べた。

(1)タイのイノベーションシステムをオープンにし、国内外で連携することで将来性のある企業や高度な技術を持つ企業を増やす。
(2)イノベーション資金源をさまざまな形で連結させることで金融イノベーションシステムを革新する。
(3)データイノベーションの活用を支援することで、イノベーションを推進するデータシステムを構築する。
(4)NIAは経営と人材育成の新しい基準を備えたデジタル組織として、変化と持続的成長に対応できるポテンシャルの高い組織になる。

さらにNIAは、タイを経済、社会、環境の持続性を加速させることのできる「イノベーション国家」にするためのアプローチとして、①政府はイノベーションのサンドボックスであり、加速装置 ②研究と連動したイノベーション投資の加速 ③金融イノベーションと技術ファンドの活動とデータベースを活性化 ④事業構造転換のためのイノベーション企業を増やす ⑤サービスや製品の付加価値を高めるための特許の登録と活用を促進 ⑥創造的・文化的イノベーションの増加-という6つに焦点を合わせると説明した。

変化の兆しを察知して、迅速な意思決定を

続いてフランスのEDHECビジネススクールで、「Forsight, Innovation & Transformation」会議のディレクターを務めるレネ・ローベック氏が「イノベーション国家の未来」をテーマに講演。タイの変化を促進する要因として以下の4つを挙げた。

EDHECビジネススクールのレネ・ローベック氏 ©️2022 NIA

(1)「タイランド4.0」。特に、バイオ技術、ナノ技術、先端素材技術、デジタル技術という主要4分野で生産ベースから技術ベースへ転換する。
(2)国際的なサービスの拡大。観光だけに依存するのではなく、バリューチェーンの中での間接的ビジネスでプロのサービス提供へ転換する。
(3)イノベーションと知識主導型経済への移行。企業は生産やITで大卒人材を活用。雇用市場ではよりスキルの高い人材への需要が高まるようなコンサルティングや政策が必要になる。
(4)持続可能な開発とグリーンエコノミー。労働力のニーズを減らし、品質へのニーズを高め、グリーン製品への価値を向上させる。

同氏は「これらを実現するためには、変化に対応することが重要だ。変化の兆しを察知して将来の変化に備え、可能性のある結果を予測して迅速な意思決定を行い、既存のリソースで問題を解決する方法を探る『未来適合性モデル』を採用しなければならない。

『未来適合性モデル』出所:EDHECビジネススクール

前向きな変化を促すには、人材が重要であり、強力なリーダーシップとパートナーシップが必要。さらに、イノベーターになりたいと思うことも重要だ。それを楽しみ、真のイノベーションを愛する必要がある」と述べて講演を締めくくった。

TJRI編集部

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