カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2022.11.08
タイ投資委員会(BOI)のナリット新長官は10月17日に記者会見を開き、12日に開催されたプラユット首相が議長を務める本委員会で、新たな投資奨励戦略(2023~2027年)が承認されたと発表した。新戦略はタイ経済をイノベーション・技術・クリエーティビティー主導で変革し、競争力や適応力を向上させ、環境や社会の持続可能性に配慮したインクルーシブ(包括的)なものにする狙いがあるという。
10月3日にBOIの新長官に就任したナリット氏がこの日の記者会見で公表した7つの新たな投資奨励戦略は以下の通り。
(1)産業の高度化、新産業の創出、サプライチェーン強化による産業構造改革を推進する。今後2~3年で、バイオ・循環型・グリーン(BCG)、電気自動車(EV)、スマート電子、デジタル、クリエーティブの5つの産業に注力する。
(2)産業のグリーン化・スマート化を加速し、生産者・ユーザーを支援する。
(3)タイを国際的なビジネスセンターとし、地域の貿易と投資のゲートウェイにする。
(4)中小企業やスタートアップを強化し、世界とのコネクションを支援する。
(5)東部経済回廊(EEC)や新たな4つの経済特区(SEZ)など、各地域のポテンシャルに応じた投資を促進し、徹底的な成長を実現する。
(6)地域や社会の発展に貢献している起業家の活動を支援する。
(7)ポテンシャルのあるタイ企業の海外進出を促進する。
同長官は「政府はタイを国際ビジネスセンターの中心地とし、投資家向けの一括パッケージ(Whole Package)特典を提供する。地域統括拠点の設立手続きを容易にするワンストップサービス、さらに人材、技術、インフラ開発、規制など投資のためのエコシステムを構築する」と強調。そして、「これらにより、雇用の創出、社会の持続的な発展がもたらされる。さらに、農業、工業、サービス業、観光業を発展させて付加価値を高め、投資家に対し充実したサービスと、ビジネスを行う上での利便性を提供できると期待している」と述べた。
ナリット長官は2015年から2022年9月までの外国直接投資(FDI)が総額2兆1961億1400百バーツで、1位は日本でFDI総額の24%を占め、2位が中国、3位がシンガポールだったと報告。その上で「タイにとって既存の投資家、特に日本を非常に大事にしている。一方、4月に日本を訪問し、日本の多くの自動車メーカーと電気自動車(EV)について話をしたが、BOIの新戦略に基づき新たな投資を検討していることが分かった。日本は間違いなく2〜3年以内にタイのEVビジネスに投資、参入してくると確信している」と述べた。
ただ、今年1月~9月ではFDIのランキングは大きく変化している。中国が450億2400万バーツでトップとなり、台湾が392億5600万バーツで2位となり、日本は375億9100万バーツで3位だった。ナリット長官は「タイ政府はEVへの投資を奨励しており、中国からのEV投資が増えている。タイ政府はEVを需要・供給の両面から支援し、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域でEV産業のトップを維持することを目指している」と強調した。
ナリット長官はまた、「環境・健康意識、デジタル化、国際政治のグローバルな変化から、サプライチェーンの大きな調整と変化が進行しており、これらが投資機会を生み出している」と指摘。タイは以下の5つの分野で「地域の投資ハブ」に発展するチャンスがあると強調した。
(1)テクノロジーハブ=電気自動車(EV)、スマートエレクトロニクス、自動化・ロボティクスなど、テクノロジーとイノベーション、デジタルと未来産業への投資の拠点。
(2)BCGハブ=BCG経済モデルに基づき、農業・バイオ産業、再生可能エネルギー、健康・医療産業、観光産業など持続可能な発展のためのニーズに対応した投資ハブ。
(3)タレントハブ=プロフェッショナルや高度な技術を持つ人材、スタートアップ企業や収益性の高い投資家など、世界中から人材が集まるハブ。
(4)物流ハブ=国際ビジネスの中心地として地域本部、サービス業、金融業、国際貿易のハブ。
(5)クリエーティブ産業ハブ=デザイン、ファッション、ライフスタイル、映画産業、デジタルコンテンツ、ゲーム、Eスポーツのハブ。創造性と先端技術を活用し、タイの文化が世界的なステージに挑戦していくチャンスになる。
TJRI編集部
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