失敗すら曝け出す! 新規事業開拓を通じて育む「組織の自走力」

THAIBIZ No.159 2025年3月発行

THAIBIZ No.159 2025年3月発行シンハーが明かす「勝てる」協創戦術

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失敗すら曝け出す! 新規事業開拓を通じて育む「組織の自走力」

公開日 2025.03.10

海外駐在では、日本での業務と大きくかけ離れたミッションを課せられるケースも珍しくない。Sanyo Trading Asia Co., Ltd. (以下、「Sanyo Trading Asia」)の三浦拓也氏も、営業一筋のキャリアから一転、現在はタイで新規事業の開拓にも挑んでいる。

35年の歴史を持つ同社のネットワークにも頼れない状況下、三浦氏は「失敗すら曝け出して、自走する姿を見せることが組織の発展に繋がると信じている」と前向きだ。

初の海外駐在で挑む、新規顧客の開拓

Q. Sanyo Trading Asiaの事業概要と三浦さんについて教えてください

当社は1990年にタイ企業との合弁で設立され、2018年にグローバル商社である三洋貿易株式会社(以下、「三洋貿易」)の100%子会社となりました。ゴムや化学品、自動車部品等の輸入販売および、お客様への技術サービスの提供を主に手がけています。社員数は42人、うち日本人は7人。各部署に最低一人ずつ、日本人駐在員が在籍しています。

私は2017年に三洋貿易に中途入社し、6年ほど名古屋および東京の本店で自動車関連の営業を担当しました。その後、国内グループ企業への1年間の出向を経て2024年4月に初の海外駐在辞令を受けて来タイしました。

私が所属するモビリティ事業部では、自動車部品の輸入販売を行っています。具体的にはシート関連製品を中心に取り扱っており、日系自動車メーカーやシートメーカーが主なお客様となります。

その他、自動車の領域外においても、新規サプライヤー様の製品・サービスや三洋貿易の新製品をタイ国内にも普及させるべく、新規顧客の開拓に挑戦しています。

Q. タイでの仕事には、どのような印象をお持ちですか

想像以上に、タイ人社員の仕事のレベルが高いことに驚きました。作成するレポートの高いクオリティー、お客様の質問に対する迅速で的確な回答、各自の考えを持って仕事に取り組む姿勢を目の当たりにした時、35年間にわたり先輩方が積み上げてきた結果を改めて再認識し、身が引き締まる思いでした。

加えて、タイ人と日本人は似ている部分が多いと感じており、タイ人社員に対しては「責任感があり、一緒に仕事がしやすい」印象を持っています。

マネジメント経験がなく初の海外駐在として着任した私は、決められた仕事をスピーディーに進める彼らから、特に既存事業においては学ぶことが多いのが実情です。一方で、現在取り組んでいる新規事業の開拓は、他拠点との繋がりを持ち、日本で自走力を育んできた私が付加価値を発揮できる分野だと考えています。

自社ネットワークに頼れない中、タイ企業20社と会話

Q. 新規顧客の開拓は、具体的にどのように進めていますか

今年1月に三洋貿易が発表した、EVのメンテナンス機器類をトータルで提供する新ブランド「EverBlüe Drive(エバーブルードライブ)」では、第一弾製品としてEVバッテリー専用診断機を発売しました。この製品は、バッテリーEV(BEV)の急速充電口に差し込むことで、バッテリーの劣化度合いを短時間で診断できる機器です。

現在は、将来的なBEV普及を見据えて日本向けに展開しているものの、今後はタイを含め東南アジアでも普及させたい目玉製品でもあり、現在は主にレンタカー事業や中古車買取事業を行うターゲット企業のリストアップを進めています。

その他、新規サプライヤー様の製品・サービスの顧客提案においても、自動車関連の領域だけに留まらないため、既存の自社ネットワークが活用できない難しさがあります。さらに、日本ではほぼ営業一筋だった私にとって、海外における新規事業の顧客開拓のハードルは相当高いと実感しています。

そこで重宝しているのが、Mediatorが提供しているタイ企業とのビジネスマッチングサービス「TJRI」です。TJRIでは、目的に応じたタイ企業のリストアップから、商談のアポ取り、その後のフォローアップまでを依頼することが可能です。同サービスを活用したことで、自力で辿り着いたタイ企業10社に加え、さらに新規10社と会話でき、新たな視点やニーズの把握に役立てることができました。

Q. 新規顧客の開拓において、特に重要だと感じることは

既存事業との親和性がない新規事業では、市場調査からニーズの把握、マーケティング、顧客開拓まで、全てゼロベースから始めなければなりません。ターゲットとなりうる企業との会話の場を数多く設けることだけでなく、他拠点の駐在員や本社の事業開発室との連携も重要です。

タイ人社員全員にとっても新しいチャレンジのため、現在は日本人である私が主導して取り組んでいますが、マーケティングなどでは将来的にタイ人社員の力がより必要になってくると思います。

持続的に繁栄する組織を目指す

Q. 現在三浦さんが考える「駐在員の役割」とは

自分の経験やノウハウ、新しいサービスや製品、そして人を「つなぐ」ことです。三洋貿易は、タイのみならず、米国、中国、ベトナム、インドなど15の海外拠点を有しており、それぞれの拠点で新規事業創出に向けた種まきを行っています。事業の芽が出そうな拠点の駐在員と連携しながら、常に協業の機会を模索しています。

機会を掴んだら即行動を起こすためにも、日ごろからタイ人社員と密にコミュニケーションを取っておくことも、重要な駐在員の役割の一つだと思っています。機嫌の悪い人と決断が曖昧な人には誰も頼りたくないと思うので、いつでも相談しに来てもらえるような雰囲気作りと、スピーディーな決断を意識しています。

Q. 帰任までの目標について教えてください

個人的な目標は、任期を終えた後も持続的に組織が繁栄していく土台を作ることです。当社なら、既存事業に加えて新規事業の開拓においても、タイ人社員が主導して成果を上げていく組織になれると信じています。具体的には、タイ人社員が新規顧客のタイ企業と商談を行い、新規ビジネスを創出できるような状態を目指したいと思っています。

そのためには、私が現在自走しながら新規顧客を開拓している姿を、失敗も含めて彼らに見せていくことが大切です。新しい取り組みには失敗が付き物ですが、それすらも曝け出して皆と一緒に原因や解決策を考えることで、ノウハウをチーム全体で積み上げることが可能だと思っています。

「新しい仕事の創造」とは想像以上に難しいものですが、現状維持に満足しない個人の自走力を育むことで強固な組織が実現でき、それがひいてはタイ人社員の幸福にも繋がっていくと考えています。


三浦 拓也
Division Manager / Mobility Business Division Laemchabang Office Manager
Sanyo Trading Asia Co., Ltd.

2017年に三洋貿易へ中途入社。名古屋および東京の本店で自動車関連の営業を担当後、国内グループ企業への出向を経て2024年4月より現職。

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THAIBIZ編集部

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